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 理奈がなかなか寝なくて、夕ご飯は9時過ぎになってしまった。

「遅くなってごめんね。先に食べていても良かったのに。」

「一緒に食べた方が美味しいし、飲みながら適当につまんでたから。」

 食事を始めても、いつも間にいる理奈がいないので、会話の間がたまに空いてしまう。

「なんかさ、理奈がいて家族なんだなって思った。」

「やだ、なんだか娘を嫁に出した後の夫婦みたい。」

「だな、俺たち婚約とか新婚とかすっ飛ばしちゃったからな。
奥様がご希望なら、甘い時間をご用意しますが?」

「いいわよ、別に…」

 思わず赤くなった顔をごまかすように、そっけなく返す。
入籍までキスしかしなかったのが、嘘のように理は理奈が寝ると求めてくるから、シていないわけじゃない。
ただ、理奈の気配を気にしながらなので、集中できてないだけなのだ。

 甘い時間なんて、ご用意されたら、自分がどうなるか?自信がないのだ。

「冗談はさておき、真面目な話。」

『冗談だったの?』と言おうとして理が真面目な顔をしているので、態度を改める。

「異動が決まったんだ。今日は、それで本社に行って話を聞いて来た。正式辞令は、1月1日だけど引継ぎあるから、あと2週間。12月の半ばから本社勤務になりそうなんだ。」

「クリスマス商戦の一番忙しい時に有能な課長がいなくなるんじゃ、第一営業部は痛いね。」

「あいつら鍛えたから、充分やれるよ。」

「それで配属は?」

「総務部長。親父が引退して、兄貴が社長になれば、専務だからその下準備ってところだな。
総務部長が定年退職する後なんだ。
お袋とあずが、いるから企画は無いけど営業部だと思ってたから、驚いた。」

「理なら、こなせるでしょうけどね。」

「それで、ギリギリまではクラウンの方で、その後は総務部でしばらく忙しくなるから、明日から夕飯は家で食えなさそうなんだ。
 弁当を持って行きたいんだけど、理奈のが冬休みでなくなっても作ってくれないか?」

「もちろんよ。身体が資本なんだから、しっかり食事はフォローさせて。」

 結婚式の準備と理の異動、私も仕事が今、忙しい。
お互い、大丈夫なんだろうかと心配になるが、どれも待ってくれない。 

 翌日から理の帰りは12時過ぎ。朝は家で食べるけど、お弁当が出来次第、出勤という超ハードな日々が始まった。

「パパ、今日も理奈とお話しないで、行っちゃったね。」

「パパ、とってもお仕事が忙しいんだって。理奈の写真見て、頑張っているから、お手紙書いておこうか?」

「うん。幼稚園から帰ったら書くね。」

「ママが便箋と封筒を買って来るから。」

 その日の夜、私には見せてくれなかった理奈の手紙を夜中に帰宅した。理が読んで喜んでいた。

『パパへ
 きょうは、ようちえんでクリスマスのげきのれんしゅうやったよ。
りなは、てんしだよ。
げきをみにきてね。  りな』

「理奈のクリスマス会は、絶対見に行くから。日にち分かったら教えて。」

「再来週の土曜日の午前中だけど。」

「明日、日程調整して来る。理奈には、万が一行けないと困るからギリギリまで黙っていて。」

 理のことだから、絶対むりくりして行くんだろうな。

「あず、正月休みに結婚式の準備するから、それまで待ってて。」

「理、無理なら私1人で準備するから。」

「大丈夫。あずに1人で何かさせるなんて、俺が嫌だから。」

 怒涛の2週間の最後に理奈の天使を満喫した理は、理奈の写真を撮りまくり、天使アルバムを作って癒されていた。
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