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第17章:樹龍の愛し子編
第206話:バルニ圏谷での話し合い
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時は遡り、セネカは都市エインに到着した。ギルドの協力を得たセネカ達は『羅針盤』がいるバルニ圏谷に向かうことになった。
国王陛下とゼノンの署名が入った手紙も持っているため、セネカ達はニーナ達が受けた依頼の種類を調べることも可能だった。
ピュロンの助けもあり、セネカ達はギィーチョから話を聞いた日のうちに彼らに相談することができそうだった。
「あ、あれが拠点じゃないかな?」
バルニの山に入り、少し進むと大きめの天幕が見えてきた。この場所はあまり冒険者がいないので、おそらく間違いないだろう。
突然の攻撃を避けるためにセネカ達はやや離れた場所で円盤を降り、天幕を訪れることにした。今はもう少しで夕方という時間帯なので、もしかしたらもう拠点にいるかもしれない。
上から見た限り他に人影はなかったし、魔物もいなさそうだ。不用意に近づくと無駄な警戒心を抱かせることになる。
「セネカ、どうする? 声をかけるか?」
ガイアが言った。ピュロンは任せるつもりなのか黙っている。
「私に任せて。とりあえずもう少し近づこう」
セネカは一番前に出て静かに歩いた。そして声が届きやすい距離になってニーナに秘密の合図をすることにした。
「めけめけー」
もしニーナがいればセネカが近くにいることが分かるだろう。他の人に言い回ってなければだが……。
「めけめけー」
「めけめけー」
セネカに続いて、ピュロンも鳴き出した。ピュロンは非常に楽しそうな顔をしているが、それを見るガイアは驚愕の表情だ。
「――めけめけー」
ピュロンと二人で何度か鳴いていると遠くから声が聞こえてきた。ニーナの声だ。
「めけめけー。ニーナ。めけめけー」
「セネカ!」
天幕からニーナが出てきた。後ろにはファビウスやストローも続いてくる。
「ニーナ! 良かった、居たんだね」
「セネカ、ガイアも……。どうしてここに?」
「『羅針盤』のみんなにお願いがあってここに来たの」
「お願い? それにそちらの人は?」
ニーナは首を傾げながらピュロンを見た。ファビウスとストローも注目している。
「やぁやぁ。ボクは白金級冒険者のピュロンだよ。ピューロって偽名を使うことが多いんだけど、今は面倒だからピュロンって呼ばれることにしてるんだ。よろしくねー」
「『放浪』のピュロン様……? 白金級冒険者が何故セネカ達と一緒にいるんだ?」
ピュロンが挨拶と共に出した冒険者カードを見ながらストローが言った。
「ストローくんもファビウスくんも久しぶり。プルケルとメネニアもいるのかな? 『月下の誓い』から『羅針盤』にとても大切なお願いがあるの……」
「二人とも天幕にいるけど……。とりあえず呼んでくるね」
セネカの真剣な空気を感じ取ってファビウスがプルケル達を呼びに行った。
突然乗り込んで来て申し訳ないけれど、今は時間がない。それに、特にファビウスにとっては何よりも大事な話になるだろう。
「――セネカとガイアが来ている? それに白金級冒険者も? ニーナ、一体何の話をしているんだ?」
「嘘じゃないよ。ほら、見てみて」
天幕の方から微かに声が聞こえてきた。少し見ていると、プルケルが姿を現し、ついでメネニアも見えてきた。
いま気がついたが、全員が鎧を着けているので探索から帰ってきたばかりか、これから夜にかけて行動をするつもりだったのかもしれない。行き違いにならなくて良かった。
セネカ達の姿を見た二人は笑顔になったけれど、こちらの顔が笑っていないことに気がついて、すぐに真顔になった。
セネカはこれから交渉をしなければならない。相手が彼らだというのは幸運だが、求めるものは大きい。
ゆっくりと息を吐きながらプルケルがやってくるのを待つ。同じように待つファビウスやストローは口を開く気配もなく。様子を伺っている。
ピュロンが前に出てきた。
「冒険者パーティ『羅針盤』のリーダーのプルケル・クルリスだね? ボクは白金級冒険者のピュロンだ。突然で悪いけれど、大事な話があるから全員を囲わせてもらうね?」
そう言った瞬間、全員を覆う半球状の膜が出現した。銀色をしているが、中はそれなりに明るい。
「これは防音だし、ここら辺の魔物に壊される心配もないから思う存分話して良いよ」
プルケル達は自分たちを覆う膜を確認している。非常に薄そうに見えるのに、全力で攻撃しないと傷さえつけられない膜だということをセネカは知っている。
「大事な点をまずボクから話させてもらうけど、今回の事態は国家存亡級だと認定されているんだ。『月下の誓い』は国王陛下から事態への対処を直々に要請されていて、セネカはその正式な使者になる。ガイアは補佐で、ボクはただの見届け人だと思ってくれれば良いけれど、ボクは話が一通り落ち着くまでは外に出ていようと思っているんだ」
ピュロンはいつになく真剣な表情でそう言った。
「何か聞きたいことはあるかな? ボクは中での会話を聞く気はないけれど、膜を叩いてくれれば入ってくるから必要に応じて合図してくれたら良いよ」
プルケルは困惑した表情を浮かべている。いきなりセネカ達が乗り込んで来て、白金級冒険者に「これは国家存亡に関わる案件だよ」と言われたら困るに違いない。
しかし、プルケルはすぐに表情を引き締め、ピュロンに貴族の礼を執った後で言った。
「ピュロン様の話は理解いたしました。完全に状況を飲み込めた訳ではありませんが、一度セネカの話を聞きながら判断していきたいと思います」
ピュロンはそれを聞いて頷き、静かに出て行った。出て行く時、膜がうにょんと動いて穴が空いたのをニーナは興味深そうに見ていた。
「それじゃあ、私から話すね。まずは概要から言うけれど、意味が分からないと思うから後から情報を付け足して行くことになると思う」
「頼む」
セネカの周りを囲むようにプルケル達が立った。一歩引いているが横にはガイアがいる。
「この大陸の植物を司ると言われている龍、樹龍が三百年ぶりに目覚める兆しを見せているみたいなの。ロマヌス王国はこの龍に土地を借りているという認識で、目覚めた龍を鎮める儀式をしようとしているの」
プルケルは頷いた。ここまでは問題ないだろう。
「儀式を行うには巫女が必要なんだけれど、その巫女に選ばれたのがプラウティアなの」
「プラウティアさんが? 何故?」
プラウティアの名前を聞いてファビウスが声を上げた。足を踏み出し、セネカに詰め寄る。
「プラウティアが貴族の子供だっているのはみんな知っていると思うけれど、そのヘルバ氏族っていうのが昔から樹龍を祀っていて、この儀式に関しては国王よりも力を持っているんだって。巫女の選定にはいくつか条件があったんだけど、一番適していたのがプラウティアだったの」
「つまりプラウティアさん次第で、国の状況が大きく変わる可能性があるということだね?」
プルケルは冷静に話を聞こうとしている。だが、よく見ると額には汗が滲んで来ていた。
「その通り。ちなみに、この選定があったのって今朝のことなの。それから国王筆頭補佐官や元枢機卿の神官に話を聞いてからここにいる」
「……おつかれさま」
ポツリと呟いたのはニーナだ。
「そんな役目にプラウティアが選ばれただけでも大きな事件なんだけれど、話はそれだけじゃなかったんだ。樹龍はシルバ大森林の奥地にいるから、巫女を安全に送るための護衛役が必要みたいなんだよね。その護衛役は国と教会からそれぞれ推薦されるんだけれど、私たちは国に選ばれたの」
「……なるほど。少しずつ話が見えてきたわ」
メネニアはそう言ってから唇に手を当てた。深く考えているようだが、まだ話は大事なところに達していない。
「『月下の誓い』に護衛役の中心になることが要請されて、マイオルが団長に任命されたの。護衛役に必要なのは十一人だからあと六人が必要という状態だね」
「それで僕たちのところに来たと言う訳か」
プルケルの言葉に頷く。
「さっき国と教会から護衛役の推薦があるって言ったけれど、教会からは第三騎士団が選ばれることになっているみたい。十五日以内にシルバ大森林で戦いが行われて、それに勝った方が正式な護衛役となって、プラウティアを龍の元に送り、儀式を見守ることになる」
「教会の第三騎士団という話だったが、それは例えば騎士団長のフォルティウス様なども出てくると考えて良いのか?」
「うん。相手も全力みたいだよ」
指摘したのはストローだ。セネカは教会の騎士団のことすらあまり知らなかったけれど、ストローは騎士団長の名前まで知っているようだ。となれば彼がレベルが5であることも知っているかもしれないし、もしかしたらスキルすら分かっているのかもしれない。
「王都のギルドで話をしていたんだけれど、プラウティアが巫女に選ばれてすぐにそのフォルティウス団長が応接室に入ってきたの。そして強引にプラウティアを連れていったんだ。アッタロスさんとゼノン様が場をおさめてくれたけれど、高圧的な態度で剣を抜いたんだよね」
「教会騎士がギルドの中で剣を抜いたのか……」
プルケルはそんな事があり得るのかと考えているのだろう。セネカも実際に見ていなかったら同じように思うはずだ。
先ほどから近めの距離にいたファビウスはさらに前のめりになって言った。
「プラウティアさんは今どうなっているんだ?」
「今は教会にいる。ゼノン様が付いているみたいだけれど、私たちに会うことなく第三騎士団にヴェルディアまで護送されるだろうって聞いているよ。身の安全に関しては絶対大丈夫だって言われたけれど、教会騎士を信用はしていない」
「……そう。それは確かに気になるね。プラウティアさんを取り返したいと思うのは分かるよ」
ファビウスはそう言った。ニーナもメネニアも労わるような目を向けているが、プルケルだけは険しい表情を崩さない。
このまま頼めばこの話を受けてくれそうだ。だけどそれでは正確に情報を伝えたことにならない。
本当の敵は教会騎士団なんかじゃなくて、もっともっと強大な相手なのだから。
国王陛下とゼノンの署名が入った手紙も持っているため、セネカ達はニーナ達が受けた依頼の種類を調べることも可能だった。
ピュロンの助けもあり、セネカ達はギィーチョから話を聞いた日のうちに彼らに相談することができそうだった。
「あ、あれが拠点じゃないかな?」
バルニの山に入り、少し進むと大きめの天幕が見えてきた。この場所はあまり冒険者がいないので、おそらく間違いないだろう。
突然の攻撃を避けるためにセネカ達はやや離れた場所で円盤を降り、天幕を訪れることにした。今はもう少しで夕方という時間帯なので、もしかしたらもう拠点にいるかもしれない。
上から見た限り他に人影はなかったし、魔物もいなさそうだ。不用意に近づくと無駄な警戒心を抱かせることになる。
「セネカ、どうする? 声をかけるか?」
ガイアが言った。ピュロンは任せるつもりなのか黙っている。
「私に任せて。とりあえずもう少し近づこう」
セネカは一番前に出て静かに歩いた。そして声が届きやすい距離になってニーナに秘密の合図をすることにした。
「めけめけー」
もしニーナがいればセネカが近くにいることが分かるだろう。他の人に言い回ってなければだが……。
「めけめけー」
「めけめけー」
セネカに続いて、ピュロンも鳴き出した。ピュロンは非常に楽しそうな顔をしているが、それを見るガイアは驚愕の表情だ。
「――めけめけー」
ピュロンと二人で何度か鳴いていると遠くから声が聞こえてきた。ニーナの声だ。
「めけめけー。ニーナ。めけめけー」
「セネカ!」
天幕からニーナが出てきた。後ろにはファビウスやストローも続いてくる。
「ニーナ! 良かった、居たんだね」
「セネカ、ガイアも……。どうしてここに?」
「『羅針盤』のみんなにお願いがあってここに来たの」
「お願い? それにそちらの人は?」
ニーナは首を傾げながらピュロンを見た。ファビウスとストローも注目している。
「やぁやぁ。ボクは白金級冒険者のピュロンだよ。ピューロって偽名を使うことが多いんだけど、今は面倒だからピュロンって呼ばれることにしてるんだ。よろしくねー」
「『放浪』のピュロン様……? 白金級冒険者が何故セネカ達と一緒にいるんだ?」
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「ストローくんもファビウスくんも久しぶり。プルケルとメネニアもいるのかな? 『月下の誓い』から『羅針盤』にとても大切なお願いがあるの……」
「二人とも天幕にいるけど……。とりあえず呼んでくるね」
セネカの真剣な空気を感じ取ってファビウスがプルケル達を呼びに行った。
突然乗り込んで来て申し訳ないけれど、今は時間がない。それに、特にファビウスにとっては何よりも大事な話になるだろう。
「――セネカとガイアが来ている? それに白金級冒険者も? ニーナ、一体何の話をしているんだ?」
「嘘じゃないよ。ほら、見てみて」
天幕の方から微かに声が聞こえてきた。少し見ていると、プルケルが姿を現し、ついでメネニアも見えてきた。
いま気がついたが、全員が鎧を着けているので探索から帰ってきたばかりか、これから夜にかけて行動をするつもりだったのかもしれない。行き違いにならなくて良かった。
セネカ達の姿を見た二人は笑顔になったけれど、こちらの顔が笑っていないことに気がついて、すぐに真顔になった。
セネカはこれから交渉をしなければならない。相手が彼らだというのは幸運だが、求めるものは大きい。
ゆっくりと息を吐きながらプルケルがやってくるのを待つ。同じように待つファビウスやストローは口を開く気配もなく。様子を伺っている。
ピュロンが前に出てきた。
「冒険者パーティ『羅針盤』のリーダーのプルケル・クルリスだね? ボクは白金級冒険者のピュロンだ。突然で悪いけれど、大事な話があるから全員を囲わせてもらうね?」
そう言った瞬間、全員を覆う半球状の膜が出現した。銀色をしているが、中はそれなりに明るい。
「これは防音だし、ここら辺の魔物に壊される心配もないから思う存分話して良いよ」
プルケル達は自分たちを覆う膜を確認している。非常に薄そうに見えるのに、全力で攻撃しないと傷さえつけられない膜だということをセネカは知っている。
「大事な点をまずボクから話させてもらうけど、今回の事態は国家存亡級だと認定されているんだ。『月下の誓い』は国王陛下から事態への対処を直々に要請されていて、セネカはその正式な使者になる。ガイアは補佐で、ボクはただの見届け人だと思ってくれれば良いけれど、ボクは話が一通り落ち着くまでは外に出ていようと思っているんだ」
ピュロンはいつになく真剣な表情でそう言った。
「何か聞きたいことはあるかな? ボクは中での会話を聞く気はないけれど、膜を叩いてくれれば入ってくるから必要に応じて合図してくれたら良いよ」
プルケルは困惑した表情を浮かべている。いきなりセネカ達が乗り込んで来て、白金級冒険者に「これは国家存亡に関わる案件だよ」と言われたら困るに違いない。
しかし、プルケルはすぐに表情を引き締め、ピュロンに貴族の礼を執った後で言った。
「ピュロン様の話は理解いたしました。完全に状況を飲み込めた訳ではありませんが、一度セネカの話を聞きながら判断していきたいと思います」
ピュロンはそれを聞いて頷き、静かに出て行った。出て行く時、膜がうにょんと動いて穴が空いたのをニーナは興味深そうに見ていた。
「それじゃあ、私から話すね。まずは概要から言うけれど、意味が分からないと思うから後から情報を付け足して行くことになると思う」
「頼む」
セネカの周りを囲むようにプルケル達が立った。一歩引いているが横にはガイアがいる。
「この大陸の植物を司ると言われている龍、樹龍が三百年ぶりに目覚める兆しを見せているみたいなの。ロマヌス王国はこの龍に土地を借りているという認識で、目覚めた龍を鎮める儀式をしようとしているの」
プルケルは頷いた。ここまでは問題ないだろう。
「儀式を行うには巫女が必要なんだけれど、その巫女に選ばれたのがプラウティアなの」
「プラウティアさんが? 何故?」
プラウティアの名前を聞いてファビウスが声を上げた。足を踏み出し、セネカに詰め寄る。
「プラウティアが貴族の子供だっているのはみんな知っていると思うけれど、そのヘルバ氏族っていうのが昔から樹龍を祀っていて、この儀式に関しては国王よりも力を持っているんだって。巫女の選定にはいくつか条件があったんだけど、一番適していたのがプラウティアだったの」
「つまりプラウティアさん次第で、国の状況が大きく変わる可能性があるということだね?」
プルケルは冷静に話を聞こうとしている。だが、よく見ると額には汗が滲んで来ていた。
「その通り。ちなみに、この選定があったのって今朝のことなの。それから国王筆頭補佐官や元枢機卿の神官に話を聞いてからここにいる」
「……おつかれさま」
ポツリと呟いたのはニーナだ。
「そんな役目にプラウティアが選ばれただけでも大きな事件なんだけれど、話はそれだけじゃなかったんだ。樹龍はシルバ大森林の奥地にいるから、巫女を安全に送るための護衛役が必要みたいなんだよね。その護衛役は国と教会からそれぞれ推薦されるんだけれど、私たちは国に選ばれたの」
「……なるほど。少しずつ話が見えてきたわ」
メネニアはそう言ってから唇に手を当てた。深く考えているようだが、まだ話は大事なところに達していない。
「『月下の誓い』に護衛役の中心になることが要請されて、マイオルが団長に任命されたの。護衛役に必要なのは十一人だからあと六人が必要という状態だね」
「それで僕たちのところに来たと言う訳か」
プルケルの言葉に頷く。
「さっき国と教会から護衛役の推薦があるって言ったけれど、教会からは第三騎士団が選ばれることになっているみたい。十五日以内にシルバ大森林で戦いが行われて、それに勝った方が正式な護衛役となって、プラウティアを龍の元に送り、儀式を見守ることになる」
「教会の第三騎士団という話だったが、それは例えば騎士団長のフォルティウス様なども出てくると考えて良いのか?」
「うん。相手も全力みたいだよ」
指摘したのはストローだ。セネカは教会の騎士団のことすらあまり知らなかったけれど、ストローは騎士団長の名前まで知っているようだ。となれば彼がレベルが5であることも知っているかもしれないし、もしかしたらスキルすら分かっているのかもしれない。
「王都のギルドで話をしていたんだけれど、プラウティアが巫女に選ばれてすぐにそのフォルティウス団長が応接室に入ってきたの。そして強引にプラウティアを連れていったんだ。アッタロスさんとゼノン様が場をおさめてくれたけれど、高圧的な態度で剣を抜いたんだよね」
「教会騎士がギルドの中で剣を抜いたのか……」
プルケルはそんな事があり得るのかと考えているのだろう。セネカも実際に見ていなかったら同じように思うはずだ。
先ほどから近めの距離にいたファビウスはさらに前のめりになって言った。
「プラウティアさんは今どうなっているんだ?」
「今は教会にいる。ゼノン様が付いているみたいだけれど、私たちに会うことなく第三騎士団にヴェルディアまで護送されるだろうって聞いているよ。身の安全に関しては絶対大丈夫だって言われたけれど、教会騎士を信用はしていない」
「……そう。それは確かに気になるね。プラウティアさんを取り返したいと思うのは分かるよ」
ファビウスはそう言った。ニーナもメネニアも労わるような目を向けているが、プルケルだけは険しい表情を崩さない。
このまま頼めばこの話を受けてくれそうだ。だけどそれでは正確に情報を伝えたことにならない。
本当の敵は教会騎士団なんかじゃなくて、もっともっと強大な相手なのだから。
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