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11 これからの為に
しおりを挟む俺達は購入した店を見に行く。
表通りに面しているからかなり人が行き来していて、集客は望めそうだ。
グザファンも何やら真剣に考えているようだし、これは楽しみだ。
奥には部屋もあり、事務所と倉庫に使えそうだ。
「主、いい感じですね。
ここはサキュバスとインキュバスを召喚して働かせましょう」
サキュバスをと聞いて至って健康的な男子高校生ならムフフと嫌らしい想像をするだろう。
俺はその一人だ。
「主、お楽しみの所申し訳ありませんが何を想像しているのか容易にわかりますが、サキュバス、インキュバスは夢魔であり実際に体を交わる訳ではありません。
命令すれば可能でしょうが、彼らの本来の力は夢にあります」
「え?そうなの?」
「はい。
夢を操り、理想とする姿で現れて夢の中で楽しませて現実を逃避させるある種恐ろしい力です。
溺れないようにお気お付けを」
「わ、わかってるよ!!
内装とかどうするんだ!?」
少し恥ずかしくて話を変える。
グザファンはそれにクスクスと笑う。
「私がやっておきましょう。
配下に命じて今夜中に終わらせます。
主には品物のご用意をお願いします」
「凄いな。
ほんと何でも出来るんだな」
「自分の存在の為なら悪魔も死ぬ気で働きましょう」
グザファンは妖しく笑う。
背筋がゾクリとし本能が話題をそらす。
「とりあえず何が欲しいんだ?」
「そうですね。
塩、胡椒と他に調味料を一点と小物を少しで大丈夫ですよ。
後は客引き用に光物を少し頂けますか?」
「光物? 宝石とかか?」
「いえ、そこまでの物ではなくて大丈夫ですよ。
そうですね、ガラス製品でどうでしょう?
綺麗なグラス等で十分です」
ふむ、それ位ならなんとかなるかな?
客引きの目玉にするのかな?
あらかた見て回り次は購入した家に行く。
上流区は大きな屋敷が建ち並ぶ閑静な屋敷街で、俺達は外壁に向かって進み端の方へ行く。
見えてきた屋敷は壁が日光を遮り影の中にあり、雰囲気が暗く陰鬱している。
「ほう、これは中々に立派なお屋敷ですね」
グザファンは感心したように頷く。
確かに門構え、庭の広さ、屋敷の大きさは立派な物だけど、ぶっちゃけお化け屋敷みたいだ。
ギルドで渡された鍵を使い門を封鎖する鎖の鍵をあけて鎖を解き、中に入る。
一歩中に入ると空気が冷えるような感覚がする。
「これに俺は今日から住むのか……」
「ご安心を、我々悪魔が主の絶対の安全を誓います」
「ハハハ……頼もしいね……」
雑草生い茂る庭を進み、屋敷を目の前にして圧倒する。
押し潰されそうな存在感を放つ屋敷だ。
壁は蔓が這い、窓からは覗くくらい部屋からは見られているような錯覚さえしてくる。
その雰囲気に鳥肌が立ち身震いをする。
「さぁ、中に入りましょう」
グザファンは特に気にした様子もなく、むしろ楽しそうだ。
玄関の鍵をあけて中に入ると、長年人が住んでいないのか少し埃っぽい。
「これはいけませんね。
主のお体を障ってしまってしまいます」
そういって指をパチンと鳴らすとグザファンから風が吹き埃を奥へと追いやる。
宙に火の玉を浮かせて光源とする。
「主、蝋燭を主の能力で買う事は可能でしょうか?」
「出来るけど……。
ちょっと待ってて」
異世界マーケットを開き蝋燭を探す。
とりあえずシンプルな物で大き目のがいいかな。
操作して購入する。
3本セットで85Pのお得物だ。
「これでいいか?」
「ありがとうございます。
出来ればたくさん欲しいのですが……」
たった85Pだしこの屋敷では必需品だから100個を購入する。
さっき買ったのと合わせて303本になる。
「ありがとうございます。
とりあえず屋敷全体の燭台に取り付けて灯してきます」
近くの燭台から次々と取り付けて灯していく。
照らされた屋敷の中は以外にも悪くはなく、整っている。
中も外観然りとボロボロなのかと思ったがちゃんとしている。
しばらくしてグザファンは戻ってきて、屋敷は明るくなった。
「ついでに埃も払っておきました」
この悪魔は本当に便利である。
俺達は部屋を次々と見ていく。
玄関ホールを左に行くといくつもの部屋が並び、その奥には炊事場がある。
このエリアは使用人用なのか部屋が大部屋が2つにこじんまりとした部屋が2つだ。
玄関ホールに戻り次は右をいく。
広い部屋が3つ並んでいる。
応接室に貴賓室、客室と言ったところだろうか。
奥には厠がある。
玄関ホールに戻り、二又に別れた大きな階段の中央に両開きの扉があり、そこを通ると中庭に出る。
ここも雑草が生い茂っている。
「せっかくの中庭だから綺麗にしたいな」
「やっておきます」
当然のようにグザファンはそういう。
次は階段を上がり各部屋を見ていく。
左は同じような間取りの部屋が4部屋並んでいる。
ここも客室といったところだろうか。
奥は大ホールになっていてパーティーが出来そうだ。
全くするつもりは無いけど。
階段の所に戻り、次は右を行く。
書斎に寝室に大き目な部屋に普通の部屋とこの屋敷の主の為の部屋だ。
「2階右が主の居住スペースのようですね」
「実質この2階右側が俺の生活圏って事だな。
わかった。
後は好きにして良いよ。
この屋敷に来るのなんて明久達くらいだし。
そうだ! あいつ等を呼ぶか!!」
「全ての準備が整ってからお願いします。
寝室の隣りにあります大きい部屋は何になさいますか?」
この大きな部屋は身内だけの寛げるスペースにしようかな。
遊具室なんてどうだろうか。
その隣の部屋は談話室的な居間にしてしまおう。
「畏まりました。
それでは屋敷の大掃除としましょう」
グザファンに促されの大ホールに向かう。
ここで悪魔召喚をするという。
「私は眷属を呼びますので主もお願いします」
「わかった。
とりあえず魔力分だけ呼ぶわ。
意思疎通をしっかりしたいから名前付きを呼ぶから3~4体が限界かもしれないけど」
悪魔召喚スキルを開き、召喚可能悪魔の一覧を見る。
「う~ん。
詳細がわからないからなぁ。
名前だけあっても迷うな」
とりあえず1体呼んでみるか。
適当にタップしする。
床に魔法陣が現れて呪文が浮かび上がる。
「冥界より来たれ 屠れ 貪れ 我が剣として敵を無情に理不尽に蹂躙せよ その名はルゼバル」
俺の魔力を吸い魔法陣は宙に浮き急降下して床に叩き込まれる。
魔法陣は砕かれ黒い霧となり霧散する。
その霧が晴れると赤黒い体にコウモリの翼、爪は鋭い鉤爪だ。
頭には螺旋状の太い角かこめかみから天に向かって生えている。
その悪魔の眼光は鋭く、睨まれた者はプレッシャーに硬直しそうだ。
俺?別にそんなの感じないけど。
「命に従い来た。
誰を殺せばいい」
なんとも悪魔らしい悪魔な事か……。
「いや、今はまだいい。
その場に待機しててくれ」
俺の命令にギロッと俺に目を向けてその場に跪く。
魔力を見てみんるとこの悪魔を召喚するのにMPを1600程消費している。
次も同じ様に召喚する。
「堕落させる快楽の悪魔よ 汝の力で夢へと誘え 精を貪り現実を奪え その名はヴェリウィネ」
現れたのは扇情的な露出の度の高い女の悪魔だ。
ダークブラウンの髪にこっちを魅了するかの様な誘惑の目。
腰から翼が生えているムチッとした体を全力で使い惑わそうとする。
俺の理想とする女性の姿で現れたのはその悪魔は湿った口を開く。
「あら、可愛いご主人様ね。
私の極上の快楽体験したくて呼んだのかしら?
現実なんて忘れさせてあげる」
この声音、言葉に体に電気が走るような感覚がし、頭がボーッとする。
体の奥底が熱を帯びて下半身が疼く。
「主を誑かすのは辞めなさい」
グザファンの言葉とプレッシャーにハッとする。
気がつけば大ホールの半分程を多種多様なあらゆる悪魔が埋めていた。
ヴェリウィネは瞬時にどっちが格上かを判断し俺への誘惑を辞める。
「少し悪戯が過ぎました。
申し訳ありませんご主人様」
佇まいをただし俺に跪く。
どうやらグザファンは下級の中でも相当に実力のある上位に位置する部類のようだ。
MPを見てみるとルバゼルと同じくらいの消費量だ。
「主、私の配下で屋敷内を掃除させます」
そう言うとグザファンの呼んだ悪魔は散っていく。
グザファンは俺の斜め後ろに控える。
「やっぱりグザファンは凄いな……」
「お褒めに預かり光栄です。
まだ召喚出来るようでしたら召喚してしまいましょう」
言われた通りにして悪魔を召喚する。
「その言の葉は偽りで出来ている 惑わし 騙し 陥れる悪魔よ 我が敵を虚言をもって乱せ その名はポルオソ」
現れたのは身なりのいい服を身に纏う老人の姿をしておりその目は深淵の如く黒に染まっていて、老人には似つかわしくない鋭く黒い爪が指先から生えている。
好々爺な表情は俺を見てニヤリと妖しく笑う。
そのニヤける口から覗くのは鋭い牙だった。
「ふぉっふぉっふぉ。
主の召喚に応えこのポルオソ、老骨にムチを打ち参上した」
「ふん、真の姿を表わせ。
主を謀るかポルオソ。
この私を怒らせるなよ」
「おお!地獄から消えてしばらく、くたばったかと思えばこの様な矮小な世界に居ったとは。
主、申し訳ありません。
少し戯れが過ぎたようです」
俺に詫びを入れ跪き真の姿を晒す。
姿が若くなり目は釣り上がり黒目に赤い瞳をしている。
「それにしても、主から賜った魔力は誠に美味よ。
地獄の魔界であれ程の馳走はそうそうなかろう」
この吸い取られている魔力は贄として悪魔に行ってるのか?
何というかそれを旨いと言われて複雑な気分になる。
「というか2人は知り合いなのか?」
「ポルオソは私の居た所に流れ住み着いた悪魔です。
私に挑み負けた配下の一人ですが、その力は私が認めます」
「マジか!
そういう事もあるのか。
広いようで狭いとはこの事か。
あと1体は召喚できそうだからやっちゃうぞ」
あと1体を呼ぶ。
「魔に堕ちし魔導の探求者よ 汝の力と知識を我に捧げよ 忠実なる下僕 その名はロードル」
ローブを纏う小柄な悪魔が佇む。
ギョロッとした目に額から小さな角を生やし、巨大な禍々しい杖を持っている。
「おお!おお!!
ここは……この世界は!!
主よ、地獄から私を召喚して下さり感謝を尽きません。
闇の力に取り憑かれ、魔に堕ちて長き時を地獄で過ごしました。
あれは正に地獄だ……。
何なりとお申し付けください!
私の力は主の為に有りましょう!!
戻ってきたぞ世界よ!!」
その見た目からは想像しなかった感じにギョッとする。
とりあえず4体召喚した。
「ルバセルとロードルは俺の側に、ヴェリウィネとポルオソは店を任せよう。
これでどうかな?」
グザファンに尋ねる。
「ええ、それでいいでしょう。
足りない人員は私がカバー致します。
屋敷、店の警備は私にお任せください。
さあ今日はお疲れでしょうからお休みください。
御夕食が出来ましたらお呼びいたします」
確かに疲れた。
家を買ったり商会作ったり、悪魔を召喚したり色々あった。
ここは大人しく従い休ませでもらおう。
「皆はグザファンの支持に従うように」
それを言い残して寝室へ向かった。
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