82 / 213
第8章:王立冒険者学校編(2)
第82話:北の地にて
しおりを挟む
セネカが指名依頼を受け、マイオルとプラウティアが武闘会の準備をしている頃、ガイアは一人で修行をしていた。
ガイアも武闘会に出ることを考えたけれど、いまの自分にはもっと重視すべきことがあると考えて辞退することに決めた。
いま北の地に来ている。
かつてこの地でブロンズダックを狩りながら、愚直に勉強を続けた。
正直、苦味の詰まった場所だ。だが、自分を成長させるためにはうってつけだった。
ガイアは魔法を二発撃てるようになった。
それからさらに訓練を重ねて三発の魔法を放つことができるようになった。ただし、三発撃つためには威力を格段に落とさなければならない。最大威力で攻撃をするのは二発が限界のようだった。
威力が落ちるといっても通常の魔法と比べれば十分な攻撃力を持っている。強固な魔法耐性を持つブロンズダックも一撃で倒せるほどだ。
この地でガイアは毎日三匹のブロンズダックを仕留めている。他にも魔物はいるが脅威にはならないので、専ら勉学と思索に励んでいる。
技術はどんどん上がっている。最大威力で放つ時にはまだ不安定だが、威力を抑えれば魔法を拡散させたり、収束させたりできるようになった。
この技術を何とか確立しようと毎日分析を行なっているが、既存の理論には当てはまりそうもない。糸口が全くないと言うわけではないが、細かい情報を繋ぎ合わせることになれば時間が大量に必要になる。ガイアは一旦理論づけを棚上げすることにした。
一日三回の魔法行使の機会を無駄にしないためにガイアは頭を働かせている。試すことを怠らない。最大限収束したらどうなのか、爆風の広がりはどうなのか。知りたいことには際限がないのに時間は限られている。
この日は前日分かったことの追試と更なる分析を行うつもりだった。
昨日魔法を強く収束させた時に砲撃の軌道が妙に安定していた。一匹のブロンズダックを貫通して遥か遠くの方まで進んでいったのだ。
今日も同じことが起きるかどうかの確認をして、実戦で使える技術なのかの見極めをしたい。
ガイアは野営の天幕から出て、ブロンズダックを探し始めた。この地のブロンズダックは脅威になる敵がほとんど存在しないので警戒心のかけらもない。
ちなみにガイアはブロンズダックの習性をまとめてギルドに報告した業績と魔法抜きでの実力を認められて晴れて銅級冒険者に昇格することになった。
しばし探索すると一匹のブロンズダックがフラフラと徘徊しているのを見つけた。虫を追いかけるのに夢中になっている。ガイア以外の人が見たらかわいいと思うかもしれない。
ガイアは魔力を練り上げて、魔法が最大限収束するように操作をした上で【砲撃魔法】を使用した。
魔法は格別の推進力を得て、ブロンズダックに向い、見事に胸を貫いた。
◆
それからもガイアはブロンズダックを狩りながらこの技術に関する知見を得ていった。繰り返すうちに発射時の魔法の形状も操作できることに気がついた。球状や棒状など様々な形を試している。
ガイアはいま野営地に戻って夕食を作っている。今日の夕飯はパン粥だ。
食料も少なくなり、ブロンズダックの素材も多くなってきたので、そろそろ街に戻り、学校に帰る準備をしなければならない。
武闘会の結果も気になっている。マイオルとプラウティアは勝ち進んでいるだろうか。だが、どんな結果になろうともあの二人だったらまた何か大事な教訓を得るだろう。そんな信頼感がガイアの中にはあった。
料理を作りながら考え事をしていると、ふと前にマイオルから聞いた話を思い出した。セネカの突飛な行動は興味深くて示唆に富んでいるので人気だ。
ガイアは真似をしてみることにした。
◆
ガイアは木の上からブロンズダックの様子を見ている。何やら動いているようだが、かなり距離があるので詳細は分からない。
ガイアはうまくはいかないだろうなと思っている。大事なのは成否ではなく、今後追求する必要があるかどうかを早めに見極めることだ。
魔法の準備をする。
これまでの試行から一番良いと思った状態で魔法を放つ。
ブロンズダックを狙撃する。
ズキュウウン!
ダメで元々という気持ちで撃った砲撃は予想以上の直進性を発揮して、ブロンズダックの嘴を掠めた。
「まさか当たるとは⋯⋯」
ガイアは思わず声に出した。
嘴を破壊されたブロンズダックが痛みにのたうちまわっている。
ガイアは接近して再度スキルを発動し、ブロンズダックを仕留めた。
「これは使える技術になりそうだぞ!」
野営地に戻る足取りは期待に満ちていた。
◆
王都までの乗合馬車の中でガイアはまた考え事をしていた。
マイオルにレベルアップの秘訣を聞いてから、ガイアはスキルを罠に使うための努力を続けて来た。具体的には魔法を撃ってから爆発するまでの時間を遅延させようと努力して来たのだ。
だがここで新たに狙撃手としての道が見えて来た。罠と狙撃、かけ離れた技能のように思える。
どちらも追求したら中途半端な状態になってしまうことは分かっていたが、片方を諦めることもできない。何か両立する方法はないだろうか。
そんな考えがガイアの頭の中を巡っている。
「まだ見えて来たばかりだ。焦ることはない。どうせ時間がかかるのだからゆっくり考えよう」
ガイアの呟きは馬車から出るガタガタという音にかき消された。
それから王都に至るまでガイアは考え続けた。時折、悩ましげな顔をするものの、常に楽しそうな表情を浮かべている。
◆
スキル【砲撃魔法】は未知の詰まったスキルである。
一歩進んだことで、また新たな未知が目の前に広がり、再びガイアの探究心を刺激している。
このスキルは『冒険』を求めるガイアにはうってつけの性質を持っている。
だが、ガイアはそのことにまだ気がついていないのだった。
ガイアも武闘会に出ることを考えたけれど、いまの自分にはもっと重視すべきことがあると考えて辞退することに決めた。
いま北の地に来ている。
かつてこの地でブロンズダックを狩りながら、愚直に勉強を続けた。
正直、苦味の詰まった場所だ。だが、自分を成長させるためにはうってつけだった。
ガイアは魔法を二発撃てるようになった。
それからさらに訓練を重ねて三発の魔法を放つことができるようになった。ただし、三発撃つためには威力を格段に落とさなければならない。最大威力で攻撃をするのは二発が限界のようだった。
威力が落ちるといっても通常の魔法と比べれば十分な攻撃力を持っている。強固な魔法耐性を持つブロンズダックも一撃で倒せるほどだ。
この地でガイアは毎日三匹のブロンズダックを仕留めている。他にも魔物はいるが脅威にはならないので、専ら勉学と思索に励んでいる。
技術はどんどん上がっている。最大威力で放つ時にはまだ不安定だが、威力を抑えれば魔法を拡散させたり、収束させたりできるようになった。
この技術を何とか確立しようと毎日分析を行なっているが、既存の理論には当てはまりそうもない。糸口が全くないと言うわけではないが、細かい情報を繋ぎ合わせることになれば時間が大量に必要になる。ガイアは一旦理論づけを棚上げすることにした。
一日三回の魔法行使の機会を無駄にしないためにガイアは頭を働かせている。試すことを怠らない。最大限収束したらどうなのか、爆風の広がりはどうなのか。知りたいことには際限がないのに時間は限られている。
この日は前日分かったことの追試と更なる分析を行うつもりだった。
昨日魔法を強く収束させた時に砲撃の軌道が妙に安定していた。一匹のブロンズダックを貫通して遥か遠くの方まで進んでいったのだ。
今日も同じことが起きるかどうかの確認をして、実戦で使える技術なのかの見極めをしたい。
ガイアは野営の天幕から出て、ブロンズダックを探し始めた。この地のブロンズダックは脅威になる敵がほとんど存在しないので警戒心のかけらもない。
ちなみにガイアはブロンズダックの習性をまとめてギルドに報告した業績と魔法抜きでの実力を認められて晴れて銅級冒険者に昇格することになった。
しばし探索すると一匹のブロンズダックがフラフラと徘徊しているのを見つけた。虫を追いかけるのに夢中になっている。ガイア以外の人が見たらかわいいと思うかもしれない。
ガイアは魔力を練り上げて、魔法が最大限収束するように操作をした上で【砲撃魔法】を使用した。
魔法は格別の推進力を得て、ブロンズダックに向い、見事に胸を貫いた。
◆
それからもガイアはブロンズダックを狩りながらこの技術に関する知見を得ていった。繰り返すうちに発射時の魔法の形状も操作できることに気がついた。球状や棒状など様々な形を試している。
ガイアはいま野営地に戻って夕食を作っている。今日の夕飯はパン粥だ。
食料も少なくなり、ブロンズダックの素材も多くなってきたので、そろそろ街に戻り、学校に帰る準備をしなければならない。
武闘会の結果も気になっている。マイオルとプラウティアは勝ち進んでいるだろうか。だが、どんな結果になろうともあの二人だったらまた何か大事な教訓を得るだろう。そんな信頼感がガイアの中にはあった。
料理を作りながら考え事をしていると、ふと前にマイオルから聞いた話を思い出した。セネカの突飛な行動は興味深くて示唆に富んでいるので人気だ。
ガイアは真似をしてみることにした。
◆
ガイアは木の上からブロンズダックの様子を見ている。何やら動いているようだが、かなり距離があるので詳細は分からない。
ガイアはうまくはいかないだろうなと思っている。大事なのは成否ではなく、今後追求する必要があるかどうかを早めに見極めることだ。
魔法の準備をする。
これまでの試行から一番良いと思った状態で魔法を放つ。
ブロンズダックを狙撃する。
ズキュウウン!
ダメで元々という気持ちで撃った砲撃は予想以上の直進性を発揮して、ブロンズダックの嘴を掠めた。
「まさか当たるとは⋯⋯」
ガイアは思わず声に出した。
嘴を破壊されたブロンズダックが痛みにのたうちまわっている。
ガイアは接近して再度スキルを発動し、ブロンズダックを仕留めた。
「これは使える技術になりそうだぞ!」
野営地に戻る足取りは期待に満ちていた。
◆
王都までの乗合馬車の中でガイアはまた考え事をしていた。
マイオルにレベルアップの秘訣を聞いてから、ガイアはスキルを罠に使うための努力を続けて来た。具体的には魔法を撃ってから爆発するまでの時間を遅延させようと努力して来たのだ。
だがここで新たに狙撃手としての道が見えて来た。罠と狙撃、かけ離れた技能のように思える。
どちらも追求したら中途半端な状態になってしまうことは分かっていたが、片方を諦めることもできない。何か両立する方法はないだろうか。
そんな考えがガイアの頭の中を巡っている。
「まだ見えて来たばかりだ。焦ることはない。どうせ時間がかかるのだからゆっくり考えよう」
ガイアの呟きは馬車から出るガタガタという音にかき消された。
それから王都に至るまでガイアは考え続けた。時折、悩ましげな顔をするものの、常に楽しそうな表情を浮かべている。
◆
スキル【砲撃魔法】は未知の詰まったスキルである。
一歩進んだことで、また新たな未知が目の前に広がり、再びガイアの探究心を刺激している。
このスキルは『冒険』を求めるガイアにはうってつけの性質を持っている。
だが、ガイアはそのことにまだ気がついていないのだった。
21
お気に入りに追加
603
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
オカン公爵令嬢はオヤジを探す
清水柚木
ファンタジー
フォルトゥーナ王国の唯一の後継者、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレは落馬して、前世の記憶を取り戻した。
ハイスペックな王太子として転生し、喜んだのも束の間、転生した世界が乙女ゲームの「愛する貴方と見る黄昏」だと気付く。
そして自身が攻略対象である王子だったと言うことも。
ヒロインとの恋愛なんて冗談じゃない!、とゲームシナリオから抜け出そうとしたところ、前世の母であるオカンと再会。
オカンに振り回されながら、シナリオから抜け出そうと頑張るアダルベルト王子。
オカンにこき使われながら、オヤジ探しを頑張るアダルベルト王子。
あげく魔王までもが復活すると言う。
そんな彼に幸せは訪れるのか?
これは最初から最後まで、オカンに振り回される可哀想なイケメン王子の物語。
※ 「第15回ファンタジー小説大賞」用に過去に書いたものを修正しながらあげていきます。その為、今月中には完結します。
※ 追記 今月中に完結しようと思いましたが、修正が追いつかないので、来月初めに完結になると思います。申し訳ありませんが、もう少しお付き合い頂けるとありがたいです。
※追記 続編を11月から始める予定です。まずは手始めに番外編を書いてみました。よろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる