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6話 襲撃?
しおりを挟むモリスじいさんの家に帰り、事の顛末を話すとあっけらかんと「おぬしのしたいようにすれば良いんじゃ」と言ってくれた。
これからも家に居ていいとの事なので、今回稼いだお金を取り出して渡そうとしたら、断られた。
「わしは金には困っておらんからな」
そう言って笑う。
翌日もポーション作りをしたりと面倒を見てくれる。
それから数日、俺は今必死に聖魔法の浄化を練習している最中だ。
錬金術に必要な素材に浄化水がある。
それを作るには超純水に浄化の魔法で浄化しないといけない。
教会に行けば浄化はやってくれるけど、結構高かったりする。
だから、自分でやった方が後々利益になると考えて、エウリムさん経由で教会が発行する聖魔法の魔導書を買った。
お値段驚きの金貨300枚。
200枚を借金して今はセコセコとポーションを売って返済している。
知力がSランクとかなり高いお陰でスキル習得がしやすく、初級聖魔法のヒールとホーリーアロー、マジックバリア、ターンアンデッドは割とすぐ覚えた。
たまに腰を痛そうにしているモリスじいさんに、練習と称してヒールをやっている。
「よし、今日もやるか」
小さな黒い石を取り出し、集中する。
この石は魔石だ。
魔物の心臓部であり、魔物のランクによって大きさが変わる。
今持っている魔石は最低ランクのGで、ゴブリンの物だ。
この魔石で何をするのかというと、浄化の練習だ。
魔石は錬金術の素材になったり、魔導具や武具やアイテム等幅広く使えるが、魔物の邪気を浄化しないと使い物にならない。
この魔石の浄化も教会の取り柄であり、稼ぎになっている。
一部の人間は彼らの事を金の亡者と呼んでいたりする。
(余計な事を考えるのは止めて集中しないと)
改めて魔石に集中し、翳した手から魔力を放出し包み込む。
魔石は俺の魔力に反応して淡い黒のオーラを発する。
これが魔物の邪気であり、瘴気でもある。
当然、人間にとって害ででしかない。
聖属性の魔力が魔石を包み込み邪気を抑える。
俺の魔力を拒絶しようとしているのか、邪気は膨張して反発する。
もし無理やり魔力を込めて力技で邪気を浄化しようとすると、最低ランクのGランク魔石なら容易に弾けてしまう。
邪気と俺の魔力がせめぎ合い攻防を繰り広げる。
(微妙な力加減が難しいな……)
俺の魔力はBランクと多い方だと思うから、些細な加減や操作が難しいのだ。
少しずつ少しずつ邪気を抑え込んで、ようやく自分の魔力を魔石に浸透させる。
聖属性の魔力は魔石にある邪気を少しずつ浄化していき、黒い色だった石が徐々に薄れていって透明な魔石になる。
《浄化されたゴブリンの魔石 G
純粋な無属性の魔力の結晶》
「ふぅ……、疲れた」
この浄化した魔石は魔導具のエネルギー用に取っておく。
『どんどん作業が早くなってきてるね』
(慣れてきたからね。
でもまだ未熟だよ。
浄化水が出来るようになるまではひたすら反復練習して浄化力を高めないと)
『あんまり無理しちゃだめだよ』
(そうだね……。
ちょっと息抜きでもしようかな)
背伸びをして家を出る。
「モリスじいちゃんは裏庭かな」
その家には小さな裏庭があり、そこで趣味の菜園をしているのだ。
ほそぼそと楽しんでいる。
「今日は串焼き肉にしようかな」
広場の屋台エリアの方へ向かう。
たまに屋台で買い食いをして街をぶらつくのが良い息抜きになる。
新しい発見や掘り出し物が見つかったりするのが楽しい。
『モール、オイラのぶんも買ってね!!』
(もちろん!!)
ノームもすっかり屋台飯がお気に入りだ。
いつも二人分を買って人が居ない所で食べている。
空腹を煽る香ばしい匂いを漂わせる屋台に並ぶ。
店主オリジナルの甘辛のソースがグレイウルフの肉によく絡んですごく美味しい、お気に入りの屋台の一つだ。
『モール、気をつけて。
あの人間が君を狙ってる』
いつもの穏やかなノームの雰囲気が一変して、指を指して険しく低い声で警告する。
(また?
最近多いなぁ)
それもこれも原因は自分にある。
商人ギルドでの一見で噂はあっという間に広がったのだ。
商人は口が早い……。
表向きは商人ギルドのギルド長エウリムさんの庇護を受けているって事で表立っては接触してこないが、こうしてコソコソと付き纏われるようになった。
何度か誘拐されそうになった事もある。
だが心配ない。
俺には最高のセ○ムがある。
悪意がある人間が俺に近付こうとすればノームが直ぐに教えてくれるし、なにかしようとしてくれば、魔法で応戦する。
大抵人気のない場所で襲われるからゴーレムで撃退だ。
俺が就寝したときはノームが何かをしている。
順番が来た俺は注文する。
「おっちゃん、串焼き肉6本!!」
「あいよ!!
銅貨36枚だ」
ポケットから銅貨を取り出すフリをして亜空倉庫から取り出す。
炭火で焼き上がる美味しそうな串焼き肉を6本受け取って人気の少ない裏路地に行く。
日陰で人通りがあまり無いところで亜空収納から椅子代わりに木箱を取り出してそれに座る。
「ほい」
ノームに串焼き肉を渡すと、勢い良く齧り付き美味しそうに咀嚼している。
俺も頬張り味わっていると、音もなく目の前に黒衣を纏い顔を隠している男の人が現れる。
「一緒に来てもらおうか」
「……誰ですか?
怪しい人にはついて行きませんよ」
「大人しく言うことを聞いたほうが見の為だぞ」
そう言って黒衣の中からナイフを取り出し俺に向ける。
俺は残りのお肉を口に入れてゴーレムを作る。
土がもこもこと盛り上がっていき、形が出来てくる。
「ッ!!」
当然、男はゴーレムが出来上がるのを待ってくれるはずはなく、俺に向かってナイフを突きつけようと勢い良く迫ってくる。
『愚か者が』
底冷えするような恐ろしさを感じる低い声でノームは呟く。
怒りに満ちた目は男に向けられ、威圧を放つ。
地面に手を翳すと、一瞬にして地面に鋭いクリスタルの棘が無数に生えて男の手足を穿く。
「容赦ないね……」
『モールを斬りつけようとした報いだよ。
命があるだけ感謝してほしいくらいさ』
感情なく男に向かって吐き捨てるノーム。
両手足を串刺しにされた男は激痛にもがく。
「ありがとうノーム。
油断してたよ……」
『あはは!!
モールはオイラが守るよ!!』
「こいつどうしようかな」
『埋めちゃう?』
「いやいや……、殺すのは流石にちょっと……。
この棘、消せる?」
『簡単だよ!!』
ノームは笑顔で応える。
水晶の棘はズズズと地面の中に戻っていって消えた。
男はバタッとその場に倒れる。
「グゥッ……一人で……何ブツブツ、言ってるんだ……」
倒れた男を足元に見下ろす。
「何処の誰かは知らないけど、コソコソあくどい事してないで俺に会いたいならちゃんと正面から来てよね。
じゃあね」
「ッ……ハァハァ……くそ……」
男はそう言うと意識が途絶えた。
亜空倉庫から非常用に取っておいたポーションのストックを1本取り出して、蓋を取り男に振り掛ける。
『その男どうするの?』
「別にどうにもしないよ。
ただ死なれたら嫌だなぁって思っただけだから。
それじゃあ行こっか」
『うん!!』
男を放置してその場から離れる。
ノームは一瞬建物の影を見て、俺の後を追いかけてきた。
裏路地から出てきた俺達。
(それにしても、さっきの魔法凄かったなぁ!!
クリスタルを生やして串刺しにするの。
あれって俺にも出来る?)
『う~ん、今のモールにには難しいかなぁ。
石でなら同じ事は出来ると思うけど』
(そうなのかぁ。
な、なぁ、あのクリスタルって残す事出来ないかな?)
俺の心を読んだのか、クスクス笑うノーム。
『モールも欲深いなぁ。
あれはオイラが魔法で作った物だから無理だけど、地中から引っ張り出してくることは出来るよ』
(俺は商人なんだよっ!!
それじゃあさ、何個かお願い出来ないかな?)
チラチラっと見ていると、少し困ったような顔をするが了承してくれるノーム。
『モールの地魔法のレベルが上がれば出来るようになるよ』
そう言って地面に溶け込むように潜っていくのだった。
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