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愛翔と優里亜
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月曜日は、愛翔が埼玉から戻る時間が遅くなり、火曜日は私が残業で、迎えた水曜日はうちの会社のノー残業デー。
愛翔から『今日は横浜での商談が、15時には終わったから、迎えに行く』というメッセージに気付いたのは、帰り支度をしている時だった。
「片瀬さん。今日、飲みに行かない?」
向かい席の山田さんに声をかけられた。
「すみません。約束があるので。」
「片瀬さん、デートですか?」
すかさず由香ちゃんが聞いてくる。
「そうよ。由香ちゃんは?」
「私は、週末に雄太さんとおでかけの予定ですぅ。」
「雄太くんの事で、何か気になる事があれば、協力するからね。」
「あれ?私と雄太さんが付き合うと将来、片瀬さんが義姉になる可能性があるって事?」
「そうね…そうなったら、嬉しいけど、雄太くんはまだ学生だから、そうなるといいねくらいに考えておこうね。」
「はいっ、お義姉さまっ」
由香ちゃんとふざけて、そのまま一緒に更衣室に向かう。
山田さんには、断った理由をしつこく聞かれるといつまでも帰れなくなるから。
更衣室で軽くメイクを直し、エレベーターで降りると先週の金曜日にこーたくんが、いたのと同じ場所にスーツ姿の愛翔が座っていた。
違うのは、うちの会社はもちろん、同じビルに入る会社の女の子たちが遠巻きに愛翔を見ている。
うちの受付嬢で、由香ちゃんの友達の中原さんがまだ残っていたので、受付カウンターに2人で寄ってみた。
「中原さん、お疲れ様です。」
「中原、まだ上がらないの?」
「お疲れ様です。片瀬さんと田中はもう上がりですか。」
「えぇ。この状態ってずっと?」
「はい、あちらの方が待ち合わせらしく座ったのが15分ほど前で、そこから遠巻きに見ている女子が、この時間のせいで増殖中です。
私も誰を待っているのか観察しているので、ホントは上がれるのにここにいますっ」
この状態で愛翔に近寄る勇気は、私にはない。
愛翔を見ないようにスマホを取り出してLINEの画面を開いた。
『仕事、終わったけどエントランスで愛翔が注目浴びてて、近寄るのはパスしたい。
そのまま外に出て、歩き出して。
後ろからついて行くから。』
『了解、確かにさっきから何人か話しかけてきたし、視線も…
近くのコインパーキングに車、停めてあるからついて来て』
すぐに送ったOKスタンプを見た愛翔は、立ち上がるとこちらを見ずに歩き出した。
「あら?あの人、待ち人来なかったのかしら?」
中原さんは、首を傾げているが私たちは素知らぬ振りで「お先に」と声をかけて移動する。
由香ちゃんがいるおかげで、前を歩く愛翔を追いかけているようには見えない。
二本先の路地で曲がると愛翔が、振り返った。
「2人ともお疲れ様。由香ちゃんだったよね?そのまま帰るなら送っていくよ。」
「いいんですか?」
「今日は車だからね。」
すぐ前のコインパーキングを指差して愛翔はそう言った。
黒いLのマークの車が愛翔の車のようだけど、いつ買ったんだろう。
私の疑問に気付いたらしい愛翔が答えてくれた。
「仕事で移動するのに使うから、会社負担の社用車。仕事で長距離乗る以外のガソリンは自分持ちだけどね。」
由香ちゃんを後部座席、私を助手席に乗せて、車は由香ちゃんの家に向けて走り出した。
愛翔から『今日は横浜での商談が、15時には終わったから、迎えに行く』というメッセージに気付いたのは、帰り支度をしている時だった。
「片瀬さん。今日、飲みに行かない?」
向かい席の山田さんに声をかけられた。
「すみません。約束があるので。」
「片瀬さん、デートですか?」
すかさず由香ちゃんが聞いてくる。
「そうよ。由香ちゃんは?」
「私は、週末に雄太さんとおでかけの予定ですぅ。」
「雄太くんの事で、何か気になる事があれば、協力するからね。」
「あれ?私と雄太さんが付き合うと将来、片瀬さんが義姉になる可能性があるって事?」
「そうね…そうなったら、嬉しいけど、雄太くんはまだ学生だから、そうなるといいねくらいに考えておこうね。」
「はいっ、お義姉さまっ」
由香ちゃんとふざけて、そのまま一緒に更衣室に向かう。
山田さんには、断った理由をしつこく聞かれるといつまでも帰れなくなるから。
更衣室で軽くメイクを直し、エレベーターで降りると先週の金曜日にこーたくんが、いたのと同じ場所にスーツ姿の愛翔が座っていた。
違うのは、うちの会社はもちろん、同じビルに入る会社の女の子たちが遠巻きに愛翔を見ている。
うちの受付嬢で、由香ちゃんの友達の中原さんがまだ残っていたので、受付カウンターに2人で寄ってみた。
「中原さん、お疲れ様です。」
「中原、まだ上がらないの?」
「お疲れ様です。片瀬さんと田中はもう上がりですか。」
「えぇ。この状態ってずっと?」
「はい、あちらの方が待ち合わせらしく座ったのが15分ほど前で、そこから遠巻きに見ている女子が、この時間のせいで増殖中です。
私も誰を待っているのか観察しているので、ホントは上がれるのにここにいますっ」
この状態で愛翔に近寄る勇気は、私にはない。
愛翔を見ないようにスマホを取り出してLINEの画面を開いた。
『仕事、終わったけどエントランスで愛翔が注目浴びてて、近寄るのはパスしたい。
そのまま外に出て、歩き出して。
後ろからついて行くから。』
『了解、確かにさっきから何人か話しかけてきたし、視線も…
近くのコインパーキングに車、停めてあるからついて来て』
すぐに送ったOKスタンプを見た愛翔は、立ち上がるとこちらを見ずに歩き出した。
「あら?あの人、待ち人来なかったのかしら?」
中原さんは、首を傾げているが私たちは素知らぬ振りで「お先に」と声をかけて移動する。
由香ちゃんがいるおかげで、前を歩く愛翔を追いかけているようには見えない。
二本先の路地で曲がると愛翔が、振り返った。
「2人ともお疲れ様。由香ちゃんだったよね?そのまま帰るなら送っていくよ。」
「いいんですか?」
「今日は車だからね。」
すぐ前のコインパーキングを指差して愛翔はそう言った。
黒いLのマークの車が愛翔の車のようだけど、いつ買ったんだろう。
私の疑問に気付いたらしい愛翔が答えてくれた。
「仕事で移動するのに使うから、会社負担の社用車。仕事で長距離乗る以外のガソリンは自分持ちだけどね。」
由香ちゃんを後部座席、私を助手席に乗せて、車は由香ちゃんの家に向けて走り出した。
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