宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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 ブックマーカーがほしいな
 いつでもこの一文が読めるように

 かぎ針編みのしおりでもいいな
 一〇二ページと心に刻む必要もなくなる

 旅先のレシートでもいいな
 ずっとはさんでおいたら
 見た風景ごととじこめられる

 やっぱり二人の写真がいいな
 このページからやり直せるように


   *


 本を開いていると、あっ、と思うことがある。はさんでおいたなにかが出てきたとき。なくしたと思っていたお気に入りのしおり、映画の半券、動物園のチケットに、同じ学年の先生が残してくれた励ましのメモ書き。
 逆もある。確かにはさんでおいたのに、どの本だったのかがわからずに、見つからないもの。あのときのあの写真はなんかがそうだ。
 ある秋の中山競馬場。その日の運気はすさまじかった。いつもかわいい名前の馬に賭けて惨敗するのに、その日はかわいい名前ばかりが一着に入る。それからターフィーくんにも会えて、名刺をもらった。全て上手くいく。
 そんなときにバックヤードツアーの参加者を募集しているのが目に入り、これは、と思って応募したら、なかなかの倍率にも関わらず当選した。パドックを歩かせてもらったり地下通路を通ったり、勝利騎手が立つ台に乗せてもらったり。それから最後に、田辺騎手と丸山騎手と記念写真を撮った。
 おみやげにはうまい棒と、さっき撮った写真に二人がサインを書いてくれたものをもらった。うまい棒の袋はにぎりしめ、写真はそのときかばんに入っていた文庫本にはさんだ。あれは、どの本だったのだろう。すっかり記憶から抜けてしまった。
 あっ、勘違いしないでいただきたいのは、けして失くしたわけではないということ。いつか本を開いて、あ、と出会えるように、ちゃんと探していないだけなのですよ。本当。
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