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【勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている③ ~ただ一人の反逆者~】

【第八章】 面会人達

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 ほとんど反射的に下ろそうとしていた腰を上げ、鉄格子の方に近寄っていた。
 クロンヴァールさんが戻ってきたのか、それともセミリアさんが到着したのか、そんな願望混じりの期待を抱きつつ出入口の方に視線を向けてみるが、こちらに向かって歩いてくる人影はそのどちらでもない。
 僕よりも少し年上ぐらいの、髪の短い若い男だ。
 口に煙草を咥え、一様に同じ鎧を身に纏っている兵士達とは違った格好をしているこの男性のことを僕は一瞬見知らぬ誰かだと思ったのだが、腰に着いているいくつものブーメランを見て思い出した。
 名前までは覚えていないが、この人もサミットの会場で会った人だ。
「どこの誰かと思って見に来てみりゃ随分と若い爆弾魔がいたもんだな。てめえにどんな理由があったのかは知らねえが、こっちは囚人絡みの別件でピリピリしてんだ。反省や後悔をする時間はそう長く与えられねえとだけ言っておく」
 僕の前までやって来るなりフゥ~と長い息で煙を吐くと怒っている風でもなく、呆れている風でもなく、ただの業務連絡の如く平坦な口調でそんなことを言った。
 この人も漏れなく僕を犯人だと決めつけているみたいだけど、少なくとも話の通じそうな具合で言えばここで会った人の誰よりも勝っている印象を受ける。
 一人でも事情を知っている人が多いことで何かが得られるのならと、僕はこの人にも事情を聞いてもらおうと決めた。
「あのですね、さっきクロンヴァールさんにも説明したばかりですけど、僕がここに居る理由は無いというか、あるといえばあるんですけど誤解の方が多いんです」
「誤解だぁ? つーか、姉御の方が先に来てたのかよ」
 男はもう一度煙を吐いて、壁際に置いてあったバケツに煙草を放り投げる。
 確かに今この人はクロンヴァールさんのことを姉御と、そう呼んだ。
 それが続柄としての意味なのか敬称としての意味なのかは分からないが、少なくともクロンヴァールさんと近しい関係であることは間違いないと見ていいだろう。
 つまりはこの人の理解を得ることが出来ればクロンヴァールさんを説得出来る可能性が少なからずあるということだ。
 クロンヴァールさんが周囲の説得によって意志を曲げる人物であるかどうかは僕に知る術もないが、今の僕に可能性の高低を追っている余裕などない。
 その判断の下、僕は先程クロンヴァールさんにした弁明を繰り返した。
 この国に来た経緯、食事の際に聞いた話、城門で起こったこと、それらの話を僕がしている最中、男は時折質問を挟みながらも黙って話を聞いてくれたし、概ね納得がいったようなリアクションも見せている。
 そんな男の様子に僅かに光明が見えた気さえしていた僕だったのだが、
「てめえの言いたいことはよく分かった。手間取らせたな」
 やはり平坦な口調で告げ、懐から取り出した煙草に火を着けると男はそのまま立ち去ろうとする。それで終わりというのはおかしいのではないかと、僕は慌てて呼び止めていた。
「ちょ、ちょっと……」
「あん? まだ何かあるのか?」
「いや、手間を取らせたって……それだけですか?」
「それ以外に何があるってんだ。今の話で説得すりゃすぐにでも出してもらえると思ったか? 逆に問うが、お前が俺の立場だったらそうするのか? お前の言葉が事実なら同情ぐらいはしてやるが、そう単純な問題でもねえだろう。俺は怪我をした兵士達の見舞いに良い報告をしてやれるようにするだけだ。心配しなくても飯ぐらいは届けさせてやるよ、じゃあな」
 今度こそ男は出入り口に向かっていく。
 クロンヴァールさんにしてもそうだが、この人達は今この状況の僕が最も心配しているのは食事のことだとでも思っているのだろうか。
 そんなわけがないだろうと声を大にして言いたいところではあるが、しかし男の言うことももっともだ。
 僕の証言だけではどれだけ信憑性が高くとも、じゃあ出てもいいよということになるはずもない。
 かといって他に僕が僕の立場を変えるために言えることなんて……いや、ちょっと待てよ?
 確かにレコーダーの会話にあった通り鍛錬室とやらが爆発した。だが、そこにあった爆破予告はそれだけじゃなかったはず。
「ちょっと待ってください!」
 それに気付くなり柄でもない大きな声で男の背中に呼び掛ける。
 扉に手を掛けた瞬間だった男の動きが止まり、その顔がこちらを向いた。
 面倒臭そうに声の届く距離まで戻ってくると、苛立ったような声が飛んでくる。
「なんだってんだ。俺ぁ忙しいっつってんだろ、てめえがどうなるかなんざ俺が今この場で答えられるわけがねえんだ。命乞いなら神にしてろ、恨むなら間抜けなてめえを恨め」
「いや、そういうことじゃなくて……もしかしてクロンヴァールさんはこの後馬車に乗る用事があるんじゃないですか?」
「ああ? あるにはあるが、なぜてめえがそれを知っている」
「その聞いた話の中にあったのを思い出したんです。爆弾を仕掛けたのは鍛錬室と馬車だって、クロンヴァールさんは確実に馬車に乗るはずだって、それを伝えたくて……」
「オイオイ、そりゃ洒落になってねえぞガキ。俺が戻り次第馬車でてめえんとこの勇者を迎えに行くって話になってんだ」
「だったら早く中止して安全を確保しないと……」
「ったく、なんでこう次から次へと……俺はすぐに戻って馬車を調べさせる。全部終わるまで礼は言わねえぞ」
 先程と同じ様に煙草をバケツに投げ入れ、男は早足で去っていく。
 しかし、一度聞いただけの他人の会話をよくこのタイミングで思い出したものだ。
 いや、内容の衝撃度からすれば忘れられる話でもないのだろうけど、少なからず僕が落ち着きを取り戻してきたということなのかもしれない。
「ジャック、この世界では爆弾とかってどうやって処理するものなの?」
『そりゃ吹雪や氷系の魔法で凍結させるなり、鉄製の箱に入れて被害が出ない様に爆発させるしかないだろうよ』
「ないだろうよって言われても初耳だけど、とにかく伝えれてよかった。セミリアさんを迎えに行く馬車だなんて下手をしたらセミリアさんまで巻き添えになるところだ」
『むしろ俺はなんでそれを伝えねえのかと思ってたが、お前さんでも余裕を失うとそうなるってなもんか』
「表だって取り乱さないってだけで死刑なんて言われたら誰でもそうなると思うけど……でも、やっと焦りみたいなものはなくなってきたと思う。ていうか、気付いてたならジャックが教えてくれればよかったじゃない」
『正直に言って俺は俺が相棒より賢い人間だとは思ってねえからな。お前さんが言わないなら何か理由があるんじゃねえかと思っても無理はあるめえ』
「ジャックの方がよっぽど頭は良いよ。どれだけ僕がジャックにあれこれと教えてもらってきたと思ってるのさ」
『そりゃ知識を持っているかどうかの差であって頭の良さの差ではねえだろうよ』
「そうだといいけどね、他所の国で犯罪者扱いだなんていい加減僕の存在意義も薄れっぱなしな気がするしさ。それで、他に何か忘れてる情報とかってないかな」
 手元にレコーダーがあれば他の人に聞かせられないまでも僕にとっての情報源になるのだが、生憎とバッグごと取り上げられてる。
 どうにかあの会話を思い出そうと記憶を辿りながらあの会話を脳内再生をしていると、もう一つ捨て置けないキーワードがその中にあることに気が付いた。そしてそれはジャックも同じらしかった。
『もう一つ、恐らく聞いた会話の中じゃ一番重要な情報が残っているな』
「……ハンバル」
『それだ。まず人名で間違いねえだろう、問題はそれが誰かってことだな』
「そうだね。逃げてなければこの町にいることは確かだろうけど、可能性は半々ってところか。とにかくそれを誰かに伝えないと」
『ああ、出来れば赤いのかさっきのブーメラン小僧に話すべきなんだろうが……』
「どうしたの? 急に黙って」
『丁度良いかどうかは定かじゃねえが、誰かが来たみてえだ。俺は少し黙るぜ』
「誰だろう……さっきの人かな」
 ブーメラン小僧とはまたいつにも増して失礼な認識であること甚だしいが、確かにあの人が僕にとっても望ましいだろう。
 あるいは今度こそセミリアさんならいいなとも思ったが、この後馬車に乗って迎えに行こうとしていると言っていたぐらいだ。今馬車の調査をしているならそれは望み薄か。
 そんなことを考えながら鉄格子の傍に寄り、通路の方を見ながらその誰かを待っているとすぐに扉が開いた。
 入ってきたのはその内の誰でもなく、若い少年だ。
 僕と同じ歳ぐらいの、温厚そうで人当たりの良い顔をした男の子が真っ直ぐにこちらに歩いてくる。
 やがて牢の前まで来ると、僕を見るなりなぜか不思議そうに顔を傾げた。
「君……誰?」
 本当に心当たりがない。
 そんな顔と態度で、僕の顔をまじまじと見つめる。
「誰と言われましても……というか、あなたは?」
「ああ、ごめんごめん。ボクはアッシュ・ジェイン、クロンヴァール陛下に仕えている諜報員だ」
「諜報員……」
 諜報員で、名前がアッシュ・ジェイン?
「間違っていたらすいません。もしかして……あなたがAJ?」
「あれ? どうしてボクのことを知ってるのかな、どこかで会ったことがあったっけ」
「いえ、会ったことはないんですけど諜報員でAJと呼ばれている子がいるという話をアルバートさんから聞いたことがありまして」
「アルバートさんと知り合いなのかい?」
「知り合いという程の関係ではないです。サミットの時に会って少し話をした程度で……なので僕が気軽にアルバートさんと呼んでいいものかどうかも分からないんですけど」
「会話をしたのなら名前を呼ぶぐらいのことに気軽も何もないと思うけどねぇ」
 アッシュ・ジェインと名乗る少年は、よく分からないことを言う奴だとでも言いたげに呆れた笑みを浮かべた。
 僕と大して変わらないだろう年齢の割に落ち着き払った、どこか底の知れない雰囲気を持った人のように写る。
「そういうことではなく、フルネームを知らないので失礼じゃないかなと思いまして」
「ああ、そういうこと。君が知らないのも無理はないんだろうけど、気にする必要はないよ。あの人はただのアルバートだ」
「はあ……」
 ただのアルバートってどういう意味だろう。
 もしかして仲が良くないのだろうか。でも二人は地味キャラ同盟だとか言っていたはずなんだけど……。
「話を戻すけど、君はどうしてここに居るのかな? というか君も名乗ってくれると嬉しいんだけど」
「あ、すいません。僕は樋口康平といいます。ここに居るのは不運が重なったからとしか言い様がないんですけど……」
「君がコウヘイ? こりゃ驚いた、こんなところで会うことになるとはね」
「僕のことを知っているんですか?」
「同じ答えを返すようだけど、知っているというほどでもないよ。ボクも人伝に君の話を聞いたってぐらいだ。あとはサミットの報告書を読めるぐらいの地位にはいるからね、そんなところさ」
「そう……ですか」
「で、どうしてここに居るかを聞かせてもらえるかな」
「それは、とにかく誤解なんです」
「誤解、か。まあ誤解だろうねぇ。君には借りもあるし、事情さえ聞かせてもらえればボクが助けてあげられるかもしれないよ?」
「本当ですか? でも、借りというのは?」
「それはこっちの都合だから気にすることはないさ」
 どこか有耶無耶な答えを口にして、これ以上話が逸れるのを阻止しようとしているのかジェインさんは黙ってしまった。
 なんだか意味深な言葉を残された気がしてならないが、ここに来て初めて誤解であることを聞き入れ、僕を助けると言ってくれている相手だ。
 僕の感覚としてはあまり信用していいと思えるタイプの人間ではないが、何度も言っている通り相手や手段を選んでいる場合ではない。
 考えるまでもなく、僕は三度目の同じ説明をジェインさんにすることにした。最初と違って馬車の件も含めた説明だ。
 さっきのブーメランの人と同じく話が終わるまでしっかりと聞いてくれてはいたが、ブーメランの人とは違って相槌を打つぐらいで特に質問をされるようなこともなく。
 やがて全ての話が終わると、ジェインさんは少し難しい顔をしてようやく最初の疑問を口にする。
「なるほどねぇ。確認するけど、本当にその会話をしていた人達の顔は見ていないのかい?」
「残念ながら姿形は全く分からないんです。自分の席から見える位置でもありませんでしたし、そんな会話をしている人達に視線を向けるわけにもいかずという感じでして」
 本当はその声すらもレコーダーで録音したものを聞いただけなんだけど。
「手掛かりは二人組の男だけってことだね。まあ、最低限というかギリギリの情報ってところか」
「それが、さっき思い出したんですけど恐らくその内の一人の名前が分かったんです」
「名前が?」
「その会話の中にそれらしき言葉があったことに気付きまして、それがハンバルという名前なんですけど……」
 ほぼ間違いなく人名であるはずのそのワード。
 この世界に住民登録や戸籍のようなものが存在するのかどうかは分からないけど、犯人を捜す上で名前が分かっているか否かの違いは相当大きな差があるはずだ。
 しかし、そんな期待とは裏腹になぜかジェインさんの表情は険しさが増していた。
「君……その話を他の誰かにした?」
「いえ……さっきも言いましたけどジェインさんがここに来る前に思い出したもので、クロンヴァールさんやブーメランを持っている人には伝えれていないです、けど」
「そう。ならよかった。一つ約束してくれないかな」
「な、何をでしょう……」
「僕がその人の調査をして、結果どうあれ君を解放してあげられるように動いてあげる。だから今の話を他の人には明かさないで欲しいんだ」
「そう仰る理由を聞かせていただかないことには何とも言えないですよね、それは。ジェインさんが僕を助けてくれると言ってくれるのはありがたいんですけど、僕も人に任せっきりで胡座を掻いているわけにもいかないですし」
 自分の命が懸かっているのだ。おかしな取引に応じて立場を悪くするなど言語道断。
 僕の把握している情報の中では一番貴重なものであるはずなのにそれを他言するなと言われる意味も分からなければ、それが僕にとってメリットがあることだとも思えない。
「理由は二つ、どちらも君をそこから出すために必要なことだからだよ。確かに理由も言わずにその通りにしろというのも君にとっては聞き入れられることじゃないだろうから説明してあげるけど、一つは今現在犯人だと思われている君が他の誰かの名前を出したところで君の立場が好転する確率は低いとうことだ」
「まぁ……その理屈は分からないわけではないですけど」
 カメラも無ければ指紋採取なんて技術もなさそうなこの世界。
 名前しか分からない状態で今の僕がこういう名前の人が本当の犯人です、なんて言ってところで僕の立場が変わるかというと難しいものがあるだろう。
 それでもこれだけ大きな町、大きな城に多くの人間がいるのであればどこかに心当たりのある人がいる可能性だってないわけではないはず。
 それら両方を考慮してみても、どうにも説得力に欠ける理由に思える。
 しかし、二つ目の理由を聞くと同時にジェインさんがそのどちらをも考慮した上でそう言っているのだということを理解した。
「二つ目だけど、むしろこっちが重要でね。真犯人であるかどうかは別として、そのハンバルさんという人物をボクは知っている」
「え……心当たりがあるんですか?」
「あるんだよ、それが。しかも事態は最悪でね、そのハンバルさんというのはこの城に仕える大臣の名前だ」
「……それってつまり」
「そう、君の話が事実なら内部犯ということになる可能性が高い上に主を暗殺しようとしているということだ。これは大問題だってことは君にも分かるよね? だからこそ下手にその情報が出回っていない状態で極秘裏に調査をしたいということ、そしてその前にハンバルさんに疑惑の目が向けられた場合、君とハンバル大臣がそれぞれの主張をした時にどちらに有利に働くかは問うまでもないということ。それが理由だよ」
「なるほど……」
 それは確かにもっともな指摘だ。
 まさかあの会話が、クロンヴァールさんを殺そうとしている犯人がクロンヴァールさんの家臣であるとは思いもよらず。
 人望も厚く、側近の人間との絆も固いとセミリアさんに聞いたことがあったのだけど……信長公然り足利義輝然り坂本龍馬然り、後世に名を残すだけの大人物ほど凶刃に倒れる危険も増していくということなのか。
 それが戦乱の世だといえばそれまでなのかもしれないが、いざ自分がその一部となってみると愚かしくもあり残酷で悲しくなる現実だと思えてならない。
 だからこそ僕は暗殺計画を聞いた時に阻止しなければと思ったし、我が身可愛さを差し引いても無実の僕が捕まることで真犯人をのさばらせておくなんてことがあっていいはずがないのだ。
 となれば、僕は何をすべきか。
 今はこの人を信用し、そのハンバルという人物が犯人である証拠を掴んでもらう。
 それが僕がここから出て、なおかつこれ以降の事件が起こらないようにするにはベターな選択だと納得しておくほかないというところか。
 諜報員というからには色々と耳や鼻も効くだろう。
 クロンヴァールさんの側の人間である以上全てを託すことはしないし、僕が最も信用し頼りにするのはセミリアさんであることは揺るぎないが、セミリアさんに出来ないことをこの人が出来るということも事実。
 その動向に合わせて立ち回ることが僕にとっても当初の目的を果たすためには一番いいと言える。
「分かりました、取り敢えずはジェインさんの言う通りにします。自分の身が本当に危ないと思った時にどういう判断をするかは分からないですけど」
 熟考の末、僕は受け入れることにした。
 ジェインさんはそこでようやく表情を緩める。
「信用ないなぁ。今この話をした以上君がそのまま裁きを受けるような状況にするわけがないのにさ。ま、その慎重さがあるから国王代理を任されるだけの信頼に繋がっているのかな? 今の姿を見ると、今日はあまり発揮出来ていないみたいだけど」
 嫌味を一つ挟んだのち、ジェインさんは身体の向きを変えた。
 余計なお世話だ。と、言いたいところだが実際その通りなのが虚しいところだな……。
「じゃあボクはすぐに取り掛かるとするよ。じき君の国の勇者もやってくるだろうけど、それまでに成果を上げられるかは微妙なラインかな。どちらにせよ、進展があればまた会いに来るよ」
「分かりました。どうかよろしくお願いします、ジェインさん」
「これでも情報収集は得意だし、クロンヴァール陛下に進言するぐらいの立ち位置にはいるからね。どうにか頑張ってみるさ。それから、最後に一つ」
「なんでしょうか。もうご飯の心配はいらないですよ?」
「ご飯? 何の話か分からないけど、君もボクのことはAJと呼ぶといい」
 どこか爽やかな微笑を見せるとジェインさんはそのまま去っていった。
 なんといか、歳の差なんてあってないようなぐらいだろうに随分と高い位置から物を言う人だ。
「ジャック……あの人、どう思う?」
『何を考えているか分からないタイプのいけ好かねえガキだが、あんなでも相棒の唯一の味方かもしれねえからな。今は使えるモンは使っておいていいんじゃねえかってぐらいの感想だ』
「僕も同じ感想だし、同じ考えだったから安心したよ」
『年齢から頭脳明晰な立ち位置までお前さんと似たり寄ったりなくせに、どうにも捻くれてるっつーか可愛げがねえっつーか。俺は相棒の方が百倍可愛いと思うね』
「……そんな感想は聞きたくなかったんだけど」
 
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