7 / 7
1.ゲーム開始!・・・するまで。
7.ゲーム内容と僕のチート能力について。
しおりを挟む「お姉さんたちの前で悪いけど、正直言ってアメリアが嫌い。お金が戻ってきたとは言っても、婚約者を人質に取られ、1年間嫌がらせを受けてきた」
「改めて、妹に代わって謝罪します」
「最初から「太陽の指輪」のリスクを話してくれたら、流れが違っていたかも知れないのに。なんで嫌われることを選んだんだ・・」
「それは400年前の魔王討伐の真実を知る、妹の思い込みが、そうさせたのです」
「400年前の魔王戦といえば、勇者アンだな」
「システィーナみたいな普通の街娘が勇者の祝福を受けて始まる、成長物語だよね」
「仲間も私達みたいに同じ年の女ばかりで、若い冒険者との恋物語あり、友情物語ありの人気ナンバーワン勇者だ」
「しかし、魔王討伐後の物語はご存知でしょうか?」
「・・そういえば、ないね。他の勇者みたいに国を興したとか、故郷で再び活躍したとか」
「ウエス家だけに残された真実があり、アメリアは幼少時代から何度も読んで、恐れておりました」
◇◆勇者アンと聖女アイーシャ◆◇
400年前、勇者にアンという東方に住む17歳の街娘が選ばれた。拳聖ティナ、賢者ルカ、聖女アイーシャも17歳。
出身地、身分はバラバラでも、たちまち四人は仲良くなった。
しかしこのオール女子パーティーには、隠された懸念材料があった。
聖女のアイーシャが当時、聖痕を持つウエス家の女性四人の中で一番魔力量が少なかった。
恐らくアメリアよりも。
神器に「光のオーロラを放つ虹の指輪」、「魔王の闇を阻害する聖結界の指輪」を授かっていれば、また話は違っていたであろう。
しかし、よりによってアイーシャに不向きな「勇者が必殺技を撃つ魔力を聖女から搾り取る、太陽の指輪」を女神から渡された。
聖女アイーシャは、仲間に真実と嘘を織り混ぜて話した。
◇太陽の指輪は勇者アンに必殺技を使わせるための道具である。
◇太陽の指輪を使うには、自分の魔力量がほんの少し足りない。
◇使えば魔力回路が破損して、二度と魔法が使えなくなる可能性がある。
嘘である。
魔力量はまったく足りない。
使えば、高い確率で死が待っていた。
光明はあった。物語にあるように、勇者アンだけでなく拳聖、賢者も神器に高い適正があった。
勇者アンは、すでに親友となったアイーシャに神器を使わせないため、努力した。
わずか半年で神器カッティーナを覚醒させた。
さらに半年、アイーシャも魔力量を増やす訓練を重ね、勇者らもグングン力を付けていった。
しかし、ダメだった。
決戦の日、魔王に勇者アン、拳聖ティナ、賢者ルカは神器を解放し、聖女アイーシャも聖痕で闇の結界を弱めた。
アイーシャは、神器「太陽の指輪」を使わずに生き残れるかと期待した。
だが決め手がなく、戦いが長引いた。
動きが悪くなった拳聖が魔王の爪で左腕を切り裂かれた。
助けに入った賢者は魔王の火炎で左足にやけどを負った。
3人の親友を守るため、聖女アイーシャ覚悟を決めた。
そして、限りなく軽い口調でアンに向かってつぶやいた。
「アン、あなた達3人にデンスの丘を見せたかったわ」
「太陽の指輪」を発動させた。
聖女アイーシャから飛び出した光の龍が勇者アンの中に入った。
アンの体が輝き「ライトニングダスト」を魔王に撃ち込むと、たまちまち魔王は崩れた。
アンは急いでアイーシャの元に駆けようとして、背筋が冷たくなった。
遠目に見えるアイーシャが別人に見えるのだ。
まるでデンスで会ったアイーシャの母親、いやそれ以上に老けたように感じる。
ティナとルカもやってきたが、言葉をなくした。
アイーシャからアンに送られた光の残滓がまだアンに向かって飛んでいた。
アンは慌ててアイーシャの「太陽の指輪」を外した。
だか指輪は中空に浮いたまま、アイーシャから最後の命の光を搾り取り、アンに貢いだ。
アンは吐いた。
◆◆
魔王討伐後、出迎えた騎士隊の前には事切れた老婆を背負った勇者が現れた。
老婆の背中や腕さすりながら拳聖、賢者もゆっくりと近付いてきた。
異様な凱旋だった。
聖女と恋仲だった若い騎士が、涙をこぼしながら老婆を受け取った。
老婆の首には彼が贈ったネックレスがかけられていた。
「改めて、妹に代わって謝罪します」
「最初から「太陽の指輪」のリスクを話してくれたら、流れが違っていたかも知れないのに。なんで嫌われることを選んだんだ・・」
「それは400年前の魔王討伐の真実を知る、妹の思い込みが、そうさせたのです」
「400年前の魔王戦といえば、勇者アンだな」
「システィーナみたいな普通の街娘が勇者の祝福を受けて始まる、成長物語だよね」
「仲間も私達みたいに同じ年の女ばかりで、若い冒険者との恋物語あり、友情物語ありの人気ナンバーワン勇者だ」
「しかし、魔王討伐後の物語はご存知でしょうか?」
「・・そういえば、ないね。他の勇者みたいに国を興したとか、故郷で再び活躍したとか」
「ウエス家だけに残された真実があり、アメリアは幼少時代から何度も読んで、恐れておりました」
◇◆勇者アンと聖女アイーシャ◆◇
400年前、勇者にアンという東方に住む17歳の街娘が選ばれた。拳聖ティナ、賢者ルカ、聖女アイーシャも17歳。
出身地、身分はバラバラでも、たちまち四人は仲良くなった。
しかしこのオール女子パーティーには、隠された懸念材料があった。
聖女のアイーシャが当時、聖痕を持つウエス家の女性四人の中で一番魔力量が少なかった。
恐らくアメリアよりも。
神器に「光のオーロラを放つ虹の指輪」、「魔王の闇を阻害する聖結界の指輪」を授かっていれば、また話は違っていたであろう。
しかし、よりによってアイーシャに不向きな「勇者が必殺技を撃つ魔力を聖女から搾り取る、太陽の指輪」を女神から渡された。
聖女アイーシャは、仲間に真実と嘘を織り混ぜて話した。
◇太陽の指輪は勇者アンに必殺技を使わせるための道具である。
◇太陽の指輪を使うには、自分の魔力量がほんの少し足りない。
◇使えば魔力回路が破損して、二度と魔法が使えなくなる可能性がある。
嘘である。
魔力量はまったく足りない。
使えば、高い確率で死が待っていた。
光明はあった。物語にあるように、勇者アンだけでなく拳聖、賢者も神器に高い適正があった。
勇者アンは、すでに親友となったアイーシャに神器を使わせないため、努力した。
わずか半年で神器カッティーナを覚醒させた。
さらに半年、アイーシャも魔力量を増やす訓練を重ね、勇者らもグングン力を付けていった。
しかし、ダメだった。
決戦の日、魔王に勇者アン、拳聖ティナ、賢者ルカは神器を解放し、聖女アイーシャも聖痕で闇の結界を弱めた。
アイーシャは、神器「太陽の指輪」を使わずに生き残れるかと期待した。
だが決め手がなく、戦いが長引いた。
動きが悪くなった拳聖が魔王の爪で左腕を切り裂かれた。
助けに入った賢者は魔王の火炎で左足にやけどを負った。
3人の親友を守るため、聖女アイーシャ覚悟を決めた。
そして、限りなく軽い口調でアンに向かってつぶやいた。
「アン、あなた達3人にデンスの丘を見せたかったわ」
「太陽の指輪」を発動させた。
聖女アイーシャから飛び出した光の龍が勇者アンの中に入った。
アンの体が輝き「ライトニングダスト」を魔王に撃ち込むと、たまちまち魔王は崩れた。
アンは急いでアイーシャの元に駆けようとして、背筋が冷たくなった。
遠目に見えるアイーシャが別人に見えるのだ。
まるでデンスで会ったアイーシャの母親、いやそれ以上に老けたように感じる。
ティナとルカもやってきたが、言葉をなくした。
アイーシャからアンに送られた光の残滓がまだアンに向かって飛んでいた。
アンは慌ててアイーシャの「太陽の指輪」を外した。
だか指輪は中空に浮いたまま、アイーシャから最後の命の光を搾り取り、アンに貢いだ。
アンは吐いた。
◆◆
魔王討伐後、出迎えた騎士隊の前には事切れた老婆を背負った勇者が現れた。
老婆の背中や腕さすりながら拳聖、賢者もゆっくりと近付いてきた。
異様な凱旋だった。
聖女と恋仲だった若い騎士が、涙をこぼしながら老婆を受け取った。
老婆の首には彼が贈ったネックレスがかけられていた。
5
お気に入りに追加
25
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。


神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!


異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる