でんでんむしが好きな君

ひらどー

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「もっかーい」を責められない

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 我が子は、何か楽しいことがあると、「もっかーい」と言って繰り返し催促する。意味は「もう一回やって」だ。正しくは「ぼくが飽きるまでずっと繰り返してください」を意味している。これが発動されると、こちらがどれほど疲れていようが眠たかろうが、彼が飽きるまでは何度も同じことをしなくてはいけない。とはいってもこちらにもやむにやまれない事情があることがある。そんなときは適度なところで切り上げる。可能な限りは付き合ってあげるが、二、三回で止めているのが現状だ。
人によっては、子どもを甘やかしているように見えるかもしれない。言い訳がましいが、それは違う、と否定させて欲しい。子どもの言うままに「もっかーい」を繰り返しているのには理由があるのだ。
 まず、我が子が「もっかーい」という言葉を覚えたきっかけをお話ししよう。子どもはこちらの身に覚えのない言葉を言うこともあるが、今回は間違いなく私が原点だ。
 子どもと一緒に遊んでいると、ふとした瞬間に思わぬ仕草をすることがある。そんな仕草は目に焼き付けて記憶していきたい。初めて自分の頬を触って見せたときや、初めてボールを投げ返したときなど、子どもの「初めて」を見たとき、特によくそんな感情になる。記憶に残すといっても、人間の記憶には限界がある。時を経るにつれ風化したり、あるいは美化されたりと、元の記憶は失われてしまう。これは避けようがない。それでも、なるべく留めておきたいとの願望から、子どもの何気ない瞬間をスマートフォンで撮影する癖がついた。子どもが生まれてからの撮影枚数は、それ以前の比ではない。元から写真に興味が薄く、ほとんどカメラ機能を使ったことがなかったせいもあるが、出産後は撮った写真の数がとにかく多い。スマホは手に取ってすぐに起動できるため、使い勝手がいいのだ。その便利さに頼って、ついつい写真を撮ってしまう。それでも、こちらの反射が間に合わないこともある。
 あるとき、子どもが自分の頬を両手で挟み、顔を潰して見せた。何ともぶちゃいく。ぶちゃ可愛いその仕草を見て、スマホを手に取った。残念ながら、カメラを起動したときには既に、両手は膝の上に移動していた。だからといって簡単に引き下がることはできない。駄目元で、もう一回、と子どもに頼んだ。
 もう一回、今のやって。
 願いが通じたのか、子どもは同じ仕草をしてくれた。動画を起動したので、録り逃しはない。しかし、ここで撮影を終わらせるのは惜しい。
 もう一回、もう一回だけやって。
 子どもは再び繰り返してくれた。
 そんな我が子の行動に甘え、私は何度も「もう一回」を繰り返した。
 だからなのだろう。我が子の「もっかーい」が、言葉通り一回だけで終わらないのは。
母親が一回だけで終わらせないから、子どもも一回だけで終わらせないのだ。
反省はしているが、後悔はしていない。おかげで子どもの可愛い仕草を映像に残すことができた。今後も私は子どもの「もっかーい」に何度も付き合っていくつもりだ。代わりと言ってはなんだが、子どもにも私の「もう一回」に付き合って欲しいと願っている。
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