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2.生ける神と伝説に残るグレイシア!

9.アディエル王子と!

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グレイシアの自我が確立してから7年の月日が流れ、グレイシアは12歳になった。シュテルツ王国の田舎の街や村では『神の愛し子・グレイシア』の名が定着しつつある。大都市近郊では、『疾風迅雷のシア』の名で知られている。どちらもこの国では影響力が強い人物である。


『神の愛し子・グレイシア』は貴重な治癒魔法が使える存在であると同時に神聖な存在として称えられている。


『疾風迅雷のシア』は10年以上の月日をかけて、SSSランクの冒険者となった。その名は伝説に残り、武勇伝もいくつもある。


どちらも人々の記憶の中で伝説に残っている。もはや普通の12歳の少年とは言えないね。そうさせたのは紛れもない自分なのだが、正直ここまでになるとは思わなかった。まぁ、神が人間の中に入り込んでいるのだ。それくらいになっても疑問を感じる事はない。しかし、グレイシアはそうではないようだ。


動けば動くほど、それが大々的に取り沙汰されて、戸惑っている。まぁ、グレイシア自身は人間だし、人気になっても調子に乗るような少年じゃない。寧ろ、遠慮してしまう。グレイシアは心優しい人間だからこそ、俺もグレイシアの事が大好きなのである。


☆☆☆☆


今日もまた疾風迅雷のシアとして、王都のギルドでクエストを受けているのだが、何でこんな事になっているのだろう?


こんな事、とは王都でうっかりアディエル王子と出会った状況を指す。いやぁ、文章にしてもおかしい状況だなぁ。何で、この国の第一王子が王都に赴いているの!?王都の様子を知るのも良い事だけど、どう考えても王城を抜け出したよね!?今日、王都の様子を窺う予定なかったよね!?


それに、出会い頭の言葉が


『あっ、疾風迅雷のシア!!』


じゃあ、俺の事を知っているのがバレバレである。俺としては、公式の場では会った事ないのに。でも、フード付きの服を着ているから、こちらとしては一瞬、誰か分からなかったけど。


7年以上経っても、双子の縁はきちんと働いているようだ。勘で分かったよ。


そして、どう反応すればいいのか、分からない←イマココ。



「・・・ドーモ。アディエル王子・・・・・・・。その姿は懐かしいね。」


アディエル王子は一瞬驚いたが、その立場を肯定した。


「・・・やっぱりシアにはバレてるか。」
「何か、御用ですか?」


それでもフードは被ったままだが。しかし、何の用だろうか?


「・・・シアは、『神の愛し子・グレイシア』の事、知っているか?」
「えっ、『神の愛し子・グレイシア』の事ですか。それはもう知っていますが、どうしてそれを知って、どうするのですか?」
「俺は、『神の愛し子・グレイシア』に会いたいのだ。」



なんだか嫌な予感しかしない。アディエル王子が、グレイシアに会いたい理由は何だろう?正直聞きたくない。というか、今、目の前にいるのだが。


「それは何故?」


アディエル王子は一瞬、口を閉ざすが、それではこちらが答えないと分かってか、素直に答える。


「・・・国王陛下である父上の調子が最近悪くて、もしかしたら病かもしれないのだ。」


・・・!アディエル王子はグレイシアが傷だけでなく病・・・・・・・も治せる事を知っているのか?それは、あまり知られていないはずなのに。


「それで、どう、なさるのですか?」
「『神の愛し子・グレイシア』を見つける。それで、もし病気なら治してもらう。」


力強い答えだった。グレイシア自身も疑問を感じたようだった。


『僕の治癒魔法って病にも効くのかなぁ?』
『・・・俺の見立てじゃ、病にも効く。これは奇跡の力だ。』
『えっ?それ、本当なの?』


本当の事だ。だからこそ、グレイシアの治癒魔法は奇跡の力なのだ。神でさえも羨む能力。


そう思えば、グレイシアの父親って、グレイシアが12歳の頃、亡くなると神の力で知った。それで、第一王子であるアディエル王子が、王位に就くのだが……。俺は未来を変えるのか?グレイシアを捨てた親だぞ?助けていいのか?


俺はそう簡単に答えを出せなかった。しかし、グレイシアは違った。


『・・・もし、僕の力で誰かを救えるのなら、助けたい。』
『えっ?何で?だって、グレイシアを捨てた親だぞ?何で、すぐに答えを出せるんだ?』
『・・・それでも、だ。僕は、父上を救いたいんだ。』


力強い言葉に俺は、身体の主導権を譲った。
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