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【勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている② ~五大王国合同サミット~】

【第十一章】 五大王国

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 王様と姫様に付き人としてミランダさんで一つの部屋を、それ以外の人間で一つの部屋を、という割り振りで一旦別れた僕達は休息兼昼食の時間を取った。
 本来はミランダさんもこっちの部屋の予定だったらしいのだが、ローラ姫が用事を言い付ける相手がいないと機嫌が悪くなるので突如抜擢されてしまっていたりする。
 この世界で言うところの五大王国の王達による話し合いが行われるのは明日の昼ということだ。
 それが終わるまで僕達は特にやることもないらしく、この世界では珍しい自由時間が与えられていた。
 といっても僕とセミリアさんは他所の国の人達が到着次第王様と一緒に挨拶に行かないとけないので呼ばれればすぐに向かわなければならない。セミリアさんが言うには僕が頭の良さを、セミリアさんが強さを示すための側近という人選であるらしい。
 随分と買われたものだと気後れしつつあった時間もあるにはあったが、周囲を見渡してみると他の人よりはまだマシだろうという理由でしかないのではなかろうかと思うと複雑な心境だ。
 ちなみに他の面々はというと『喧嘩相手でも探してくるわ』と物騒な言葉を残して部屋を出て行ってしまったサミュエルさんとアルスさんを除いて皆が部屋にいる。
 大勢で一つの部屋を使う賑やかさにも慣れたものだけど、とはいえ学校行事や旅行の様な感覚とはまた少し違う感じだ。
 異世界に限らず例えば海外旅行だったとしても同じ気分になるのだろうが、日本ではないという環境や建物、備品の数々、或いは出会う人達がそうさせているのかもしれない。
 高瀬さんは幸いにも気を失う前後のことを曖昧にしか覚えておらず、適当に誤魔化して納得させてからはホームページのオリジナル小説第二弾を今の内に書き残しておくと一人大人しく持参したノートにペンを走らせ続けている。
 そして夏目さんは僕やセミリアさんと雑談に興じているのだが、王様のお供にお供したいと言って聞かないことからも好奇心は強まる一方のようだ。
 決定権を持っていないがために返事に困るんだけど、もう本人が付いてくる気満々なのでどうしようもなさそうである。
 最後にアルスさんだが、彼女は他国の人達が到着した際に王様への報告を行う役目を与えられ、この馬鹿っ広い建物の一階入り口でお出迎えの準備をしている。いつ来るかも分からないというのに、ミランダさんも含めやはり大変な仕事だ。
 これは後から伝え聞いた話なのだが、フローレシアとかなんとかいう国の王様は僕達よりも先にここに到着していたらしい。
 しかし部屋に籠もったきり何の音沙汰も無く、呼び掛けに対しても反応が無いという話だ。なんでもあの小さなボートがそれだったんだとか。
 そうなると残るは二国。
 シルクレアという最強最大の国とサントゥアリオというセミリアさんの生まれ故郷である国ということ以外は何の情報も持っていないわけだが、一体どんな人達と向かい合わなければいけないのだろうか。
 ユノ? といったか、先ほどのマリアー二という女王のいる国も三人としか会っていないし、フローレシアという国の人は一人として姿を見ていない。
 セミリアさんやサミュエルさん然り、先程の三人然り、若い女性が当たり前の様に武器を持って当たり前の様に戦争がある世界だ。
 当事者が誰になるかはさておき、また揉め事の一つや二つは平気で起きそうな気がしてならないのが不安の種といったところか。まあ僕達の誰かが直接関係していなければ知ったことでもないのだけど。
 そんな、本当は横になって休みたいのに切り出せないまま女性二人の話し相手をし続けている時間が一時間ほど過ぎた頃、不意に部屋の扉がノックされた。
 すぐに開いた扉の向こうから姿を現したのは玄関口で待機していたはずのアルスさんだ。
「失礼します。勇者様、コウヘイ様、国王様がお呼びでございます」
 どうやら出番が来てしまったみたいだ。
 セミリアさんと頷き合い、腰を上げると当たり前の顔をして夏目さんもそれに倣っている。
 アルスさんが何か言い足そうにしたが『ひとまず外で』というジェスチャーをすると僕の言いたいことを理解してくれたのかアルスさんも黙って頷いた。
 呼び掛けても無視されるほどに集中してている珍しく大人しい高瀬さんに気付かれないようにしようと思う気持ちは四者共通だったようだ。
「アスカ様も同行なさるおつもりで?」
 出来る限り静かに扉を閉め、少し離れた廊下で話を再開。
 まるで欧州で暮らす貴族の屋敷みたく真っ赤な絨毯の引かれた廊下に土足で立つという行為にもやっと慣れ始めた今日この頃だ。
「飛鳥様やて……なんか照れるわ。いやそれよりもやな、二人が出て行ったらウチやること無いやん? 別に邪魔せーへんしいいやろ?」
「お二人が構わないのであれば私が反対する理由はございませんが、あくまで国王様のお心次第という点はご理解いただければと」
「当然やん。王様がアカン言うたら大人しくしょんぼり戻るて」
 しょんぼりはするのか……なんだかそれはそれで可哀相な気もする。
 あの王様はあまり厳しく言う人ではないと思うけど、さっきの件があるだけに慎重になる可能性も否めないのも事実。さて、どう転ぶか。
 という感じで王様の待つ部屋まで向かった僕達だったが、意外とすんなり了承された。
 何が悲しくて隣の部屋に行くだけのことに二度も角を曲がらなければならないのかという疑問はさておき、どうやら夏目さん以外にも人が増えていたことが原因のようだ。
 どういうわけかロールフェリア王女とミランダさんを含めた七人がこの場にいる。ちなみにアルスさんは一人になった高瀬さんの監視役として部屋の外で待機しているのでいない。
「なんや、結局お姫様も行くことになったんか」
「うむ、やはり次代を担う王家の者として他国の王と顔合わせぐらいはしておくべきだろうと思ってな。みての通りふて腐れておるのが困りものなのだが……これローラ、いい加減機嫌を直さんか」
「……フン」
 姫様はそっぽを向いてしまった。
 父親とはいえ人前で一国の主に取る態度ではないというか、これはある意味公務のようなものだろうに、それを拗ねて嫌がる王女様というのもどうなんだろう。
 王様ももう少しビシっと言えばいいのに……なんてことを密かに思いつつ、呆れた様に溜息を吐く王様に招集の理由を聞いてみる。
「他所の国の人達が来られたんですか?」
「む? ああ、その通りだ。シルクレアの一団が到着したと連絡を受けたのでな、挨拶に向かうこととする。くれぐれも先程のセリムスやカンタダのような行動は慎んでくれ。わしの立場もそうだが、何よりも今度ばかりは無事で済まぬ可能性も大いにある。あの国の者達は敵と見なせば容赦の無い連中ばかりだ。それも王に忠実な者ばかりであるがゆえのことだがな」
「なんか物騒やなぁ。ウチも気ぃつけよ」
 僕もそうしよう。
 一瞬そう思ったけど、何に気をつけるべきなのかも、どんな人達なのかも分からなかったので取り敢えず臨機応変に立ち回ることを心掛けよう。
 そう決めて、王様の後ろに付いて一回の広場に向かった。

          ○

 シンデレラ城さながらの派手な階段をいくつも降り、一階の玄関広場に着くとなんだか人がたくさん居た。
 僕達を除いて七人。うち二人は少し前に会ったマリアー二王と護衛の人だ。
 キャミイさんと言ったか、唯一左腕だけが鎧に覆われているポニーテールの女性だけが傍に控えており、あのカエサルという人は居ないようだ。
 その二人が到着したばかりだと思われる一団と先に挨拶を交わしている。それすなわち、初めて目にするあの五人が例のシルクレア王国という国の人達ということらしい。
 しかし、また誰も彼も特徴的過ぎるといっていいほどに特徴的な風貌をしているなぁ。服装や持っている物がよりそう思わせるのだろうけど、それでも十分過ぎる程に一般的とは言い難い感じだ。
「うわ~、見て見て康平君。髪の毛真っ赤やで」
「そうですね……それが些細なことに感じてしまうのが不思議で仕方ないですけど」
「あれが似合ってるってのが一番の驚きやで……ていうかセミリアはんに引けを取らんあの顔。やっぱ完璧超人やな、何食べたらあんな美人になれるんやろか」
 夏目さんの感想通り、先頭に立ち今まさにマリアー二王と握手を交わした女性の頭髪は燃えるような赤色をしている。
 セミリアさんの銀髪といい、地毛なのか染めているのかを一度聞いてみたいところではあるが、そんなことはさておき推測するにあの人がなんとかというシルクレア王国の女王様のようだ。
 世界一強くて美しいと言われているという話だったけど、なるほど確かにその外見は客観的に見ても納得せざるを得ないほどに綺麗というか美人というか、そんな見た目をしている。
 それでいて腰に剣を携え、背にはマントらしきものも見えていて、かつ女性らしい煌びやかな格好をしているその姿は凛々しさというか、格好良さみたいなものが溢れんばかりという非の打ち所がない、夏目さんじゃないが本当に完璧超人だった。
 マリアー二王といい、あの人といい二十代半ばかそれ未満ではないかという女性が揃って一国の王であるとは恐れ入る。
 そして、その赤髪の女性の後ろに立つ四人。
 世界一強い女性に護衛が必要なのかはさておき、配下だとか側近だとか、そういう人達なのだろう。
 若い男女が一人ずつと中年の男が二人、こちらはこちらで凄まじい存在感を醸し出しつつ傍に控えていた。
 赤い髪の人の後ろに立つ二十歳前後の若い男女はロールプレイングゲームなどで目にするいかにも戦士らしい格好をしていて、男性の方の背中には背丈と同じぐらい大きなブーメランが見えている。
 その後ろには三十代ぐらいだろうか、物腰の柔らかそうなおじさんが居るが見た目の奇抜さも無く格好も城の兵士と似た様なもので唯一この人だけは周りが目立つせいもあってかやたらと地味に感じられた。
 更にその横にはもう少し歳のいったローブを着たガタイも良く背の高い厳つい男がどっしりと構えている。
 その佇まいや表情にはややおっかない感じが、言い換えればセミリアさん達の持つ強さという点において秀でた能力が備わっていることが見た目からひしひしと伝わってきていて、きっとこの人達はもの凄く強い、素人目にそれが分かるだけの雰囲気があった。
 失礼かもしれないが、僕達の中では一番偉いはずのリュドヴィック王と比べても親子ほど歳の離れた向こうの王様どころかあの後ろに立っている人達の方が遙かに威厳や風格といったものが感じられるというレベルだ。
「では我々も行くとしよう」
 マリアー二王の挨拶が終わったのを見て、そのリュドヴィック王が止めていた足を進める。
 そのまま一団に近付いていくと、赤い髪のなんとか王がこちらに気付いた。
「これはこれはリュドヴィック王、しばらくぶりだな。わざわざご足労いただかずとも挨拶ならこちらから参ったというのに」
「いやいやなんの。クロンヴァール王といいマリアー二王といい、若い王達には年寄り扱いされているがまだ老け込むような歳ではありませんぞ」
「はっはっは、あてつけが言える程の元気があるのも困りものだ。息災で何より」
「そちらも元気そうで安心しましたぞ。その美貌も衰え知らずの様でまったく羨ましい限りだ」
「光栄至極と言いたいところだが、美貌など戦や政の役に立つものでもなかろう。そんなものよりも強さ賢さを磨きたいものだ、という話は今の私がすると少し説得力に欠けるかな」
「どちらの言葉もごもっともだ」
 二人で笑い合いつつ、二人の王は握手を交わす。
 歳は二回りぐらいリュドヴィック王の方が上なのに、なんというか立場は完全に向こうが上な感じだ。
 この人の国から支援を受けているという話だったし、少なからず頭が上がらない部分があるのだろう。なんてことを考えていると、クロンヴァール王の視線がセミリアさんに移った。
「元気そうだな聖剣、しばらく会っていなかったが随分と腕を上げたようじゃないか」
「お久しぶりです、クロンヴァール王」
「久しぶりついでに一つ言わせてもらうとしよう、私はお前が欲しい」
「勿体ないお言葉ですが、私にはまだまだやらなければならないことがありますゆえ」
「ふむ、私の下に居ればそのやらなければならないこととやらもやりやすいとは思うが、お前がそう言うのであれば仕方あるまい。リュドヴィック王の顔を立てて引いておくとしよう。諦めるつもりはないがな」
 なんだか凄いやりとりだった。
 堂々とヘッドハンティングするとは、クロンヴァール王が凄いのやらセミリアさんが凄いのやら……そもそも勇者とか兵士にヘッドハンティングとかあるのだろうか。
 というか僕や夏目さん、ミランダさんはおろかロールフェリア王女までもが全く眼中に無い感じなのが対応に困る。
 一声掛けてくれれば挨拶の一つも出来るのだろうけど、こっちから言葉を発していい時と場合なのかどうかも判断が難しい。
 そんな僕の心情など知る由も無く、クロンヴァール王の視線がリュドヴィック王に戻ったかと思うと、
「ときにリュドヴィック王よ。ちょうどいい機会だ、例の話の返答をいただいても構わないかな? 私は回りくどい言い方は嫌いなのではっきり言うが、先日送った手紙の件だ」
「先日の手紙というと……支援の?」
「その通り。元よりグランフェルトの民のためではあるが、主たる王にその意志がなければどのみち国の繁栄などない。もしも貴殿が我が国の支援に胡座を掻いて為政を怠けているようであれば我々はいつでも手を引く考えである、と確かに伝えているはずだ。そしてそれに対する返答をサミットの場でもらうと約束もした」
「う、うむ……勿論忘れているはずもありませんぞ」
 と、言いつつ。
 王様はそーっと振り返って僕達の顔を見回した。
 どうしよう……という表情を通り越してもはや助けを求めているとしか言い様がない困り果てた顔だ。
 一度全員を見て、最終的にその視線は僕とセミリアさんだけを何度も往復する。
 助け船を出してあげたい気持ちはあるが、持っている情報が少なすぎて墓穴を掘るのではなかろうかと思うと出しゃばってもいいものか。
 そしてあの毅然としたクロンヴァール王を言いくるめることが僕に出来るかどうかも判断を誤ると余計に話がこじれそうだ。
「どうしたリュドヴィック王よ」
「ん、いや、失礼をした。その件ですがクロンヴァール王よ……」
 名を呼ばれて身体の向きを戻したものの、リュドヴィック王の声から察するに名案を思い付いたわけではなさそうだ。
 もしも。
 僕がここに呼ばれた意味を僕が理解しなければならないのであれば、存在意義を発揮するべきは今だということなのだろう。
 セミリアさんも考える素振りをしているだけで口を挟めないみたいだし、こうなったら仕方あるまい。行き当たりばったりに他ならないが、やるだけやってみるとしよう。
 駄目だったら駄目だったで後で怒られれば済む……のかどうかは微妙だけど、王様に任せていても結果は同じだと考えればいくらか気も楽だ。
「その件については僕から説明させていただきましょう」
 半ばやけくそ気味で二人の会話を遮り、王の横に並ぶ。
 すぐに後ろで『コ、コウヘイ!?』『康平君!?』なんて声が聞こえていた。
 ……あなた達が驚いた素振りを見せたら僕の演技の意味が無いでしょうに。
「お前は?」
 クロンヴァール王は訝しげに僕を見る。
「リュドヴィック王の世話になっています、樋口康平といいます」
「ほう、そのヒグチ・コウヘイとやらが何故王を差し置いて話をしようとする」
 今度は僕ではなくリュドヴィック王を見るクロンヴァール王だったが、さすがにリュドヴィック王も僕が出て来た意味が分からない人ではなかったようで、すかさず話を合わせてくれた。
「こ、このコウヘイはわしの傍で仕えている者でしてな。まだ若いがとても頭が良くわしも信頼している。復興に関しては彼の主導で行っておるゆえ代弁させようと思った次第で」
「なるほど、では聞かせてもらおう」
 もう一度クロンヴァール王が僕を見る。
 その態度は期待している返答が得られるとは思っていないという感情を隠すこともない、半ば失笑混じりのものであったが、ある意味それは人を見る目があるのかもしれない。
 何故なら今から僕が口にすることはたまたま横で聞いていただけの話をそれっぽく言い換えたり作り話を加えただけの物なのだから。
「では僭越ながら。先の魔王撃退により我が国の治安は見違えるほど良くなっています。それに伴い城下に集中していた兵士も徐々に各地に行き渡り始め、安全を求めて移り住んできた者達の元居た土地や地域に戻る動きが活発になっており、主に農民や漁民が中心となっているため生産性においては以前と同程度まで回復する見込みが立っています。移り住んで来た全ての人間が、というわけではありませんが、土地や家を失った者達においては国がそれを支援することで新たにやりたがる者も多く出始め、総合的な生産量においてもいずれは以前より上昇するまでに至ると思われます。また、主要都市間を繋ぐ道を整備し、移動に際する不便を取り除き、要所に関所を設けることで最低限の安心と安全を提供することで国内の商人達の動きも活発になり流通が拡大していく見通しも立っています。そして国外を含めた流通に関しても近く新たに港を建設する予定であり、完成すれば御国の船も今までよりも渡航が楽になると同時に、大きな貨物船を製造することで物資を送り届けてもらうだけではなくこちらから受け取りに行くことも可能になります。しかし先ほど述べた計画も短期的な成果を出すことは簡単ではなく、現状情けなくも御国からの物資は必要であり重要な物であることに違いはありません。であるからこそ我々も御国に報いるべきだと考え、我が国の船で、例えば銅製品や穀物などを送らせていただくことで支援という形から貿易という形へシフトしていけるだけの用意も平行して行っていくご提案をする準備を行っている次第です」
 我ながら、なんとまあ思い付きでベラベラと口上を並び立てられたものだと感心する。
 細かい部分に突っ込まれた時点でほぼアウトなだけにどこまで通用したのかは不安だったが、意外にもあっさりとクロンヴァール王は引き下がった。
「ふむ、中々よく考えているようで安心したぞリュドヴィック王。それだけの計画を立てているのなら私もうるさく言うつもりはない。詳しい話はまた場を改めるとしよう。全ては魔族の侵攻が元凶だ、同じ人間同士仲良くやっていこうではないか」
「そ、そうですな。ごもっともだ」
 あからさまにホッとした顔をするリュドヴィック王だった。
 とはいえ、なんとかなったようで何よりだ。
 話が終わったことを確認して僕も後ろに下がることにする。後はもう自分で頑張ってねって感じだ。
「一つ思い出したが、聞いたかリュドヴィック王よ。マリアー二王の話ではフローレシアの王も既にでに来ているということだ。奴とは一度はっきり話をせねばならぬと思っていた私にしてみれば何とも都合が良い」
「ま、まあ極力温厚に済ませてもらいたいところですが……しかし、まだ前日の昼だというのに残るはサントゥアリオのみとは、真面目過ぎるのも考えものですな」
「いやいや、それは少し違うぞリュドヴィック王」
 その言葉と同時に、クロンヴァール王の後ろに立つ四人が同時に後ろを向いた。
「どうやらサントゥアリオの一団もご到着のようだ」
 遅れてクロンヴァール王も振り返る。
 その瞬間、入り口の扉が開いたかと思うと五人の人影が現れた。
 先頭に立つのは若いブロンドの男性。そしてその後ろに立つのは王を含めて五人しか入場を許されないという規定の通り、やはり四人の男女だった。
 背中に槍が見える若い女性、腰に剣を差した首に大きな傷がある大柄で無機質な表情をした中年の男、僕よりも年下であろう若く小柄で気弱そうな少年、そして歳のいった白髪の老人という、なんとも老若男女勢揃いといった一団だ。
 クロンヴァール王の言葉からして、この人達がセミリアさんの故郷であるというサントゥアリオ共和国の人達なのだろう。
「これはこれは皆さんお揃いで。早めに出発したつもりでしたが、まさか我々が最後尾だったとは驚きです」
 そう言ったのは一団の先頭に立つ若い男性だった。
 教えて貰わなくとも分かる。この人が王か、或いは王子だ。
 一言で表すならば、超絶イケメンといったところか。
 こんな美男子が王子でなければなんだというのかと言いたくなるほどの美青年である。ブロンドヘアがまた似合い過ぎている程に似合っている。
 リュドヴィック王、クロンヴァール王、マリアー二王が揃って挨拶と握手を交わしているあたり、やはりあの男性が王であることに間違いはなさそうだ。
 しかし、あの人もどう見ても二十四、五ぐらいだろうに、この世界の王様の平均年齢は低すぎやしないか。
「うっわー、なにあのイケメン具合? あんなイケメン見たことないでウチ」
 隣にいる夏目さんの目が輝いていた。
 無理もない。男の僕から見てもそう思うレベルである。
 しかも今、そんなイケメン王子とクロンヴァール王が握手を交わしている絵が目の前にあるのだ。
 もう不平等を絵に描いたような美男美女の競演だと言えよう。こんなにお似合いのカップルはこの世に存在しないんじゃないだろうか。
 そんな似合わないことをしみじみと考えていると、
「手紙のやりとり以外で会話をするのは久しぶりだね。嫁入りをする時期は決まったかい?」
「何を馬鹿なことを。私には王の務めが残っている、お前が婿入りする日を決める方が早いといつも言っているだろう」
「ふっ、この調子ではもうしばらく手紙でやりとりするだけの日々が続きそうだ」
「そう長い時間というわけでもあるまい。男ならやり遂げてみせろ」
 そんな会話が、いかにもといった雰囲気で繰り広げられていた。
「え、何あのやりとり? あの二人付き合ってるん?」
 勿論これは夏目さんの言葉。
 どこか軽くショックを受けた様な口振りだ。
「お主等が知らぬのも無理はないが、あのジェルタール王とクロンヴァール王は少し前に正式に婚姻を結んだばかりでな、他国にも知れ渡るぐらいにちょっとした話題になったのだぞ」
 教えてくれたのはセミリアさんだ。
 なるほど、それがさっき言っていた『説得力がない』という言葉の意味か。
「あの人はジェルタール王という名前なんですか」
「ああ、私達にとっては有名な面々でもコウヘイ達にとっては初めて見聞きするのだったな。私から言っておくべきだった」
 そう言って、セミリアさんがシルクレア王国と今到着したばかりのサントゥアリオ共和国の人達の名前をを教えてくれた。
「まずはシルクレアだが、あの巨大なブーメランを背負っているのがダニエル・ハイクといってクロンヴァール王直属の護衛兵士の一人だ。戦闘に使うのはあのブーメランだけでなく腰にある六っつのブーメランを使うシルクレアでも上位の戦士でもある。そしてもう一人の直属の護衛兵士がその横にいる女性だ。名前をクリスティア・ユメールという。彼女は糸使いでクロンヴァール王を除けばシルクレアで最も強い女戦士と言われているんだ。年齢は二人とも二十前後だったと記憶している。その後ろにいる兵士の姿をした男はシルクレア兵士団の隊長だ。名前は確かアルバートといったか、残念ながら直接の交流がほとんどないのでその他に説明出来そうな情報がないことを許してくれ。それから、その横にいる体格の良い男は何度か話に出たと思うが、ロスキー・セラム殿といって名実ともに世界一の魔術師である偉大なお方だ。次いでサントゥアリオの面々に移るが、王であるジェルタール王いや、パトリオット・ジェルタール王は二十七歳でありながら王になってすでに八年という異例の王と呼ばれる人物だ。ちなみに婚約者であるクロンヴァール王は二十六歳、あの方も二十代前半で王になっているのだから戦乱の世の中というものがいかに残酷であるかを物語っているかと思うと心が傷む限りだな。その他の者についてだが、実は私も大して情報を持っていない。あの槍を持った女性と背の高い男ぐらいか。女性の方がエレナール・キアラといって、王国護衛団の総隊長であり天武七闘士の一人でもある凄い人だ、歳も二十三と若い。男の方はその護衛団の副隊長をしているヘロルド・ノーマンといったかな。私も名前程度しか知らないが、先代の王の頃から前線で指揮を執ってきた屈強な戦士であるらしい。残る少年と老人だが、彼らに関しては私も初見だ。あまり役に立つ情報がなくてすまないな」
「いえ、十分に聞いた価値はありましたよ」
 名前だけでも知る意味はあっただろうし、他にも多少なりとも情報は得ることが出来た。
 今日か明日か、いずれにしてもそんな人達と肩を並べる時が来るのだとしたら知っておいて損をする情報など一つもない。
 今聞いた情報を整理しようと顔や名前を一致させていると、ちょうど王達の挨拶も終わったらしくリュドヴィック王が戻ってきた。
 部屋に戻るのか、はたまた姫様あたりを連れて挨拶回りでもするのか。
 と、この後の事を考えている最中、不意にクロンヴァール王がまるでこの場に居る全員に問い掛ける様に大きな声で言った。
「さて諸国の王達よ。私から一つ提案がある」
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公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

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 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

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レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

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