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やさしい夜はいつまでも

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 あの夜わたしは聞いたのです
 しゃんしゃんしゃんと鈴の音を
 水滴のついた窓のそと
 ぬくぬく布団で思います
 あしたの朝にはきっとある
 目を閉じたままでさわる箱
 正体なんてわかってて
 それでもたしかにいたのです
 「だから今でもひょっとして」
 そっと手を出し確かめます
 わくわく詰まった贈り物


   *


 鈴の音が聴こえた気がしたイブの夜。寝不足なはずなのに、翌朝は早くに目が覚める。
 妹のように飛び起きたりはしない。プレゼントがなかったらかなしいから。伸びをするふりをして、枕元にあるプレゼントにタッチする。あった。安堵してようやく体を起こす。
 とはいえ、サンタクロースの正体はとっくに知っていた。小学一年生のとき、祖父に吹き込まれたのだ。だけどとどめをさしたのは母親で、「すずめはサンタさん信じてないよね、今日プレゼント買いに行くんだけど妹は何がほしいって?」なんて言われてしまったらどうしようもない。こうしてわたしは不本意ながらサンタなど信じない現実的な子として家族に認識されることになる。
 それでも、心のどこかで信じていたのかもしれない。体を起こしてようやく視界に入ったプレゼントの、緑や赤の包みはうれしい。だけどまだ油断できない。中に入っているものが期待外れだった場合に備え、よろこびのレベルをコントロールする。
 そのくせ、クリスマスプレゼントは朝あけない。はしゃいで包装紙を破る妹を尻目に、学校に行く支度をする。今日は終業式だ。楽しみはそのあとにとっておく。
 帰宅してようやく、丁寧にテープを剥がして包みをひらく。ほしかったものがそこにあって、ようやく心にうれしさを満たすことができる。こんなひねくれた子のところにもきてくれるサンタさんは、本当にやさしい。
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