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気がついた時には、もう外は明るくなっていた。泣き疲れて眠ってしまった私は、ディランが運んでくれたのか、ベッドで眠っていたが、瞼が腫れぼったい。
なんとなくディランに顔を合わせにくいので、部屋に来た侍女に目を冷やすタオルを頼んだ。
それでもディランの姿が見えないのは、気になる。
「ディランは?」
「今日は、御用があるそうでお出かけです。」
「そう。」
合わす顔がないくせにいなければ不安になるなんて…自分が情けない。
自己嫌悪、最悪だ。
「ディランが帰ってきたら、今度のお茶会の打ち合わせしたいから、部屋に来るように伝えてね。」
ディランが部屋に来たのはもう外が暗くなる頃だった。
「お嬢様、お呼びですか。」
「ディラン、昨日はごめんなさい。」
「何のことでしょうか。昨日、疲れて夕食を召し上がらずに眠ってしまった事ですか。」
なかったことのようにしてくれることに嬉しさとバツの悪さを感じた。
「ディラン、後でお茶会のレクチャー頼めるかしら。」
「かしこまりました。」
事務的に話を済ませて、出て行くディランに対する自分の感情に何という名前が付くのか、知りたいような知りたくないような…
王宮でのお茶会のためにディランは私にいつもよりシンプルな青いドレスを用意してくれた。瞳の色と同系色だがグラデーションが入っていて地味な感じにはならない。
「ディラン、シンプルだけどおかしくない?」
「王太子の婚約者候補は、お嬢様だけじゃないから敢えて派手にしない方が目立つし好感を持つと思う。」
「そういうものなんだ。」
「お嬢様、言葉遣い。」
「そういうものなのですね。」
「お茶会には、王太子や友人の貴族の男性が何人か来ます。女性は婚約者候補の4人。お嬢様、マーベル公爵令嬢エリシア、タイレーン侯爵令嬢アグネス、グルシア侯爵令嬢ミーア。それから友人貴族の婚約者が何人か。特に候補の3人は目立つ派手なドレスを着ていると思います。だからこそシンプルだが上質で染色技術の粋を極めたドレスは印象に残ります。」
ディランの話に納得する。うちの執事はなんでも頼りになる。たまに怖いけど。
「ただ、シンプルで動きやすいからと走ったり木登りするような事は、何があってもしないように。」
「ディラン、さすがにそれは…」
「お嬢様ですから、そこは忘れてやりかねないと思い、言わせていただきました。」
「はい、気をつけます。」
「お嬢様、他の令嬢といままで交流がなかったので、何かされるかもしれませんが、やり返したり、倍返ししたりもダメです。」
「えー。泣き寝入りは好きじゃない。」
「その場でやり返すと逆にこちらが悪者扱いされることが多いです。高位貴族の集まりなんて足の引っ張り合いですから。後で分からないように私が如何様にでもいたしますので、やったのが誰か顔と名前をしっかりと覚えてくれば充分です。」
その方が怖いぞ。ディラン。
「ちなみに候補の方の年齢は?」
「王太子がお嬢様より1つ上なので、マーベル公爵令嬢エリシアがお嬢様と同じ。タイレーン侯爵令嬢アグネスが1つ上。グルシア侯爵令嬢ミーアもお嬢様と同じです。お嬢様が学園に入学すると絶対に会う相手ばかりなので、その点でも気をつける必要があります。」
「つまり今日のお茶会で失敗すると学園生活に支障があるってこと?」
「はい、3年通うのは辛いかもしれませんね。」
「なんか面倒ね。王太子様には断って、他の人と婚約した方が楽かな。」
「とりあえずお茶会に行って王都の貴族がどんなか体験してみてください。」
「はい…ガンバリマス。」
なんとなくディランに顔を合わせにくいので、部屋に来た侍女に目を冷やすタオルを頼んだ。
それでもディランの姿が見えないのは、気になる。
「ディランは?」
「今日は、御用があるそうでお出かけです。」
「そう。」
合わす顔がないくせにいなければ不安になるなんて…自分が情けない。
自己嫌悪、最悪だ。
「ディランが帰ってきたら、今度のお茶会の打ち合わせしたいから、部屋に来るように伝えてね。」
ディランが部屋に来たのはもう外が暗くなる頃だった。
「お嬢様、お呼びですか。」
「ディラン、昨日はごめんなさい。」
「何のことでしょうか。昨日、疲れて夕食を召し上がらずに眠ってしまった事ですか。」
なかったことのようにしてくれることに嬉しさとバツの悪さを感じた。
「ディラン、後でお茶会のレクチャー頼めるかしら。」
「かしこまりました。」
事務的に話を済ませて、出て行くディランに対する自分の感情に何という名前が付くのか、知りたいような知りたくないような…
王宮でのお茶会のためにディランは私にいつもよりシンプルな青いドレスを用意してくれた。瞳の色と同系色だがグラデーションが入っていて地味な感じにはならない。
「ディラン、シンプルだけどおかしくない?」
「王太子の婚約者候補は、お嬢様だけじゃないから敢えて派手にしない方が目立つし好感を持つと思う。」
「そういうものなんだ。」
「お嬢様、言葉遣い。」
「そういうものなのですね。」
「お茶会には、王太子や友人の貴族の男性が何人か来ます。女性は婚約者候補の4人。お嬢様、マーベル公爵令嬢エリシア、タイレーン侯爵令嬢アグネス、グルシア侯爵令嬢ミーア。それから友人貴族の婚約者が何人か。特に候補の3人は目立つ派手なドレスを着ていると思います。だからこそシンプルだが上質で染色技術の粋を極めたドレスは印象に残ります。」
ディランの話に納得する。うちの執事はなんでも頼りになる。たまに怖いけど。
「ただ、シンプルで動きやすいからと走ったり木登りするような事は、何があってもしないように。」
「ディラン、さすがにそれは…」
「お嬢様ですから、そこは忘れてやりかねないと思い、言わせていただきました。」
「はい、気をつけます。」
「お嬢様、他の令嬢といままで交流がなかったので、何かされるかもしれませんが、やり返したり、倍返ししたりもダメです。」
「えー。泣き寝入りは好きじゃない。」
「その場でやり返すと逆にこちらが悪者扱いされることが多いです。高位貴族の集まりなんて足の引っ張り合いですから。後で分からないように私が如何様にでもいたしますので、やったのが誰か顔と名前をしっかりと覚えてくれば充分です。」
その方が怖いぞ。ディラン。
「ちなみに候補の方の年齢は?」
「王太子がお嬢様より1つ上なので、マーベル公爵令嬢エリシアがお嬢様と同じ。タイレーン侯爵令嬢アグネスが1つ上。グルシア侯爵令嬢ミーアもお嬢様と同じです。お嬢様が学園に入学すると絶対に会う相手ばかりなので、その点でも気をつける必要があります。」
「つまり今日のお茶会で失敗すると学園生活に支障があるってこと?」
「はい、3年通うのは辛いかもしれませんね。」
「なんか面倒ね。王太子様には断って、他の人と婚約した方が楽かな。」
「とりあえずお茶会に行って王都の貴族がどんなか体験してみてください。」
「はい…ガンバリマス。」
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