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グレイシアの自我が確立してから初めての週末を迎える。週末の予定は、俺はどこぞの村の教会に歌を歌いに行く。出来るだけ王都から離れた小さな村に行くようにしている。また、その時、高貴な感じに思われるように、天使をイメージした白を基調とする服装と頭にヴェールをかける事を忘れない。勿論、キャラ変はするかなぁ?


「今日はメチュアートの村に行こうかなぁ?」


『え!やっぱり、教会に行くの!?その姿で?』


その姿というのは、魔法やスキルを使わないで素の姿で行くという事だろう。これには目的がある。いつか、グレイシアの存在が認められるように、地位を確立しておきたい。流石に、国王も国民の声を無視出来ないだろう。


という訳で、今日も教会に行ってみよー!


☆☆☆☆


メチュアートの村にやってきました。真っ先に教会に向かいます。小さいながらも、どこか清廉さを感じる。教会の中に入ると、教会内にある女神像の前に移動する。そして、女神像に向かって、祈りを捧げる。


神様が神様に祈りを捧げるなんてバカらしいけれど、見目が良いものだから仕方ない。しばらくすると、村人達の声が聞こえる。



『あぁ、何とも信仰深い子供もいるものだな。』
『あぁ、なんて美しい祈りなんだ。』
『まるで、聖者のようだ。』


実際には言葉にしていないけれど、そんな声が聞こえる気がする。神様だから、信仰には敏い。でも、怪我人はいない様子。村人達が騒いでいる様子もない。


今日は平穏な日になりそうだなぁ。それはそれでいいんだけれど。


☆☆☆☆


昼前まで、祈りを捧げていたら、村人達にご飯に誘われた。断る理由もないので、誘いに乗ると、こんな話を聞いた。


「最近、雨が降らないんだ。だから、農作物が育たないんだ。どうか、貴方のような信仰深い者の祈りで神に私達の願いが届けばいいのだが。」


ふーん?それくらいならお安い御用だなぁ。なんせ、こちとら神様ですから。ちょっと、畑に地割れが起きていると思っていたんだよね。ご馳走にもなっているし、その願い、アポロンが聞き届けよう。


「そのような事態が生じているにもかかわらず、私に食事を与えて頂いたのです。私に出来る事は、私の祈りが神に届くように、祈りを捧げるまでです。」


☆☆☆☆


昼食を食べ終わると、教会に戻る。空は雲一つない綺麗な青空であった。


「神に祈りを捧げましょう。このメチュアートの民の願いが神の御心に届くように、神に捧げる舞を届けましょう。」


俺は雨降の舞を披露する。これは効果抜群なんだ。俺は太陽神だし、太陽を一時雲で隠す事は可能である。30分もすれば雨が降り出すだろう。どうか、俺の願い届け。


☆☆☆☆


舞を披露し続けていると、外が騒がしくなってきた。


「な、なんて事だ・・・!雨が、久しぶりの天からの恵みが降ってきたぞ!」
「本当だわ。神は我らを見捨てなかったのね!」
「奇跡だ!」


もっと言って。信仰が深くなればなるほど、力も強くなるから。神様、もっと頑張っちゃうぞ!


☆☆☆☆


『あんなに晴れていたのに、雨が降るなんてまるで奇跡だね!すごい偶然もあるもんだね。』


グレイシアがそう言う。でも、これは偶然なんかじゃない。必然な事なのだ。


村長らしき人物に声をかけられる。


「貴方はまるで、神の愛し子のようなお方だ。なんと言ってお礼を申し上げたらいいものか・・・。」
「そんな・・・。私は神に祈りを捧げたまでです。そんなに、たいそうな人物ではありません。」
「またまた!ご謙遜為さらなくともいいのですぞ!」



いやぁ。それ程でも・・・あるかなぁ?うん。そうだなぁ。えっへん。



舞を踊り終えた俺は一息つく。夕方までは雨が降り続くはず。とは言ってもゲリラ豪雨ではなく、しっかりと本降りくらいかなぁ?大して、地殻変動に影響を及ぼさない程度の雨である。


さて、もう一度神に祈りを捧げましょうか。女神像に向かって祈りを捧げる。これで、また一歩前進かなぁ?神童化されちゃうかなぁ?


☆☆☆☆


夕方まで雨が降り続いた。それだけでも、村人達は歓喜した。そんな時間が流れていた。それを壊す事件が起きた。


平穏な村らしいメチュアートの村の近くで大怪我を負った冒険者がいたそうだ。このメチュアートの村には滅多に来ないらしい冒険者。そんな人が大怪我を負った。


俺は気を抜いていたのもあって、反応が一歩遅れた。その冒険者が教会に運ばれた時、グレイシアが代わりに反応を示した。


「その冒険者を、横に寝かせてください!僕が治癒魔法をかけますから!!」


そう言うグレイシアは真剣そのものだった。
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