宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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凍え星

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 摂氏5度。
 「あの日の沁みる寒空を、プラネタリウムに映せたならば」。
 ココア缶、呪文は思い出せなくて、泣く泣くさよなら告げるのです。
 自販機はばかばかしいほど賑やかで、無責任なオーラはきみのよう。
 午前二時。オリオン。こいぬ。北極星。
 崩れてしまう日すら、待ちわびて。


   *


 流星群をみたあの日。
 それは広がる畑のそばの道。寒さにふるえながら見上げた空は、遠くをゆく車のライトでほんのりと明るい。上へ、上へと視線をあげればちろちろと瞬く星、星。少しふらつく。あ、今ながれた? 望みすぎて幻影。
 それはわたしの部屋のベランダ。サンダルをひっかけただけの足先はつめたい。目の前のアパートのあかりを手で隠し、小さく切り取られた空を探す。諦めきれずにベッドに寝そべり、あけた窓から夜空をのぞく。さむい、けれどもふとんはあたたかい。
 それはいつかの夜。ともだちのおかあさんに連れて行ってもらった河川敷。特別な流星群、特別に夜中に集合して、特別な友達といっしょに見る流れ星はシャワーのように降る。瞬間、火球。上がるたくさんの歓声に、あたりにいる人すべてがひとつになる。
 それはひとり自転車で探す暗闇。星がきらめく曲が流れるイヤホンは片耳に。今更ながら街灯ばかりが目に入る見知った道、どこかにあるはずの暗闇と星の光を探し求め、凍えながらペダルを漕ぐ。
 目の前を流れる星、しゃらら、なんてロマンチックな音は夢の話。見たらわかる、あの音はきらりでもするりでもなく息を呑む静寂。すぐ近くまで行ったらどんな音がするんだろうね、思いを馳せる。
 冬の張り詰めた空気。星に切り裂かれる夜空は深い色。願いをのせる余裕もなくて。
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