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第13章(間章):一方その頃編
第150話:卓越者と親衛隊(4)
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セルギウス第三王子が『キト様を尊ぶ会』に突撃する前の日、キトはプラウティアと個室棟にこもり、実験していた。
「⋯⋯[選別]します」
キトとプラウティアはまず杏子を使って練習を重ねていた。
龍卵殻と比べると杏子のほうが抽出が易しく量も多い。【調合】の難易度も低いため、お互いの連携を深めるためにも最適だった。
キトはレベル2に上がった時、サブスキル[高濃縮]を得た。この能力では調合後の薬の濃度を非常に高くできる上に、濃度が高い物質同士の調合にも利があることが分かっている。
この能力を最大限に活かすためにどうしていくのが良いか考えた結果、キトは少ない液量で調合できるようになるのが良いだろうと考えた。
これは想定していた道の一つだ。濃い溶液を少量で調合できるようになれば薬学の世界が変わるかもしれない。
そんな期待を胸にキトはレベル1の時から濃縮での訓練に並行して、出来るだけ少ない液量で【調合】する訓練を続けていた。
最近はスキルの使い方に習熟し、かなり少ない量の液でも反応できるようになってきた。熟練度の上昇を感じる。
また、龍卵殻で調合すると高い熟練度を得ることが出来ると言われている。龍卵殻を扱った製薬を成功させることでレベルが上がったという話は多いけれど、それはそれだけ調合が難しいという意味でもある。
「そろそろ龍卵殻でやってみようか」
「そうだね」
キトはドルシーラの伝手で入手してもらった龍卵殻を取り出した。ここには五つの龍卵殻がある。
しっかりお金を払っているけれど、多分ドルシーラの利益はあまりないだろうとキトは考えていた。この分はどこかでお返しをしないといけないだろう。
「まず私が[選別]するね。この感じだと多分大丈夫だと思う」
いつも控えめなプラウティアがそう言った。ここまで言うならほぼ間違い無いだろう。
プラウティアは龍卵殻に手をかざした後で、その実の奥にある種の中の成分を取り出した。
キトが用意した小さな器に少量の液が入った。
「うまくいったと思う」
プラウティアはニコッと笑った。
「じゃあ私の番だね」
キトはまず龍卵殻抽出液の液量を調べるために器ごと重さを測った。
そしてあらかじめ作製していた反応液をちょうど二倍量になるように龍卵殻抽出液に加えてからよく混ぜた。
この状態でも液量は小指の爪の先ほどしかないけれど、その代わりに本来なら抽出の過程で非常に薄くなっているはずの龍卵殻の成分が濃いままだ。
キトは触媒となるミスリルの粒を一つ加えた後で大きく息を吐いた。
隣ではプラウティアが真剣な眼差しでキトの行動を見ている。
キトは全ての材料が入った小さな器に両手をかざた。
糸を織り込んでいくように緻密に制御して魔力を送り込んでゆく。この工程があるかないかで成功率は大きく変わる。
一呼吸分だけ休憩した後でキトは【調合】を発動した。
すると、ひと匙の液体が強く発光し、その性質を変えた。
◆
キトはセネカとルキウスの力がとてつもなく大きいということを誰よりも分かっていた。
セネカは有史以来の才能を持っていて、ルキウスも御伽話の英雄のような強さを持っている。
それに比べて自分はどうだろうかとキトは考える。
ただの村娘にしては頑張っている方だろう。
幸運に恵まれて王立魔導学校に入り、優秀な成績を修めている。
だけど自分が絶対的に優秀かと言われるとキトにはそうは思えなかった。
みんなキトを褒めて讃えてくれる。
時には学校一の天才だと言ってくれる人もいる。
けれど、学校一の天才は毎年いるのだ。
学生時代にそう評されていても、大人になってから成長が止まってしまった人もいる。
早熟と大器は時に両立しない。
学校ではせいぜいここ数年の人々としか比較されないけれど、すべての世代の人と比べられることになる。
その中で目立つようになると今度は過去の人と比べられるようになり、際限はない。
あの二人はすでに歴史の偉人たちと比べられるような領域に入っている。
それだけの大きさがあるとキトは思っていた。
それに対してキトの力はやはり小さい。
ちょっとだけ賢くて要領が良いだけの自分にとって、常識を破っていくセネカたちの姿はいつも眩しく映る。
だけど一方でキトは自分の力が小さくて良かったとも思っている。
あんなに力が大きかったらきっと持て余してしまう。
なにをしたら良いのか分からなくなってしまう。
力が小さいからこそ自分は自分の道を進もうと決断できる。幼馴染たちを助けることができる。
小さな力だとしてもそれを集中してぶつけ続ければいつかきっと『卓越』できる。
そう信じたキトが選んだのは、ごく少量の素材を用いた製薬の世界だった。
◆
輝く液体を呆然と眺めていると頭の中に声が響いてきた。
【レベル3に上昇しました。[上級調合]が可能になりました。干渉力が大幅に上昇しました。魔力が大幅に上昇しました。サブスキル[微量]を獲得しました】
いつのまにか頬に涙が一筋流れていることにキトは気がついた。
なぜ泣いているのかはキト自身にもよく分かっていなかったけれど手には確かな手応えがあった。
それは暗い洞窟の中で当てもないままに孤独に掘り進め、やっと鉱脈に行き着いたというような手応えだった。
自分の進むべき道はここで間違っていないと確信するに足る手応えだった。
キトは涙を流しながらただ自分の手のひらを眺めていた。
するとプラウティアがそっと近づいてきた。
キトはハッとして口を開く。
「プラウティアさん、調合が成功したよ。そして私、レベル3になったみたい⋯⋯」
そう言うキトを見て、プラウティアは笑みを浮かべた。
なぜ笑われたのだろうとキトは思ったけれど心当たりがなかった。
「⋯⋯私、何か変かな?」
「ううん。キトちゃんのそんな顔を初めて見たから眩しく思っちゃったの」
「そんな顔ってどんな顔?」
キトが聞くとプラウティアはもう一度目の前の顔見てとびっきりの笑顔を浮かべた。
「喜びでいっぱいの顔!」
そしてそう言いながらキトに抱きついた。
プラウティアにぎゅうぎゅう抱きしめられながら、キトは、自分は嬉しかったのだとやっと気がついた。
「セネちゃん、私は待っているから」
口をついて出た言葉を吐いて、キトはプラウティアと一緒に少しだけはしゃいだ。
◆◆◆
その夜、ドルシーラは幸せの絶頂にいた。
レベルアップしたキトがみんなへのお礼ということで食事会を開いてくれたのだ。
そこではキトが一人一人にお礼を言って周り、新しく得たサブスキルを駆使して作ったポーションを配ってくれた。
そのポーションは目薬を入れるような小さな瓶に一雫だけ入っていて、従来のものとは大きく違うことが一瞬で分かった。
キトのスキルは世界を変えてしまうかもしれない。
そんな風にドルシーラが考えている時に食事会に遅れて参加してきた人がいた。
「お、遅れてごめんなさい。パーティでの練習が長引いちゃって」
その子は赤毛の映える肌の白い女の子だった。
「プラウティアちゃん、来てくれてありがとう!」
「い、いえ、こちらこそお誘いいただきありがとうございます」
プラウティアがキトにぺこぺこ頭を下げているのが見える。
そんな様子を見ながら、ドルシーラは王立魔導学校に入学する前に父に言われたことを思い出していた。
『ドルシーラ、もしヘルバ家の御令嬢と会うことがあったら私に教えてくれ』
『ヘルバ家の御令嬢ですか?』
『あぁ、そうだ。どうやら王立冒険者学校への入学が決まったそうなんだよ。確か名前はプラウティアさんと言ったかな⋯⋯』
そんな風に父に言われた時、ドルシーラは不思議な気持ちを抱いた。
会ってこいとか探ってこいではなく、会ったら教えてくれというのはドルシーラの父にしては控えめだった。
『⋯⋯会いに行けばよろしいのでしょうか?』
『いや、こちらから行動を起こす必要はない。あちらからやってきたらご挨拶をするだけで良いんだ。その時はくれぐれも無礼のないようにな』
『⋯⋯無礼でしょうか? 私の方が無礼にならないようにと?』
ドルシーラは混乱した。
品のない振る舞いをするつもりは元からないけれど、コルネリウス氏族の筆頭家である自分の行動が無礼になる相手とはどんな相手だろう。
父の言っていることがドルシーラにはあべこべであるように思った。
『いや、無礼というのは良い言葉ではなかったな。ヘルバの氏族はロマヌス王国の建国前から続く家系で、個人的に敬意を払っているんだよ。だからこちらの身分が上だからと言って無碍に扱わないで欲しいということを伝えたかったんだ』
『⋯⋯分かりました』
その時のドルシーラはそれ以上詮索しなかった。
だけど今日ついにドルシーラはプラウティアと話すことができそうだ。
キトの友人だと聞いてはいたけれど、会うのは初めてだ。
まずは抜かりなく挨拶をして、できればご友人になっていただけないか聞いてみよう。ドルシーラはそう心に決めた。
そして早速父に報告して、父が何を考えているのか詮索する必要があるとドルシーラは考えていた。
「お父様の真意を知る必要がありますわね。だって、あれは何か思うところがある時の顔ですから⋯⋯」
ドルシーラが呟いた時、ちょうどキトとプラウティアの話がひと段落したようだ。
ドルシーラはスッと前に出て手を胸に当て、プラウティアに声をかけた。
「プラウティア様、お初にお目にかかります! 私、『キト様を尊ぶ会』の会長をしておりますドルシーラ・コルネリウスと申します!」
プラウティアが目をぱちくりとさせるのを見て、ドルシーラは思わず顔を引き攣らせてしまった。
----------
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第13章:一方その頃編は終了です。
次話から第14章:月詠の国編が始まります。
魔界から帰還したセネカとルキウスの話に戻ります。
金曜更新に変更します。
「⋯⋯[選別]します」
キトとプラウティアはまず杏子を使って練習を重ねていた。
龍卵殻と比べると杏子のほうが抽出が易しく量も多い。【調合】の難易度も低いため、お互いの連携を深めるためにも最適だった。
キトはレベル2に上がった時、サブスキル[高濃縮]を得た。この能力では調合後の薬の濃度を非常に高くできる上に、濃度が高い物質同士の調合にも利があることが分かっている。
この能力を最大限に活かすためにどうしていくのが良いか考えた結果、キトは少ない液量で調合できるようになるのが良いだろうと考えた。
これは想定していた道の一つだ。濃い溶液を少量で調合できるようになれば薬学の世界が変わるかもしれない。
そんな期待を胸にキトはレベル1の時から濃縮での訓練に並行して、出来るだけ少ない液量で【調合】する訓練を続けていた。
最近はスキルの使い方に習熟し、かなり少ない量の液でも反応できるようになってきた。熟練度の上昇を感じる。
また、龍卵殻で調合すると高い熟練度を得ることが出来ると言われている。龍卵殻を扱った製薬を成功させることでレベルが上がったという話は多いけれど、それはそれだけ調合が難しいという意味でもある。
「そろそろ龍卵殻でやってみようか」
「そうだね」
キトはドルシーラの伝手で入手してもらった龍卵殻を取り出した。ここには五つの龍卵殻がある。
しっかりお金を払っているけれど、多分ドルシーラの利益はあまりないだろうとキトは考えていた。この分はどこかでお返しをしないといけないだろう。
「まず私が[選別]するね。この感じだと多分大丈夫だと思う」
いつも控えめなプラウティアがそう言った。ここまで言うならほぼ間違い無いだろう。
プラウティアは龍卵殻に手をかざした後で、その実の奥にある種の中の成分を取り出した。
キトが用意した小さな器に少量の液が入った。
「うまくいったと思う」
プラウティアはニコッと笑った。
「じゃあ私の番だね」
キトはまず龍卵殻抽出液の液量を調べるために器ごと重さを測った。
そしてあらかじめ作製していた反応液をちょうど二倍量になるように龍卵殻抽出液に加えてからよく混ぜた。
この状態でも液量は小指の爪の先ほどしかないけれど、その代わりに本来なら抽出の過程で非常に薄くなっているはずの龍卵殻の成分が濃いままだ。
キトは触媒となるミスリルの粒を一つ加えた後で大きく息を吐いた。
隣ではプラウティアが真剣な眼差しでキトの行動を見ている。
キトは全ての材料が入った小さな器に両手をかざた。
糸を織り込んでいくように緻密に制御して魔力を送り込んでゆく。この工程があるかないかで成功率は大きく変わる。
一呼吸分だけ休憩した後でキトは【調合】を発動した。
すると、ひと匙の液体が強く発光し、その性質を変えた。
◆
キトはセネカとルキウスの力がとてつもなく大きいということを誰よりも分かっていた。
セネカは有史以来の才能を持っていて、ルキウスも御伽話の英雄のような強さを持っている。
それに比べて自分はどうだろうかとキトは考える。
ただの村娘にしては頑張っている方だろう。
幸運に恵まれて王立魔導学校に入り、優秀な成績を修めている。
だけど自分が絶対的に優秀かと言われるとキトにはそうは思えなかった。
みんなキトを褒めて讃えてくれる。
時には学校一の天才だと言ってくれる人もいる。
けれど、学校一の天才は毎年いるのだ。
学生時代にそう評されていても、大人になってから成長が止まってしまった人もいる。
早熟と大器は時に両立しない。
学校ではせいぜいここ数年の人々としか比較されないけれど、すべての世代の人と比べられることになる。
その中で目立つようになると今度は過去の人と比べられるようになり、際限はない。
あの二人はすでに歴史の偉人たちと比べられるような領域に入っている。
それだけの大きさがあるとキトは思っていた。
それに対してキトの力はやはり小さい。
ちょっとだけ賢くて要領が良いだけの自分にとって、常識を破っていくセネカたちの姿はいつも眩しく映る。
だけど一方でキトは自分の力が小さくて良かったとも思っている。
あんなに力が大きかったらきっと持て余してしまう。
なにをしたら良いのか分からなくなってしまう。
力が小さいからこそ自分は自分の道を進もうと決断できる。幼馴染たちを助けることができる。
小さな力だとしてもそれを集中してぶつけ続ければいつかきっと『卓越』できる。
そう信じたキトが選んだのは、ごく少量の素材を用いた製薬の世界だった。
◆
輝く液体を呆然と眺めていると頭の中に声が響いてきた。
【レベル3に上昇しました。[上級調合]が可能になりました。干渉力が大幅に上昇しました。魔力が大幅に上昇しました。サブスキル[微量]を獲得しました】
いつのまにか頬に涙が一筋流れていることにキトは気がついた。
なぜ泣いているのかはキト自身にもよく分かっていなかったけれど手には確かな手応えがあった。
それは暗い洞窟の中で当てもないままに孤独に掘り進め、やっと鉱脈に行き着いたというような手応えだった。
自分の進むべき道はここで間違っていないと確信するに足る手応えだった。
キトは涙を流しながらただ自分の手のひらを眺めていた。
するとプラウティアがそっと近づいてきた。
キトはハッとして口を開く。
「プラウティアさん、調合が成功したよ。そして私、レベル3になったみたい⋯⋯」
そう言うキトを見て、プラウティアは笑みを浮かべた。
なぜ笑われたのだろうとキトは思ったけれど心当たりがなかった。
「⋯⋯私、何か変かな?」
「ううん。キトちゃんのそんな顔を初めて見たから眩しく思っちゃったの」
「そんな顔ってどんな顔?」
キトが聞くとプラウティアはもう一度目の前の顔見てとびっきりの笑顔を浮かべた。
「喜びでいっぱいの顔!」
そしてそう言いながらキトに抱きついた。
プラウティアにぎゅうぎゅう抱きしめられながら、キトは、自分は嬉しかったのだとやっと気がついた。
「セネちゃん、私は待っているから」
口をついて出た言葉を吐いて、キトはプラウティアと一緒に少しだけはしゃいだ。
◆◆◆
その夜、ドルシーラは幸せの絶頂にいた。
レベルアップしたキトがみんなへのお礼ということで食事会を開いてくれたのだ。
そこではキトが一人一人にお礼を言って周り、新しく得たサブスキルを駆使して作ったポーションを配ってくれた。
そのポーションは目薬を入れるような小さな瓶に一雫だけ入っていて、従来のものとは大きく違うことが一瞬で分かった。
キトのスキルは世界を変えてしまうかもしれない。
そんな風にドルシーラが考えている時に食事会に遅れて参加してきた人がいた。
「お、遅れてごめんなさい。パーティでの練習が長引いちゃって」
その子は赤毛の映える肌の白い女の子だった。
「プラウティアちゃん、来てくれてありがとう!」
「い、いえ、こちらこそお誘いいただきありがとうございます」
プラウティアがキトにぺこぺこ頭を下げているのが見える。
そんな様子を見ながら、ドルシーラは王立魔導学校に入学する前に父に言われたことを思い出していた。
『ドルシーラ、もしヘルバ家の御令嬢と会うことがあったら私に教えてくれ』
『ヘルバ家の御令嬢ですか?』
『あぁ、そうだ。どうやら王立冒険者学校への入学が決まったそうなんだよ。確か名前はプラウティアさんと言ったかな⋯⋯』
そんな風に父に言われた時、ドルシーラは不思議な気持ちを抱いた。
会ってこいとか探ってこいではなく、会ったら教えてくれというのはドルシーラの父にしては控えめだった。
『⋯⋯会いに行けばよろしいのでしょうか?』
『いや、こちらから行動を起こす必要はない。あちらからやってきたらご挨拶をするだけで良いんだ。その時はくれぐれも無礼のないようにな』
『⋯⋯無礼でしょうか? 私の方が無礼にならないようにと?』
ドルシーラは混乱した。
品のない振る舞いをするつもりは元からないけれど、コルネリウス氏族の筆頭家である自分の行動が無礼になる相手とはどんな相手だろう。
父の言っていることがドルシーラにはあべこべであるように思った。
『いや、無礼というのは良い言葉ではなかったな。ヘルバの氏族はロマヌス王国の建国前から続く家系で、個人的に敬意を払っているんだよ。だからこちらの身分が上だからと言って無碍に扱わないで欲しいということを伝えたかったんだ』
『⋯⋯分かりました』
その時のドルシーラはそれ以上詮索しなかった。
だけど今日ついにドルシーラはプラウティアと話すことができそうだ。
キトの友人だと聞いてはいたけれど、会うのは初めてだ。
まずは抜かりなく挨拶をして、できればご友人になっていただけないか聞いてみよう。ドルシーラはそう心に決めた。
そして早速父に報告して、父が何を考えているのか詮索する必要があるとドルシーラは考えていた。
「お父様の真意を知る必要がありますわね。だって、あれは何か思うところがある時の顔ですから⋯⋯」
ドルシーラが呟いた時、ちょうどキトとプラウティアの話がひと段落したようだ。
ドルシーラはスッと前に出て手を胸に当て、プラウティアに声をかけた。
「プラウティア様、お初にお目にかかります! 私、『キト様を尊ぶ会』の会長をしておりますドルシーラ・コルネリウスと申します!」
プラウティアが目をぱちくりとさせるのを見て、ドルシーラは思わず顔を引き攣らせてしまった。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
第13章:一方その頃編は終了です。
次話から第14章:月詠の国編が始まります。
魔界から帰還したセネカとルキウスの話に戻ります。
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