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第13話 クリオネハンティング
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どれくらい日にちが経っただろうか。
結局俺は蘇生するとも留まるとも決められず、もっぱいぱい姉妹と一緒にただ過ごしているだけだった。
えるんぺいもつるんぽいも俺が一人で悩んでいる時はそっとしておいてくれた。本当に優しい。それ以外はくだらない話をしたり、えるんぺいをいじったり、俺がいじられたり……。
今俺はもっぱいぱい姉妹の居る空間から離れて、神の世界を散歩している。
つるんぽいが試練の前に話していた邪神は、俺を間違いなく拷問すると言っていた。だが話を聞くとどうやら嘘らしい。邪神は基本的に人間には関わろうとはしないそうだ。
だから俺はちょっと気分転換に、遠くまで歩くことにした。
神の世界は多様な形態があるようだ。
今俺が歩いている所は、くすんだ黄土色の空に小学生くらいの大きさのクリオネたちがヒレをひらひらさせて、ふわふわ浮いている。クリオネの中身は普通赤っぽい色だが、紫とか深緑とか紺色とか、いろいろなカラーバリエーションがある。
地面にはもずくみたいな草が生い茂っていて土は灰色。地面は湿っている。
周りを見ると大木のような大きさの巨大なキノコがバオバブの木の森のような間隔で無数に生えており、時々体をブルブルッ! と震わせ、500円玉くらいの大きさの胞子を撒き散らし、その胞子をクリオネが食べている。クリオネの食事は怖いことで有名だ。キノコが震えるとクリオネが体をうねらせ、ヒレをぱたぱたさせて近づき、やがて頭が割れて6本の触手が伸び、胞子を口に運んでいる。
「す……すげえ……」
圧巻の眺望だ。クリオネが俺を攻撃してこないか心配だが……
「あなた、誰?」
「うわっ! はいっ!?」
後ろから突然何者かに話しかけられた。びっくりした……!
振り返ると、半袖短パンで、夏休みを思い出しそうな服を着た金髪のボブ・ショートの白人のかわいい女の子が真後ろで俺を見上げていた。全く気配がなかったから気づかなかった。おそらくこの子も神なんだろう。
「人間でしょ? 何でここにいるの?」
「いや、まあ……いろいろあってね。えるんぺい・もっぱいぱいっていう神様が連れてきてくれたんだよ」
「あ~あ、やっぱり……死んだ人間なんかほっとけばいいのに」
……どうやらこの子はえるんぺいさんの事をよく思ってはいないようだ。
「で、何でここをうろついてるの?」
俺はこれまでのいきさつを話した。
「ふ~ん……まあ、良かったじゃん」
「良かった……のかな」
「ここに留まったほうが良いと思うな」
「えっ?」
女の子ははっきりと断言してきた。つるんぽいさんとは逆の意見だ。
「だってあなた、蘇生してどうするの? ここのことも忘れちゃうんでしょ? つまんないことには変わらないよ」
「……う~ん……」
「ここにはいろんなのがいるから楽しいよ。人間界よりは刺激があると思う」
すると女の子は突然石を拾い、クリオネに投げつけた。
クリオネは赤く光り、触手を出してこちらに向かって来た……!!
「ちょ、ちょっと! あぶないって!!」
「だいじょぶ。離れてて」
女の子は左手をパーに広げて手のひらをクリオネに向け、呪文を唱えた!
「てんぷちゃー・すろんさいさい!」
これも最上級神のネーミングだろう。やはり意味がわからない。
すると女の子の左手から何かが発され、空間が歪んで見えた。クリオネはその歪みに飲み込まれると動きが止まり、女の子が止めると地面にぼとっと落ちた。
女の子は俺の手を引いてクリオネのもとに誘導した。
「これ、運んでよ」
「ええっ? どこへ?」
「友達のところ」
俺はクリオネを担いだ。重くてぐにゃぐにゃでひんやりして、あまり気持ちの良いものではなかった。
女の子が案内してくれたのはキノコで出来た家。なんだかメルヘンチックだ。
女の子がドアを開けてくれ、俺が中にクリオネを担いで入った。
家の中に入ると今度は白人の美少年が暖炉のそばで本を読んでいた。
「おかえり! あれ? どなた?」
「あ、えーとその……」
「ただいまサファン! 私が連れてきたの。人間だよ」
「え!? 人間? なんでなんで?」
男の子は歩み寄ってきて、興味深そうに俺の顔を眺めている。クリオネには目もくれない。多分、クリオネハンティングはいつもよくやっているんだろう。
てか、サファンって名前なのか。ようやくまともな名前の神が出てきたな。
「え~と? お名前は?」
「あ、申し遅れました。山内光一です」
「僕はさふぁんぺ・はふんほいほいって名前。変な名前だから、サファンって呼んでね」
やっぱり変な名前だった。この世界の神々の共通の悩みが分かってきた。名前にコンプレックスがある事だ。
「私は……ぴゅありふぁ・まんちょいちょい……ピュアって呼んでね。」
ま……まんちょいちょいって……なんか……不憫だ。
「そ、そんな目でみないでよう」
「ああ、ごめんなさい! サファンさんとピュアさんですね」
「敬語なんか使わないでいいよ! よし! そのクリオネこっちに渡して!」
サファンはクリオネを渡してと言いながら両腕を前に出して待っていた。
な、投げ渡せって事か?
「い、いや、重い……」
俺は歩いてクリオネを渡しに行った。
「あ、そっか、人間には重たいのか」
なんだか、自分より年下の子に言われたようでちょっと悔しかった。
サファンは軽々と片手で掴み、大きなまな板の上にクリオネを置いた。
「それ……まさか食べるの?」
「すっごい美味しいよ」
「何千年も飽きない味だよ」
「ふ~ん……あの、何千年って、君たちは何万年も生きてはいないの?」
「ああ、僕は3500年前に生まれたの。彼女は3200年前だよ」
えるんぺいさんたちは何万年と言っていたから、全然短いなって思った……いやそれでも紀元前の話だ。
しかも年が近いなと思ったが、300年も離れている。言わば、江戸時代の人間と一緒に生きているようなものだ。
「えるんぺい・もっぱいぱいに連れてこられたんだって」
「ふ~ん、あいつ俺たちには厳しいくせに、人間には甘いよな」
「そんなに厳しいの?」
「服装とか言葉遣いとか、ぐちぐちうるさいんだよ」
確かに服装はえるんぺいは巫女のような格好で神らしかった。
つるんぽいはくノ一のコスプレをしているみたいな格好で、神っぽくはなかった。おそらく、えるんぺいに文句を言われない程度に彼女なりに崩しているんだろう。
でもまあ、なんだか子供っぽいな。厳しい大人をめんどくさがる子供。
……なんだろう……なんかいたずら心が湧いてきた。
えるんぺいさんは……天然で、大食いで、ビール大好きだ。
えるんぺいさんのエピソードを話したい俺がいる……!!!
「ねえ、えるんぺいさんって普段どんな食事していると思う?」
「ん? ん~、日本が好きだから、日本食を食べてるんじゃない?」
「うん、食べ方を教わったことがある。めんどくさかったなあ」
「えるんぺいさんはいつも……わさびマヨカルビ丼を大盛りで食べてるんだよ」
「ええっ!!!?」
すごく驚いている……w
「で、でっかい瓶ビールをジョッキで飲んでるんだよ」
「ええっ!? い、意外だね……」
「う、嘘じゃないの?」
「本当だよ……たぶん、えるんぺいさんってイメージと実際は全然違うよ」
面白い……! くふふ……!!
「それで、こないだえるんぺいさんが」
「あ」
「あ」
「え?」
「私が、なんだって?」
「あ……!!!」
えるんぺいさんが……後ろに立っていた……。
い、いつの間に……
えるんぺいさんは俺の服を掴んだ。
「来い」
「は、ハイ!」
サファンとピュアは口をあんぐり開けて目を合わせていた……。
俺は家の外でお説教を食らった。
「蘇生できないようにしてやろうか?」
「ゴメンナサイ……」
「まったく……目が離せんな」
「……あの、つるんぽいさんが言いふらすことはあるんですか」
「……あいつはめちゃくちゃ言いふらすぞ……もう……」
やっぱりだ。
「あの二人は、えるんぺいさんのこと厳しくて怖いって言ってたんです。だからえるんぺいさんは本当はとってもかわいくてやさしい方だって言いたかったんですよ」
「ダメだ!」
「何でですか?」
「恥ずかしいんだ! イメージもあるんだ!! 上級神だぞ!? 私は!」
両腕をぶんぶん振りながら、真剣な顔で言ってくる。やっぱりかわいい。
「ッ!! ニタニタするな! 地獄に落とすぞ!」
「えるんぺいさん……かわいいです。俺、えるんぺいさんのこと大好きです!」
「やめろやめろ! もう! 待て!!」
「さっきから、そんなでかい声で叫んで。家の中の二人に丸聞こえですよー!!」
「あ! そ、そんな! もう!」
二人に聞かれたくなくて外に呼び出したくせに大声で俺に怒るなんて。ああ、かわいすぎる。
俺は走って家の中に入って鍵を閉めた。
「おい! 開けろ! んんんんん!!!」
えるんぺいさんはドアをだんだん叩いている。かわいい。ドアの窓から俺を睨んでいる。かわいい。
俺は無視して、サファンとピュアに話しかけた。
「聞こえてた?」
「完全に聞こえてました……すっごくかわいいですね」
「私、えるんぺいさんのこと、ちょっと好きになりました!」
「ですってよー!」
「くううううっ! 開けろ! 地獄に落とす!」
「じゃあ開けまーす」
ガチャッ
「うわっ!」
バターン!!
俺が突然ドアを開けたので、えるんぺいさんはいかにもドジっ子キャラらしい倒れ方をした。かわいい。
えるんぺいさんはそのまま俺を睨んで悔しそうな顔をしている。
「お、おのれ……! 神に対する冒涜だぞ!」
「ねえ、料理はできた?」
「あ、はい、出来てますよ」
「えるんぺいさん一緒に食べませんか?」
「えっ?」
俺はえるんぺいさんに手を差し出した。
「勝手にえるんぺいさんのエピソードをしゃべってごめんなさい。仲直りに、一緒に食べましょう。ね?」
「うう……」
えるんぺいさんは手を取って、立ち上がり、埃を払った。
クリオネ料理がお皿に盛られていた。
いつももっぱいぱい姉妹の作る料理とは違い、西洋風の炒め物、そしてパンとスープがついていた。
「わあ……! お、おいしそうっ……!」
「えるんぺいさん……どうぞ」
ピュアはこの家の中にある椅子の中でも一番綺麗な椅子を譲って、えるんぺいさんを座らせた。
えるんぺいさんは座って、目をきらきらさせている。かわいい。
「これ、なんなんだ? 見たこともないぞ」
「クリオネ料理です。少し独特なクセのある風味ですが、凄く美味しいですよ」
「どうぞ、食べてみてください」
えるんぺいさんはどこからかマイ箸を取り出し、手を合わせ、炒め物をぱくっと食べた。顔がぱあっと明るくなる。かわいい。
「お、おいしぃ……♡」
「よ、良かったです」
「えるんぺいさん、一人で全部食べちゃダメですよ」
「う……分かっているぞ」
「クリオネ取ってきたら、すぐ作れますよ。たくさん食べてくださいね」
「おい、……クリオネがいなくなるぞ」
そして、始まってしまった。もうこうなると……止められない。
「ばくばくばく……」
「ばくばくばくばくばくばくばく……」
ピュアとサファンは……引いていた。
「おい、ビールはないか?」
「ど、どうぞ……」
「ごくごくごく……」
「―――――――ぷはぁ」
幸せそうだ。すごく……幸せそうだ。
「えーっと……あと3匹……捕まえてくるね」
「いや、5匹……かな」
ど天然大食い上級神、えるんぺい・もっぱいぱい。
今日のことはまたつるんぽいさんにチクっちゃおう……くくく!
結局俺は蘇生するとも留まるとも決められず、もっぱいぱい姉妹と一緒にただ過ごしているだけだった。
えるんぺいもつるんぽいも俺が一人で悩んでいる時はそっとしておいてくれた。本当に優しい。それ以外はくだらない話をしたり、えるんぺいをいじったり、俺がいじられたり……。
今俺はもっぱいぱい姉妹の居る空間から離れて、神の世界を散歩している。
つるんぽいが試練の前に話していた邪神は、俺を間違いなく拷問すると言っていた。だが話を聞くとどうやら嘘らしい。邪神は基本的に人間には関わろうとはしないそうだ。
だから俺はちょっと気分転換に、遠くまで歩くことにした。
神の世界は多様な形態があるようだ。
今俺が歩いている所は、くすんだ黄土色の空に小学生くらいの大きさのクリオネたちがヒレをひらひらさせて、ふわふわ浮いている。クリオネの中身は普通赤っぽい色だが、紫とか深緑とか紺色とか、いろいろなカラーバリエーションがある。
地面にはもずくみたいな草が生い茂っていて土は灰色。地面は湿っている。
周りを見ると大木のような大きさの巨大なキノコがバオバブの木の森のような間隔で無数に生えており、時々体をブルブルッ! と震わせ、500円玉くらいの大きさの胞子を撒き散らし、その胞子をクリオネが食べている。クリオネの食事は怖いことで有名だ。キノコが震えるとクリオネが体をうねらせ、ヒレをぱたぱたさせて近づき、やがて頭が割れて6本の触手が伸び、胞子を口に運んでいる。
「す……すげえ……」
圧巻の眺望だ。クリオネが俺を攻撃してこないか心配だが……
「あなた、誰?」
「うわっ! はいっ!?」
後ろから突然何者かに話しかけられた。びっくりした……!
振り返ると、半袖短パンで、夏休みを思い出しそうな服を着た金髪のボブ・ショートの白人のかわいい女の子が真後ろで俺を見上げていた。全く気配がなかったから気づかなかった。おそらくこの子も神なんだろう。
「人間でしょ? 何でここにいるの?」
「いや、まあ……いろいろあってね。えるんぺい・もっぱいぱいっていう神様が連れてきてくれたんだよ」
「あ~あ、やっぱり……死んだ人間なんかほっとけばいいのに」
……どうやらこの子はえるんぺいさんの事をよく思ってはいないようだ。
「で、何でここをうろついてるの?」
俺はこれまでのいきさつを話した。
「ふ~ん……まあ、良かったじゃん」
「良かった……のかな」
「ここに留まったほうが良いと思うな」
「えっ?」
女の子ははっきりと断言してきた。つるんぽいさんとは逆の意見だ。
「だってあなた、蘇生してどうするの? ここのことも忘れちゃうんでしょ? つまんないことには変わらないよ」
「……う~ん……」
「ここにはいろんなのがいるから楽しいよ。人間界よりは刺激があると思う」
すると女の子は突然石を拾い、クリオネに投げつけた。
クリオネは赤く光り、触手を出してこちらに向かって来た……!!
「ちょ、ちょっと! あぶないって!!」
「だいじょぶ。離れてて」
女の子は左手をパーに広げて手のひらをクリオネに向け、呪文を唱えた!
「てんぷちゃー・すろんさいさい!」
これも最上級神のネーミングだろう。やはり意味がわからない。
すると女の子の左手から何かが発され、空間が歪んで見えた。クリオネはその歪みに飲み込まれると動きが止まり、女の子が止めると地面にぼとっと落ちた。
女の子は俺の手を引いてクリオネのもとに誘導した。
「これ、運んでよ」
「ええっ? どこへ?」
「友達のところ」
俺はクリオネを担いだ。重くてぐにゃぐにゃでひんやりして、あまり気持ちの良いものではなかった。
女の子が案内してくれたのはキノコで出来た家。なんだかメルヘンチックだ。
女の子がドアを開けてくれ、俺が中にクリオネを担いで入った。
家の中に入ると今度は白人の美少年が暖炉のそばで本を読んでいた。
「おかえり! あれ? どなた?」
「あ、えーとその……」
「ただいまサファン! 私が連れてきたの。人間だよ」
「え!? 人間? なんでなんで?」
男の子は歩み寄ってきて、興味深そうに俺の顔を眺めている。クリオネには目もくれない。多分、クリオネハンティングはいつもよくやっているんだろう。
てか、サファンって名前なのか。ようやくまともな名前の神が出てきたな。
「え~と? お名前は?」
「あ、申し遅れました。山内光一です」
「僕はさふぁんぺ・はふんほいほいって名前。変な名前だから、サファンって呼んでね」
やっぱり変な名前だった。この世界の神々の共通の悩みが分かってきた。名前にコンプレックスがある事だ。
「私は……ぴゅありふぁ・まんちょいちょい……ピュアって呼んでね。」
ま……まんちょいちょいって……なんか……不憫だ。
「そ、そんな目でみないでよう」
「ああ、ごめんなさい! サファンさんとピュアさんですね」
「敬語なんか使わないでいいよ! よし! そのクリオネこっちに渡して!」
サファンはクリオネを渡してと言いながら両腕を前に出して待っていた。
な、投げ渡せって事か?
「い、いや、重い……」
俺は歩いてクリオネを渡しに行った。
「あ、そっか、人間には重たいのか」
なんだか、自分より年下の子に言われたようでちょっと悔しかった。
サファンは軽々と片手で掴み、大きなまな板の上にクリオネを置いた。
「それ……まさか食べるの?」
「すっごい美味しいよ」
「何千年も飽きない味だよ」
「ふ~ん……あの、何千年って、君たちは何万年も生きてはいないの?」
「ああ、僕は3500年前に生まれたの。彼女は3200年前だよ」
えるんぺいさんたちは何万年と言っていたから、全然短いなって思った……いやそれでも紀元前の話だ。
しかも年が近いなと思ったが、300年も離れている。言わば、江戸時代の人間と一緒に生きているようなものだ。
「えるんぺい・もっぱいぱいに連れてこられたんだって」
「ふ~ん、あいつ俺たちには厳しいくせに、人間には甘いよな」
「そんなに厳しいの?」
「服装とか言葉遣いとか、ぐちぐちうるさいんだよ」
確かに服装はえるんぺいは巫女のような格好で神らしかった。
つるんぽいはくノ一のコスプレをしているみたいな格好で、神っぽくはなかった。おそらく、えるんぺいに文句を言われない程度に彼女なりに崩しているんだろう。
でもまあ、なんだか子供っぽいな。厳しい大人をめんどくさがる子供。
……なんだろう……なんかいたずら心が湧いてきた。
えるんぺいさんは……天然で、大食いで、ビール大好きだ。
えるんぺいさんのエピソードを話したい俺がいる……!!!
「ねえ、えるんぺいさんって普段どんな食事していると思う?」
「ん? ん~、日本が好きだから、日本食を食べてるんじゃない?」
「うん、食べ方を教わったことがある。めんどくさかったなあ」
「えるんぺいさんはいつも……わさびマヨカルビ丼を大盛りで食べてるんだよ」
「ええっ!!!?」
すごく驚いている……w
「で、でっかい瓶ビールをジョッキで飲んでるんだよ」
「ええっ!? い、意外だね……」
「う、嘘じゃないの?」
「本当だよ……たぶん、えるんぺいさんってイメージと実際は全然違うよ」
面白い……! くふふ……!!
「それで、こないだえるんぺいさんが」
「あ」
「あ」
「え?」
「私が、なんだって?」
「あ……!!!」
えるんぺいさんが……後ろに立っていた……。
い、いつの間に……
えるんぺいさんは俺の服を掴んだ。
「来い」
「は、ハイ!」
サファンとピュアは口をあんぐり開けて目を合わせていた……。
俺は家の外でお説教を食らった。
「蘇生できないようにしてやろうか?」
「ゴメンナサイ……」
「まったく……目が離せんな」
「……あの、つるんぽいさんが言いふらすことはあるんですか」
「……あいつはめちゃくちゃ言いふらすぞ……もう……」
やっぱりだ。
「あの二人は、えるんぺいさんのこと厳しくて怖いって言ってたんです。だからえるんぺいさんは本当はとってもかわいくてやさしい方だって言いたかったんですよ」
「ダメだ!」
「何でですか?」
「恥ずかしいんだ! イメージもあるんだ!! 上級神だぞ!? 私は!」
両腕をぶんぶん振りながら、真剣な顔で言ってくる。やっぱりかわいい。
「ッ!! ニタニタするな! 地獄に落とすぞ!」
「えるんぺいさん……かわいいです。俺、えるんぺいさんのこと大好きです!」
「やめろやめろ! もう! 待て!!」
「さっきから、そんなでかい声で叫んで。家の中の二人に丸聞こえですよー!!」
「あ! そ、そんな! もう!」
二人に聞かれたくなくて外に呼び出したくせに大声で俺に怒るなんて。ああ、かわいすぎる。
俺は走って家の中に入って鍵を閉めた。
「おい! 開けろ! んんんんん!!!」
えるんぺいさんはドアをだんだん叩いている。かわいい。ドアの窓から俺を睨んでいる。かわいい。
俺は無視して、サファンとピュアに話しかけた。
「聞こえてた?」
「完全に聞こえてました……すっごくかわいいですね」
「私、えるんぺいさんのこと、ちょっと好きになりました!」
「ですってよー!」
「くううううっ! 開けろ! 地獄に落とす!」
「じゃあ開けまーす」
ガチャッ
「うわっ!」
バターン!!
俺が突然ドアを開けたので、えるんぺいさんはいかにもドジっ子キャラらしい倒れ方をした。かわいい。
えるんぺいさんはそのまま俺を睨んで悔しそうな顔をしている。
「お、おのれ……! 神に対する冒涜だぞ!」
「ねえ、料理はできた?」
「あ、はい、出来てますよ」
「えるんぺいさん一緒に食べませんか?」
「えっ?」
俺はえるんぺいさんに手を差し出した。
「勝手にえるんぺいさんのエピソードをしゃべってごめんなさい。仲直りに、一緒に食べましょう。ね?」
「うう……」
えるんぺいさんは手を取って、立ち上がり、埃を払った。
クリオネ料理がお皿に盛られていた。
いつももっぱいぱい姉妹の作る料理とは違い、西洋風の炒め物、そしてパンとスープがついていた。
「わあ……! お、おいしそうっ……!」
「えるんぺいさん……どうぞ」
ピュアはこの家の中にある椅子の中でも一番綺麗な椅子を譲って、えるんぺいさんを座らせた。
えるんぺいさんは座って、目をきらきらさせている。かわいい。
「これ、なんなんだ? 見たこともないぞ」
「クリオネ料理です。少し独特なクセのある風味ですが、凄く美味しいですよ」
「どうぞ、食べてみてください」
えるんぺいさんはどこからかマイ箸を取り出し、手を合わせ、炒め物をぱくっと食べた。顔がぱあっと明るくなる。かわいい。
「お、おいしぃ……♡」
「よ、良かったです」
「えるんぺいさん、一人で全部食べちゃダメですよ」
「う……分かっているぞ」
「クリオネ取ってきたら、すぐ作れますよ。たくさん食べてくださいね」
「おい、……クリオネがいなくなるぞ」
そして、始まってしまった。もうこうなると……止められない。
「ばくばくばく……」
「ばくばくばくばくばくばくばく……」
ピュアとサファンは……引いていた。
「おい、ビールはないか?」
「ど、どうぞ……」
「ごくごくごく……」
「―――――――ぷはぁ」
幸せそうだ。すごく……幸せそうだ。
「えーっと……あと3匹……捕まえてくるね」
「いや、5匹……かな」
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