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22.小生意気なあいつと可愛い魔術師さん。

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「あぁ!?何で、ディネットがこんな所にいんだよ!?この高慢ちきなお嬢様が!!」



・・・高慢ちきなところは、お前の方が勝っているがな。ディネットに転生した人は、このゲームを愛してくれているというのは分かるし、大人しい性格である。“繊月”さんも姉の影響でこのゲームを始めて、ファンになったらしいが、知識は姉の方が勝っているらしい。


「今日が、初めての仕事の奴に言われたくないですね。“有明月”さんの方が貴方よりも早く仕事していますからね。おそらく、魔法の力も彼女の方が強いのでは?慣れという点では。」


それに激昂するゼノン。



「あぁ!?俺が女のこいつに負けるとでも言いてーのか!?あぁ!?」


こいつ、本当に可愛くねーな。いや、男に可愛いとかないけど、もっと可愛い後輩が欲しかった。俺は、“有明月”さんを信頼しているんだ。正直、そう言われてムカつくわ。



現に、“有明月”さんや“繊月”さんは戦々恐々としている。震えている姿も可愛いと思ってしまうが。可愛い女の子に威嚇してんじゃねーよ。



“有明月”さんは、というか、ディネットはこのゲームでは、高慢ちきでこのライバルキャラだけが悲惨な目に合う。故に、我が儘な態度が取れない。しかし、ゼノンだけは貴族として、出会っていて、お互いの印象が最悪なのだ。メイディスに関してはきっと改善されている。今さらどうこうしても第一印象は変えられない。



△△△△



「さて、俺達も仕事に行くぞ!」


アキトが仕切り直す。このチームの最年長だもんな。11歳だが。自動的にリーダーで、リーダーの指示は絶対である。しかし、ゼノンがそれに応える訳もなく、装備を脱ぎ捨てて何処かへ行こうとしてしまう。



「ふんっ。こんな動き辛い服で動けるかよ!?ふざけるな、脱ぐぞ。」

「俺達だって、同じ服着てんだぞ!!お前の鍛え方が柔なだけだろーが!!」


俺達、魔法騎士隊に支給されている装備は部隊ごとには服の色が違うものの全て同じである。勿論、機能性を重視している為、動きやすさは二の次である。ちなみに、第一部隊の制服の色は赤で、第三部隊は青である。第一部隊と第三部隊は割と仲が悪い。だからこそ、今の状況は異常である事を痛感する。



ゼノンは支給された制服を脱ぎ捨て、動きやすさ重視の服に着替えた。そんなんじゃ、すぐやられそうだな。ゼノンは俺達に命令する。


「お前達は、黙って俺様の言う事、聞いていればいーんだよ!」

「リーダーの言う事を聞け!!」


アキトは大きな声で叫び、ゼノンを叱責する。その目つきは鋭く、流石の俺でもここまで怒っているアキトを見た事がない。決して、冴えないモブじゃないのよ。このチーム、チームワークっていうものがないんだけどね。いや、ただ一人がぶっ壊しているんだが。



しかし、埒があかない。しびれを切らしたゼノンが、勝手に何処かへ行ってしまった。仕方なく、俺様はついていく事になった。ゼノンはいい気になる。


△△△△


ゼノンは当てもなく、歩いていく。絶対に、魔法騎士隊について、理解が及んでいないし、途中出現した魔物には魔法を使いまくるし、途中で魔力切れを起こすわ。本当に迷惑しか、かけねーのな。それで、尻拭いさせられているの俺なんだけど。それに、女の子達はビクビクしながら、ゼノンの指示を聞いている。もっと、イキイキさせれば、自然と力を発揮する事が出来るのに。本当に、リーダーの素質ねーな。


“有明月”さんは唐突に俺に質問をしてきた。


「“朧月”さんは今日は眼鏡をかけていないんですね?」


それに、答えたのはアキト。おい、こら。


「あー。こいつ、今日は魔術師“朧月”として、来てねーんだわ。魔法騎士隊第三部隊所属のヒロトなの。だから、眼鏡も気取ったような帽子もマントも身に着けてねーの。それで、差別化しているんだ。」

「へー。そうなのですか?」

「ちなみに、はっきり言っちゃうと、俺様魔法騎士隊第三部隊が認めている魔術師は“望月”さんと“朧月”。・・・あと、“小望月”さんかなぁ。“小望月”さん、薬術に長けているからなぁ。」


・・・決して、魔術師としては認めている訳ではないんだ?薬師代わりかよ。“小望月”さん、魔術師としてNo.2の地位だぞ。一番は“望月”さんだけどね。


「えっと、リーダーさんでしたね?随分と、はっきり言いますね。」

「“望月”さんは本当に実力あるし、“朧月”は文句言うところねーだろ?まぁ、俺達だけじゃないけど、魔法騎士隊全体が魔術師を敬遠しているからなぁ。一番極端なのは、うちの隊ってだけで。第一部隊は一番寛容的だけど。・・・あと、俺はアキト。」



“有明月”さんとアキトは打ち解けている。“繊月”さんも話に入ってこようとして、ゼノンが割り込んできた。



「・・・よく分かんねーが、こいつ強いのか?」


ゼノンは俺を指さして、ふんぞり返った態度を示す。本当にそれだけでも、イラッとくる。それはアキトも同じようで、顔には出さないが、思わず口を閉ざす。そして。


「確かに、ヒロトはうちの隊の一番のルーキー。だから、この中で俺がリーダーやれている訳だが。“ワーウルフ”の名は伊達じゃない。“ワーウルフ”は魔法騎士隊の二大暴れ狼の一人。お前なんか比じゃねーよ。」


ゼノンは意味ありげな目で俺を見る。そして、俺を指さす。


「お前、俺と決闘しろ!!」
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