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おりひめさまの秘密

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 七のつく日は雨ばかり
 大切な人に会いたいおひめさまのせい

 だけどけっして涙じゃないのよ
 贈り物のハンカチをあわてて織って
 材料をひっくり返しただけ

 ほそくてやさしい雨は
 おりひめさまの落としもの
 糸のような雨の上では
 なんにも用意できなかったのと
 舌を出してわらうおひめさま


   *


 文を書くのが下手だった。あ、わたしじょうずじゃないんだな、と自覚したのは、学級便りに作品がまったく載らなかったからだ。うまい子は何度も載るし、下手な子はいつまでも載らない。小学生にとっての明確な基準。
 たぶん三年生ぐらいのとき、学級便りに載る作品を書いてやろう、と思い立ったことがある。正確な学年は忘れたけれど、月日は忘れていない。七夕の日だった。
 夜空を見上げたら、曇っていた。じゃあ織姫様と彦星様が出会えたみたいな内容は書けないな、会えないのを悲しむ日記にするか。いや、雲の上で会ってるみたいな方が子供らしい発想でいいかな。と、媚びに媚びた。
 その日記はみごと学級便りに掲載されて、なぁんだ、先生が好む内容かどうかが全てなんだな、と思ったことを覚えている。
 媚びなしで載ったのは、二年生のときの一度だけだ。鳥の形をした雲を見て、きっとどこまでも飛んで行って、いろんな人に出会うんだろうなぁ、みたいなことを詩にしたやつ。あまりにうれしかったのだろう、今でも一字一句わすれていない。
 中学生のときの国語の先生は、わたしが何気なく書いた感想文や日記をたくさん褒めてくれる人だった。それで自信をつけたわたしは調子に乗ってあの詩をリメイクしようと意気込み、中学生の感性で書くとこうなるよね、という典型的な痛さの詩を誕生させた。詩とは難しいものである。
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