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 ギルドの中は冒険者で溢れかえり、俺はカウンターに並ぶ列の最後尾に立つ。

 皆はそれぞれ汚い袋を持っていたりしている。
 手ぶらな俺を見て気持ち悪くニヤニヤしている奴も居る。

 列は順調に進み、次は俺の番となる。

「カードをお預かりします」

 ボックスからカードを取り出し受付のお姉さんに渡す。
 お姉さんはカードを何かの道具に差し込む。

「ゴブリン討伐とヒール草の採取ですね。
コチラに提出お願いします」

「あの、クエスト以外の討伐や採取も一緒に出しちゃって良いんですか?」

「はい、大丈夫ですよ。
こちらで一緒に処理しちゃいます」

 という事なので俺はボックスから放出する。

 まずゴブリンの討伐証名部位を82個全部取り出す。
 次にヒール草を倉庫に突っ込んだ分全部取り出す。
 ボックスのリストによると271本だった。
 もうこの時点で受付のお姉さんは大慌てし、周りに居る冒険者は俺を凝視している。
 そして、ヒソヒソと何か話している。

「見間違いじゃなければボックスからあれ全部出したんだよな?」
「ボックスってあんなに入るもんなのか?」
「普通小物とかお金を入れておける位しか入らないだろ……」
「なんだあの容量……」
「確かボックスは個人の潜在能力で大きさは決まるって聞いた事あるぞ」
「おいおい……まじかよ……」
「上位冒険者ってことか?」

 俺は聞こえて来る話を無視して次にスライム似合った白い玉を23個取り出しそれを起き、また驚かせてしまう。

「おいあれ、スライムの核だよな……」
「全部無傷に見えないか?」
「あんな何でも溶かすスライムから無傷で取り出すとか魔法じゃないと無理だろ」
「あの数見てみろよ全部そうだぞ。魔力どんだけあるんだよ……」
「俺は6個で限界だぞ……。スライムを6匹凍らせきって魔力が尽きる」

「あの、コボルトと一角ウサギとウルフとオークの討伐証明部位って何処ですか?
わからなくて全部持ってきてるんですけど」

 俺の言葉に一同は驚愕する。

「えっと、丸々お持ちという事でしょうか……?」

「そうだけど」

「し、少々お待ちください!!上の者を読んできます!!」

 受付のお姉さんはそう言って急いで奥に行ってしまった。

「な、なぁ流石に冗談だよな……?」
「容量ヤバくないか?」
「俺達のパーティーに入らないかな」
「ばか、入るわけ無いだろ!あんなの持ってくるくらいだぞ。実力は出払っている上位冒険者並だぞ」
「上位冒険者でもあんな量持ってこないだろ!!」

 外野がなんだかヒートアップしてきている。
 ボックスに入れなくても俺には影収納があるから際限無いんだけどね……。
 闇魔法ってチート級だわほんと。
 それを超える涼君まじ怖えぇ……。

「お待たせしました。
担当変わりまして、リズがお受けいたします。
ここですと目立ちますので別の場所で受付させて頂きます」

 そういってリズさんは他の職員に出してある物を運ばせて俺達は別室に案内される。

 会議室の様で机や椅子が立ち並ぶ。

「机を退かしますので今回出すものは床に並べてください」

 どんどん開けていくスペースにモンスターを出していく。

 一角ウサギ10体
 コボルト22体
 ウルフ38体
 オーク15体

 この数にリズさんを含め職員は目を丸くする。

「あの、大物もあるんですけど」

「え!?まだあるんですか?!」

「巨大蜘蛛に土トカゲに土ゴーレム?と大きなゴブリンとか……」

 皆は言葉を失ってしまった。

「じょ、上位冒険者担当の者を呼んできます……。
あなた達はこのモンスターの査定をしておきなさい……」

 リズさんは職員に指示をして部屋を出て行った。
 しばらくして、リズさんは一人の女性を連れてくる。

「おー!君かー!噂のバケモノ君」

「せ、先輩!失礼ですよ!
申し訳ありませんハルタカ様……」

 その先輩とやらの態度に慌てて謝罪するリズさん。
 俺としては別にどうって事ないが、俺の後ろで待機しているグザファンからは少し怒気を感じた。
 リズさんが謝らなければ何していたかもしれん。

「私はメイラ。
上位陣はほとんど出払っててあたし達暇してたのよね~。
下位は人手足りてるし。
それじゃちゃちゃっとやっちゃいましょう!
ここじゃスペース足りないでしょうし私達の所に移動しましょー!」

 そう言われて今度はメイラさんに連れて行かれる。

 案内された部屋は既に何人かスタンバイしていた。

「それじゃー出しちゃってー!」

 俺はボックスからオーガを3体
 巨大蜘蛛を12体
 土トカゲを34体
 土ゴーレムを5体
 大きいゴブリンを28体
 更に大きいゴブリンを1体

 広かった部屋はギチギチと詰め込まれる。
 流石にこれ予想してなかったのかメイラさんは引き攣った笑顔をしていた。
 他の職員は驚愕し、そして一番大きいゴブリンに騒ぎ始める。
 メイラさんも真剣な表情になり、俺に聞いてくる。

「このゴブリンキングは何処で……?」

「王都の近くの森でですが。
でも、かなり奥に居ましたね。
その小さい奴の中にボロボロのが居ますよね。
そいつらが少し奥のほうで小さい集落を形成していて、その更に奥の森に巨大な集落というよりも町並みの物があって、こいつらが居ました」

「あの森に!?
上位冒険者達が遠征する前にあの森では危険なモンスターは掃討したはずなんだけど……。
とにかくギルドマスターを呼んでくるわね!!」

 あれよあれよと大事になっていくのに溜息が出る。

 これじゃあまた誠司に笑われるな……。

 しばらくして、メイラさんはギルドマスターを連れてくる。
 ガストビアさんはこの部屋の有様に目を見開き、ゴブリンキングを見て表情を険しく指せる。

「この状況を説明してくれないか?」

 俺はこのゴブリンキングの事をグザファンの念話補足を受けながら説明する。

「その規模の巨大集落を形成するのには早すぎる。
掃討をしたのは約一月前だ。
その時の報告ではこのようなゴブリンについて目撃報告は受けていない。
隈無く森を探索して危険を排除させてから遠征に行ったはず。
明らかに不自然だ」

 脅威を未然に防いたという事で感謝された。
 これは報告書に纏めて王に知らせるという。
 何やら不穏な雰囲気だ。

 とりあえず俺はこの結果を踏まえて、FランクからDランク昇格となり、Cランク昇格試験を受ける事になった。

 ゴブリンキング討伐及び大集落殲滅の特別報酬も出るとの事で俺はそっちが嬉しかった。

 これらの査定には時間がかかるという事で俺はギルドマスターに連れられて彼の執務部屋に行く。

「今回の事は本当に助かった。
まさかこんな近場でゴブリンキングが発生するとは……。
ハルタカの実力はBランクを超えるだろうな」

 これは俺が凄いんじゃなくてグザファンが凄すぎるな。
 まさかここまでとは。

(さすがグザファンだな。
今後もよろしくな)

(光栄です。
ですが、あの程度は私にとっては雑魚同然です)

 その後は査定やら手続きが終わるまではガストビアさんと聴取を受けたり雑談して過ごす。





 だいぶ時間がかかり、やっと査定が終わった。
 リズさんが代表して今回の支払いの担当をする。

「今回提出された物全てを厳正に査定した結果、報酬は特別討伐報酬も込みで1855万1000ラグになります。
特別討伐報酬500万。
ゴブリンキング素材買い取り額400万
ゴブリンジェネラル素材買い取り28体で413万。
傷が多い物があった為その一体については減額されました。
オーガ、クレイリザード、クレイゴーレム、デススパイダーが合計で532万。
コチラが我々が査定した物になります。
次に、下位の買い取り結果です。
ゴブリン討伐クエスト報酬2000ラグ。
ゴブリン討伐数報酬72×100ラグで7200ラグ。
スライムの核買い取り23個×500ラグで11500ラグ。
コボルト、一角ウサギ、ウルフ、オークの素材買い取り合計8万300ラグ。
合計で1855万1000ラグとなります」

 ドンと置かれる金貨の山。
 一気に大金持ちになってしまった。
 今日からいい宿に泊まれそうだ。

(主、家を買うのはどうでしょうか?
私達も動きやすくなります)

 家か!
 それも悪くないな。

(今日は宿に泊まって明日見てみようぜ)

(畏まりました)

 俺は目の前にある金貨の山をボックスにしまう。

「今日は本当に助かった。
君が冒険者になってくれてた事は本当に良かった。
今後もよろしく頼む」

 ガストビアさん達一同は俺に頭を下げる。
 照れくさくなり早々に退散する事にする。

 俺が1階に降りると、冒険者達が俺を凝視し遠巻きに見ている。
 そこに、一つの集団が俺に近寄ってくる。

「俺達はCランク冒険者パーティーの流星の旅団って言うんだが、良かったら入らないか?魔法使いを探してたんだ」

 それを切っ掛けに勧誘が激しくなる。

 ガヤガヤと俺の周りは賑やかになる。
 遠巻きで見ているのは、元々興味ないか、出遅れて機会を伺ってるか、一人で羨ましそうに見ているやつだ。

(主、どういたしますか?)

(いや、入るつもりは無いよ。
誰かと組むなら俺がリーダーで秘密を厳守できる奴がいいしヒーラー一人で十分だ)

(畏まりました。
それを聞いて安心しました)

 いい加減この鬱陶しい状況抜けたいな。

(俺は自分の影に入るからグザファンは外に出て人気の無いところに向かってくれ)

(畏まりました)

 俺は自分の影に魔力を流し、波紋が浮かび上がって自分の影に沈んでいく。
 その様子に冒険者達は驚愕し一歩下がる。
 グザファンは冒険者を払い除けて外へ行く。

 完全に影に入り込み、俺の影が消えた事により入り口は閉じる。

 上を見れば他人の影から外が見える。
 もちろん女の子のスカートの中ゲフンゲフン。
 俺の影の中で無名の悪魔たちは寝ていて、メリエルの繭は安置されている。

 俺はグザファンの影を追い、人気の無いところに着いてグザファンから念話が来て、グザファンの影に俺の魔力を流す。
 波紋が広がり俺はその影からにゅっと出てくる。

「ありがとう。
それじゃ宿を決めて今日はもう休むか」

 街の中をぶらぶらと歩きいい宿を探していく











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