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1.幼少期

36.ある夏の日の余暇。

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 このままいけば、ジル様はアリアと結ばれる事になるのよね。まぁ、アリス次第だが。全力で応援させて頂く所存です!



 そして、今私達はフランソワーズ家の別邸にて余暇を過ごしています。夏真っ盛り!私達は避暑地である別邸に休んでいます!きっと、束の間の平穏なのだろうけど、でも今はいっぱい楽しみましょ!!楽しめる時に、楽しまなくては!そして、私はリュート様ともっと深い仲になるのよ!!



 きっと、リュート様だけではお休みにならないだろうから、レイスも一緒に連れています。とは言っても、昼間は別邸の庭園の花を手入れしているのだけど。熱中症には気を付けてほしいわ!この世界には熱中症という言葉は存在しない。だから、私が注意してあげなくては。



 でも、絶好の行楽日和だわ!・・・辺りもプライベートスペースで、フランソワーズ家に仕える人間しかいない。しかし、リュート様がレオン様な事は秘密。



 けれども、リュート様は仕事人間であった。私に何かないかすぐに確認するのだもの。でも、これってチャンスよね!・・・と思っていた数時間前の私は今はいない。







 ここまで、リュート様が仕事人間だなんて思ってもみなかったわよ!抱き着こうとしても、何気に躱されるし、愛の告白をしても、笑顔(仕事顔)でスルーされる。積極的に接点を持とうとするが、リュート様はそれを全部躱してしまうのだ。うぬん・・・。



 だけど、私は諦めません。この想いを伝えるのにはどうしたらいいのかしらね?









 ・・・朝に別邸にやってきたのに、早くも夜になってしまったわ。その間、収穫なし!私とした事が、リュート様を置いてけぼりにして、途中レイスとお茶していたわ。・・・だって、こちらも気掛かりだったものね。



 レイスは何気なく呟く。



「フローディアは本当にリュートの事が好きだね」

「えぇ!そりゃあ、勿論!!」



 私はレイスの肩を揺さぶる。レイスがちょっと痛そうな顔をする。ちょっと、力を入れすぎたかしら?



「・・・でも、リュートは身分の差を深く気にしている」

「・・・例え、身分に差があっても・・・私は気にしないのに」

「しかし、リュートは気にしてる。それが、一番の障害だね」



 ・・・身分か。リュート様は本来ならば王族のお方。こちらが気にしなくてはいけないのに、今は逆の立場。今は・・・色んな問題が山積みで、それを全部かたをつけなきゃ、私達は幸せにはなれない。今は・・・リュート様と結ばれてはいけないって、分かってる。分かっているけれど、この想いは日を増す毎に大きくなっていくの。





 結局、それが逃げなのは解っているのよ。でも、言葉にしなきゃ、私の想いは・・・







 私はレイスとは一旦離れて、お風呂に入り、気分がさっぱりしたところで、自室の窓辺に近寄る。外はすっかり月が空高く世界を照らしている。私はふと、とある曲を口ずさむ。



 ♪~~ ♪~~



 これは、前世の私が、好きだった曲。メロディーが好きで、でもこの曲は”嫌われ者の悪役の歌”。この恋は叶わないのだと、嘆く歌。今の私にはピッタリな歌ね。悪役だもの。半端な優しさは毒にも薬にもならない。だから、リュート様は私を心の奥には入れてはくれない。



 幸せを願うなら、傷つける勇気がいる。





 きっと、これから私はリュート様を傷つけるのだわ。・・・真実を明らかにするには、私がしでかした事を告げなければならないだろう。自分が幸せになりたいと思うなら、きっとそれがリュート様を傷つける事になるのだろう。





 歌い終わると、気が付けば傍にリュート様がいらっしゃった。



「・・・フローディア様は決して悪役ではございませんよ」



 そう、優しい笑みで言う。



「だから、そんな悲しい歌を歌わないでください。こちらまで、悲しい気持ちになってしまいます」

「でも、私は悪役令嬢なのだわ。欲しいものは何としてでも得る為に、どんな情報でも利用するの。それが、私なのだわ」



 ふぅ・・・とため息をつくリュート様。これで、話は終わりと言わんばかりに話を強制的に変えられてしまった。リュート様が外を指さす。





「・・・ほら!見てくださいよ!!フローディア様!月が綺麗ですよ!!」











 ・・・!その言葉は、私にとって甘美なものだわ。でも、この言葉の意味を知らないリュート様にはこの言葉で返す。







「・・・私、死んでもいいわ。だって、今日はとても幸せだから!」
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