氷の姫と炎の王子

アラセイトウ

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「僕の姫。泣かないで。」

突然、背後から抱きしめられた。
ふんわりと。
それとずっと聴きたかった彼の声が。
一瞬幻聴かと思った。
私(わたくし)が夢見るあまりに脳が見せた幻聴かと。
だって、彼の声が殿下の声が聴こえる。
愛おしい彼の声が。
暖かい。
彼に2年前抱きしめられた時と同じ鼓動、声、言葉。
身体は少し大きくなっているけど間違えるはずが無い。
この2年間ずっとずっと願っていた。
彼に炎の王子に逢いたい。
私(わたくし)は涙を流しながらぎこちなく背後を見た。

そこには柔らかに微笑む彼がいた。
2年間で彼はとても大きくなっていてもう大人の人と変わらないくらいだった。
私(わたくし)は必死に泣きやもうとし泣きやめなかった。

いつしか哀しみの涙から喜びの涙に変わっていた。

涙を流している顔を見られるのが恥ずかしくてつい彼の仕立ての良い軍服に顔を伏せながら縋り付く。
しっかりと筋肉が付いているのに優男のように見える身体。
私(わたくし)の背を撫でる手のひら。私(わたくし)を安心させようとしているのか声が聴こえる。

「大丈夫ですからね。大丈夫ですからね。安心してください。僕の姫も姫の国もまとめて僕が守りますから。」

とその言葉を理解すると不思議と安心感が身体を包みすっと意識が闇に落ちていった。
彼の腕の中で。
彼の匂いに包まれながら。
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