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2.ゲーム開始

63.レイスの観察日記2。

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「・・・アリス、足挫いたわよね?」





 フローディアはいきなり、怪我の是非を問う。俺とリュートは置いてけぼり。いや、いいんだけど。でも、今のもまるで、そうなる事を予想していたような。まぁ、崖から落ちたら普通、考えるか。





 アリスは誤魔化そうとする。しかし、フローディアの目は誤魔化せない。リュートに命令を出す。



「リュート。怪我の手当てをしてくれる?多分、捻挫だわ」

「はい。アリスさん、足出してください」



 リュートは軽く怪我の手当てを終わらせる。登っていくのは危険だと判断した俺達はひとまず先に、コテージに戻る。そっちの方が怪我の手当てをしっかり出来るから。帰りは俺が土人形を出しながら移動する。これくらい、朝飯前。





 皆、指令通りにそれぞれ決められたコースを進んでいるから、まだ教師陣が集まるコテージには他人の姿はない。教師以外はね。コテージのある敷地内に入ると、まずルディー先生の姿があった。ルディー先生の表情は一瞬だけこわばった気がした。それは、フローディアも気付いていたようである。それに、フローディアの方が険しい顔をしていた。





 でも、ルディー先生はアリスの怪我をしっかりと手当てする。アリスの顔はほんのりと赤い気がした。でも、本人は気付いていない様子。





 ・・・え?本当に?自覚なしだけど、すでにその傾向はアリスの方にはあるんだ。ルディー先生はまだ25歳と聞く。10歳差。前途多難そうだね。それに、ルディー先生はその気はなさそうに見える。本当に、ルディー先生もアリスに恋に堕ちるのだろうか?でも、それは、アリスの動向次第か。









 ・・・フローディア、他人の恋路には敏感なくせして、自分に向けられている好意は鈍感なんだから。それも、リュートが隠している?のもあるからなのだろうが。



 △△△△



 その日は後方にいた王子達は難なく問題をこなしてしまったようである。途中で、ルークが怪我をしたみたいだが、アリアが治してしまったようである。・・・光魔法ってつくづく便利なものだね。





 それを知って、アリスはどこかへこんでしまう。何でだろう?途中で、フローディアがアリスの姿を追うのが見えた。俺も2人にバレないように、近付いてみる。時間は夕食後。幸い2人は意識を別の方に逸らしている。





 アリスの後に、これもまたアリスにバレないように、フローディアは後をつける。そのフローディアの後をつける。二重尾行だね。おかげで、アリスの動向もバッチリ分かる。声は”大地”に聞いてみる。俺は大地を司る魔法らしい。土魔法でも高い魔力を秘めているらしい。





 それは、さておき前で起きている事を実況しよう。





 △△△△



「ルディー先生・・・?」



 アリスの前にはルディー先生がいる。ルディー先生は皮肉そうに笑う。こういった笑みは初めて見る。一瞬だけだったが。でも、教師の顔を見せる。



「・・・どうしたのですか?そんなへこんだ顔をして」



 アリスはルディー先生の姿を見て、内に秘めている事を打ち明ける。



「私は・・・アリアを見て、最初は守ってあげなきゃって思っていたんです。でも、最近はアリアを見て、羨ましいって、思ってしまって・・・。私って、つくづく普通の人間なんだなって思うようになったんです」



 ルディー先生の顔は笑顔のままである。優しい笑み・・・なのに、何故か恐怖を感じる。それは、何でだろう?



「・・・きっと、アリアさんに嫉妬していたんですね。でも、悲観する事はないですよ。僕だって、普通の人間なんです。人間、誰しも特別な人間なんて、そうはいないものです」



 その笑みはとても冷たいものに変わっていた。恐怖の正体はこれか。アリスも一瞬だけ怖気づいてしまう。





「・・・何で?ルディー先生はそんなにも冷たい笑みを私に向けるんですか?他の皆にはいつもみたいに優しい笑みを浮かべているのに」



 ルディー先生はより冷たい笑みを浮かべる。





「貴方には関係ない事。・・・そうやって、他人の心を掴んできたんでしょうが、僕には効きませんよ。僕は貴方みたいな人間が大嫌いなのですから。・・・今すぐに、目の前から消えてください。さもなければ、本当に消しますよ」



 ルディー先生の謎の殺気にアリスは泣きながら、その場を去った。そしてー・・・







「・・・貴方、よくもまぁ、私の大切な友人を泣かせたわね?」





 フローディアがルディー先生の前に出る。ルディー先生は一瞬怯むが、皆に向ける様な笑みを浮かべる。



「・・・どうしたのですか?そんなに怖い顔をして」



 フローディアは強い口調で言い放つ。



「そんなうすぺっらい笑みで、私を誤魔化せるとでもお思いなのかしら?薄気味悪い笑みは浮かべないでくださる?ルディー先生。・・・いえ、アディエルと言った方が素が出るのかしらね?」



 ルディー先生の表情が固まる。そして、フローディアに冷たい笑みを浮かべ、冷たく言い放つ。





「お前、どこでそれを?・・・まぁ、いい。だったら、お前を消してから、あいつを消そうか?その方があいつも傷付く」



 ルディー先生は自身の闇魔法をかけて、フローディアを眠りにつかせようとする。・・・闇魔法?そんなもの、スティル・セイレーンしか持っていないものだと思っていた。でも、違う。今、俺が見ているのは闇魔法なのだろう。





 フローディアがルディー先生がその場を立ち去ろうとする前に口を開く。





「・・・私をなめないで。私の生命力は強いんだから・・・。だから、アディエル。あの娘はね。貴方にとって、”大切な存在”になり得る人物である・・・事を思い知らせて・・・やるわ・・・」



 ルディー先生は鼻で笑う。



「はっ。戯言を。僕に大切な者が出来る訳ないだろう?それに、マリーベールの事件の生き残りだなんて。それに、あの・・男の娘なんて、絶対に」

「それは・・・嘘だわ・・・。貴方は、あの娘に・・・惚れているくせに・・・」

「・・・は?そんな訳ない!誰が、誰があいつなんかを!」



 ルディー先生は近くにいた、すでに眠らされていたスティル・セイレーンを近くに置く。彼が、フローディアに闇魔法をかけさせた事にしたいんだろう。俺はルディー先生が立ち去ってから、すぐにフローディアの傍に駆け寄る。そうすると、意識がまだあった。フローディアは力弱く言った。





「・・・レイス。今、見た事は内緒ね・・・」

「何で?ルディー先生が闇魔法をかけたの見ているんだよ」

「・・・知っているわよ・・・最初から、尾行に・・・気付いていたんだから・・・。特に、リュート様には内緒よ。・・・あの方にルディー先生を、アディエルを・・・近寄せたくないし・・・関わらせたくもない。・・・リュート様は・・・私が守らなきゃ・・・いけないのだから・・・」





 そう言って、フローディアは眠りについた。黒い靄が彼女を包み込んでいる。俺はどうしようもなく、叫んだ。
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