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幻想遊園地

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 廃墟になったあのまちで
 まわり続ける白馬たち
 陽気に狂った音楽に
 耳を塞いだ蝋人形
 空色あせた瓦礫には
 かつてあふれた人の夢
 天に行けないゴンドラの
 座席にかわいいわすれもの
 にぶい日差しで煌めいた
 虹色ガラスの死骸たち
 すべて儚いゆめの中
 空虚を見下ろす海猫は
 やさしく一声鳴きました


   *


―もしにんげんが全ていなくなったら。この街はどうやって死んでいくんだろう。
―もしここが全て水の底に沈んだら、この部屋をどんな魚が泳いでいくんだろう。
 そんなことばかり考えて生きている。遠い未来、わたしたちの文明の最期。いろんなテレビや映画や本をみたせいか、ときどき想像だけでそこにトリップできる。
 それから逆に、時間を戻してみることもある。ずっとずっと、気の遠くなるほど昔へ。
―道なんてなんにもなかったころは、ここも全部土と草だったんだよなぁ。
―ここを走った恐竜はいただろうか、ここで生き絶えた翼竜はいただろうか。
 確かに在ったはずなのに想像でしか補えない不明瞭な世界と、いつか在りえるのに巡りあえない世界。想像はどこまでも広がる。
 過去でも未来でもない世界に迷い込んだことがある。以前勤めた学校の、二階奥の廊下は、通るたびに必ず同じ錯覚を引き起こした。
 窓から見える電線よりはるか上に、水面が確認できた。わたしは泡をはく。陽の光は澄んだ水に注ぎ込み、カーテンのように揺れる。校庭の木々の間をぬう小魚と、悠々と通りすぎるエイ。桜が生む小さな泡はきらきらと昇った。わたしは浮力に抗いながら、自分の教室まで泳ぐ。人間でも魚でもない自分。
 あの場所に行けば、今でもそこに迷い込めるだろうか。妄想だとしても、幻想だとしても、わたしはあの夢のような水中を忘れない。
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