一瞬の永遠を

朱雀

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ポップコーンは必需品

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大きなスクリーンに映し出されるのは、

自分ではない誰かの物語。

ある時は非現実的な世界の話。

ある時は甘酸っぱい青春の話。

ある時は闇に潜む化け物の話。


そんな世界を見に行く時の必需品は、





スマホが鳴ったのは夕陽が半分ほど沈んだ頃だった。

画面に映し出された名前に少しだけ疑問を持ちながら通話ボタンを押す。

「あ!大輔?」

スマホから聞こえるその声はどこか楽しげだった。

「そうだけど…どうした?」

机に広げられたプリント類を片手でまとめながら話をする

「映画、見に行かない?」

「映画?」

「そ!チケット貰ったからさ」

「へー。いつ?」

「今日!」

「はぁ?今日って」

「今から!駅に集合な!」

そう言って通話は終了された。

あまりに突然のことで呆気に取られていたが、身支度をして家を出た。

陸の突然の誘いなんていつもの事だけど。

こっちが用事あったらどーするつもりだったんだよ。

大体アイツはいつも……

なんて考えながらも少しだけ楽しみだった。

駅に着くと既に山田の姿があり満面の笑みで手を振っていた。

夕暮れ時の電車に乗りこみ隣町へ。




流石にこの時間から映画を見る人は少ないらしくガラリとしていた。

「映画を見るならこれだよな!」

そう言って山田は真っ先に売店へ向かい

塩とキャラメルのポップコーンを買ってきた。

「全部食べ切れるのか?」

「え?大輔食べないの?」

「……食べるけど」

なら大丈夫!と山田の謎の自信に流されて指定された5番シアターへ向かった。






「面白かったな!」

帰りの電車に揺られながら山田が言った。

「うん。意外な展開だったし」

映画の物語を思い出しながら八神が答える。

「ポップコーン美味しかったし!」

「………食べきれないくらいな」

「でも、映画といえばポップコーンじゃん」

「それは認めるけどさ」

だろ?とドヤ顔を見せる山田。

「だけど一個でいいよな?」

「………はい。」

真正面の真っ黒な窓ガラスには八神と山田の二人と

その手元にある食べきれなかったポップコーン達が映っていた。





次の日

山田と八神の教室ではポップコーンの香りが充満していた。
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