濃紫のリシアンサス

波澄怜

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二章

奉職試験へ向けての鍛錬

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「試験と言うのはどんなものなんだ?」

「まぁまぁ、今日はもう休みなよ~。僕はもうヘトヘトだよ~」

「だが…!」

「いいから~、明日話すって~」

「…わかった」

「んじゃ、おやすみ~」

「……。」

(…とりあえず、中に入ってみるか…)

「……!!」

(置いてある場所は違うが同じ家具や設備がある…!

配慮…してくれたのか……)

居間に行き、布団を敷く。

すぐに寝転がり、考え事をした。



「凪は何も言ってないんだけど、実はね、凪はーー」



(あの時、律輝は何を言おうとしたんだろう。凪にはなにか秘密があるのか?)

(そんなこと、考えても無駄か。早く寝よう)

目を閉じると一瞬のうちに眠った。





起きるといつの間にか昼前になっていた。

「もうこんな時間か」

(お腹が空いたな。何か作るか…)

(そう言えば、材料がないな…)

コンコン

(誰か来た?)

ドアを開けるとそこには凪がいた。

「おはようございます。ここには材料が置いていないので恐らくお腹が空いているだろうと思い、作って持ってきました」

そう言うと弁当箱を渡してきた。

「では、私はこれから学校があるので失礼致します」

「迷惑をかけてすまない」

「このくらい、大丈夫ですよ」

そう言って凪は去っていった。

(早速、食べてみるか)

一口、お米を食べてみる。

(美味い)

隣に卵焼きがあったのでそれも食べてみる。

(少しとろとろしている。しょっぱい味付けか…。

とろとろしているのに形が全く崩れていないのがすごいな)

美味しくてすぐに食べきってしまった。

(凪は料理が得意なんだな…)

コンコン

「次は誰が?」

ドアを開けると祈流がいた。

「おっはよ~!調子はどう~?」

「いつも通りだ」

「そっかあ~、で、多分説明を早くして欲しいって思ってるだろうから説明するね~」

「掃除屋に入るには奉職試験を受けて合格しないといけないんだよ。内容は三つから選べて、一つ目は座学試験、二つ目が戦闘試験、三つめが霊力操作試験ってなってる。まぁ優は多分二つ目だろうね」

「なぜ三つも試験の種類があるんだ?」

「掃除屋にも役職があるからね~。座学で合格したら事務仕事とか報告書作成とかやってる。戦闘試験だったら、実際に標的を倒す仕事。霊力操作だったら戦闘の援護とかしてる」

「祈流達はどの試験を受けたんだ?」

「どれを初めに受けたかは正直覚えてないな~。持ってるのは戦闘と霊力操作。律輝も一緒だったはず。凪は座学と霊力操作だね」

「二つ受けたのか」

「一気には受けてないよ?でも複数合格してた方が得はするねぇ~」

「とりあえず、優は二つ目を受けるのが一番いいよ~」

「わかった」

「じゃあ今から特訓だ~!」

「…一応聞いておくが試験はいつなんだ?」

「一週間後!」

「なっ!?」

「落ちないように頑張ろ~!」

(一週間後!?さすがに時間が無さすぎるだろ!)

「安心してよ~。僕が特訓してあげるし、あの山の半妖を倒せてたなら受かると思うから~」

「思うだけじゃダメだろ!確実に受からないと!」

「だから特訓するんでしょ。ほら、裏庭に来て」

俺はため息をつきながらも裏庭に行った。

「じゃあ刀を持って~。僕に斬りかかってみて~」

「いいのか?当たったら怪我をするぞ?」

「僕にその刀が当たればの話でしょ?」

(腹立つ…なら本気で!)

「はっ!」

ふぅっ

「なっ!」

(当たらなかった、今完全に仕留めたと思ったのに!)

「あっははは!面白い動きをするのはいいね~!で~も、そんな動きじゃ僕には当たらないよ~!」

そう言いながら刀の柄の部分で俺の背中に軽くぶつける。

「いっ…」

「あ~、ごめん力加減間違えちゃった~!」

「この野郎…!」

こんなことが何回も繰り返され、いつの間にか夕方になっていた。

「ぜぇ…はぁ…」

「も~、もっと体力つけた方がいいんじゃない?」

(ほんっっとうにこいつ腹立つな!)

「あれ?祈流?なんでここに?」

「お!律輝~。昨日ぶりだね~」

律輝が疲れ果てている俺を見て何かを察したのか祈流に言う。

「厳しくしすぎなんじゃない?いくら半妖を倒したことがあるとしても、祈流よりも強い人なんて絶対にないんだから」

「えぇ~、そんなこと無いと思うけどな~」

「そんなこと、大ありですよ」

今度は凪が来た。

「凪~、昨日ぶりだね~」

「はぁ、良いですか?貴方は一応ここの掃除屋で一番強いのですよ。そんな人の特訓だなんてただの鬼畜でしかありませんよ」

「…祈流は強いのか?」

「えぇ、ここの掃除屋で、一番」

(こんな性格で一番強いのか……人は見かけによらないな…)

「あなたが教えるくらいなら、律輝が刀を握って教えた方がよっぽどいいと思いますよ」

「えー!僕は刀を使うのが苦手なんだよー!」

「刀を握らないなら、律輝は何を使っているんだ?」

「僕は槍使い?いや違うな…薙刀使いだよ。とにかく刀には全然向いてなくって…。」

「そうだ!今から二次試験の練習をしよう!」

「いきなり何を仰っているのですか?」

「そうだよ!もう日が暮れちゃうよ?もうやめなよ!」

「だって~、ちょうど凪がいるし~」

「私を使うつもりですか!?」

「二次試験なんかあるのか?」

「……」

「……」

「ねぇ、いのり兄さん?本当にちゃんと説明したのですか?」

(凪が怒ってる…)

「えーっと、いやぁ~、その~」

「言い訳はございませんね?」

「ないですないです!ごめんなさーい!!!」

「律さん、私の代わりに説明してあげてください。

…私はちょっといのり兄さんに言わないといけないことがあるので」

「わかった!」

「律輝~!助けて~!!」

律輝は祈流を見てにこりと笑った。

「自業自得」

「そんな~!」

「ちょっと耳障りだから家の中に入ろうか!」

「あぁ。」



家に入ると律輝は説明を始めた。

「二次試験っていうのは霊力を操る人、霊能力者が作り出した式神を倒すことで合格になる試験だよ」

「式神?」

「式神は霊力を持つものだけが作り出すことが出来る生き物とでも思っておいたらいいよ!」

「律輝にはいるのか?」

「いるよ!出ておいで、真砂《ますな》!」

そう言うと律輝の肩に砂色のりすが現れた。

「……!式神というのはそうやって現れるのか…」

「人によって違うらしいよ」

「律輝にいるんだったら祈流と凪にもいるのか?」

「祈流にはいなかったと思うよ。凪は…知らないなぁ~」

「そうか…」

コンコン

「あ、お説教は終わったみたいだね!外に出よっか!」



外に出るといきなり祈流が謝ってきた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

(一体何が……)

「いのり兄さんがすみません。それで、もしよろしければ二次試験の練習、今からしませんか?」

「いいのか?」

「大丈夫ですよ。そのくらいなら…」

「では、私は今から式神を作りますね」

「あぁ。頼む」

「戦闘試験ならこのくらいでしょうか…」

凪がどこからか札を取り出す。そして人差し指と中指の間に挟み、親指を立てる。

「我の元に現れよ、急急如律令!」

凪の持つ札に凪自身の霊力が注がれる。

(眩しい…)

途中からとても眩しくなり、咄嗟に目を閉じる。

光が収まり、目を開けるとそこにはカエルがいた。

「作れました。では、どうぞ自由に攻撃してください」

「いいのか?」

「そのためにつくりましたから、大丈夫ですよ」

「なら遠慮なく」

ザシュッッッ

「グヘッッッ……」

カエルが一瞬で居なくなった。

「…。」

「流石ですね。これなら確実に合格出来るのではないですか?」

「え?なんでこんな簡単に……」

「実は最近、霊能力者の質が落ちてきているのですよ。そのせいでこのぐらいの強さの式神しか即興で作れないのです」

「そうなのか…」

「見た訳ではないので分かりませんが…恐らく貴方は一次試験を突破するのも簡単だと思いますよ」

「まぁ、確かにずっと半妖を倒してきてたからねー!僕が刀を握っていた時の二倍は強いね!」

「……。」

(そんなに刀を握っていた時は弱かったのか?……今の律輝が戦っているところも見たことはないけれど。)

「とにかく、いつも通りの鍛錬をこなす程度でいいと思いますよ」

「わかった。そうする」

「もう暗いので私はもう失礼しますね」

「あぁ。ありがとう」

「いえいえ。あ、渡すの忘れてました」

凪は俺に近づいて袋を渡した。

「適当に材料を持ってきました。これで今日と明日はどうにかしてください。あと、お弁当箱を返してくださると幸いです」

「材料をくれるのか?助かる。弁当箱は…ちょっと待っててくれ」

俺は家の中に入って急いで取りに行き、家を出たあと

凪に渡した。

「とても美味しかった」

「そうですか?それは良かったです」

「では帰りますね。さようなら」

「凪!待って!僕も帰る!!」

「優!またね!!」

「あぁ。またな」

二人が見えなくなり俺も家に入って夜ご飯を食べようと思っていると、急に声が聞こえてきた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「……祈流、まだ居たのか」

「酷い!そんなこと言うなんて!」

「凪は怒ると怖いんだよ!」

「そんなことは今いいから早く帰れ」

「うぅ、ぐすっ。分かったよ~。じゃあね」

「あぁ」

(どれくらい怖いんだろう……。)

「もう月が出ている。光を浴びせておくか」

刀を抜いて月の光に当てる。

「…三人に手伝って貰ったんだ。絶対に合格しないとな」

そう思いながら、時間はすぐに流れていき、一週間がたった。

コンコン

扉を開けると律輝がいた。

「試験会場まで案内するよ!準備はいい?」

「あぁ、いつでも」

「じゃあ、いざ出発~!」


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