10 / 46
9
しおりを挟む
「ちょっといいかしら?」
授業が終わり、寮に戻ろうとしていた私にマリナが声をかけてきた。いつもなら、くっついているアーロンの姿はなくひとりらしい。
「何か、御用ですか。聖女様。」
「アラン様のことよ。いい加減、開放してあげて。」
「は?」
いけない、いけない。
びっくりして、つい令嬢にあるまじき声を出してしまった。
「アラン様は、婚約者のあなたに気を遣ってあなたのわがままに耐えて辛そうなのよ。親まで使って、圧力かけているそうじゃない。」
だいぶ状況把握に齟齬を生じていませんか?
私の事をわがままと言うなら、婚約を復活させない、ただ一点。
辛そうなのは、自分の主張が公爵家に通らないからで、幼い頃の自分のせいだろうが。
でも、マリナに言ってやる筋合いはないしなぁ。
「あなたには関係ないことじゃなくて。」
面倒になって、つい言い方がきつくなってしまった。
メラニーは、私が言い返せる時は黙って後ろにいてくれる。さすがに何も対応できないのでは、ただのお人形になってしまうから。
マリナは怒りに顔を赤らめている。
「私がアラン様をあなたの魔の手から助けるわ。私は聖女、あなたは悪役令嬢ですもの。」
やはり自分がヒロインと自覚がある、ゲームを知っている転生者か召喚者なのね。
「何を言いたいのか、わからないから失礼するわ。」
平静を装い、マリナの前を去る。かなり緊張していたようで、握り締めた手には爪の跡がついていた。
私を巻き込んでいるのは、アラン王子だし、マリナがアラン王子をつなぎとめる魅力を持ってくれれば、苦労はないのに…
翌日、今度はアーロンを連れてマリナがやって来た。
「エミルフェシア嬢、マリナに聞いた。アラン殿下を自分のものにするためにマリナに酷いことを言ったそうだな。」
「アーロン様、私はあなた方を構うつもりも構われるつもりもありません。聖女様は何か勘違いをされているんです。」
「口を出すなと言うのだな。マリナは傷ついているのに、勘違いと誤魔化して謝らないつもりか?」
人の話を聞けない神官って、どうなんだろう。将来、神官長がこの人じゃ先行き不安だわ。
「とにかく、私はアラン殿下と婚約していないのだから、巻き込まないでいただきたいですわ。」
「そんなばかな…アラン殿下はあなたと結婚するつもりだと。だが、思うようにならないと言っていたぞ。結婚したくないと言う意味じゃないのか。」
「ですから、殿下が婚約を打診して私の父に却下されているのです。思うようにならないとは、そういう事で、私が結婚したくないのです。」
「嘘だわ。エミルフェシアさん…そんな…」
「アラン殿下にお聞きになってみたら、どうですか。」
「何をしている?」
振り返るとそこにはアラン王子がいた。
「エイミー。どうかしたのか?」
「アラン様!エミルフェシアさんが、アラン殿下と婚約していないって嘘をついて、アラン様に迷惑をかけていることや私への暴言を誤魔化しているんです。」
「マリナ、私は迷惑などかけられていない。エイミーとは、近いうちに婚約の正式発表をするつもりだが、まだ公にしていないから、婚約はしていないと言ったんだろう。」
私がいつ婚約を了承したんだろう?陛下だって、お父様がうんと言わなければ、動けないはずなのに…
どこまでもお花畑の王子にどっと疲れが増す。やはり、学年が違うお兄様だとこういう隙間時間には助けを望めないのね。
メラニーも相手がアラン王子だと対応に困っているようで、ますます壁に同化している。
本当に危険ならすぐ助けてくれるだろうけれど、対処できない私が未熟なのよね。
「アラン殿下、私はあなたと婚約する気はございません。聖女様と仲良くされたらどうですか。」
「エイミー、やきもちを妬いてくれるんだね。マリナは側妃にしようと思っていたが、エイミーが嫌ならしないよ。」
「失礼します。」
本当にどこまでも平行線で、ぐったりと疲れたので、夕食の後、そのまま熟睡してしまい、翌朝慌てて、レポートを書くはめになってしまったのだった。
授業が終わり、寮に戻ろうとしていた私にマリナが声をかけてきた。いつもなら、くっついているアーロンの姿はなくひとりらしい。
「何か、御用ですか。聖女様。」
「アラン様のことよ。いい加減、開放してあげて。」
「は?」
いけない、いけない。
びっくりして、つい令嬢にあるまじき声を出してしまった。
「アラン様は、婚約者のあなたに気を遣ってあなたのわがままに耐えて辛そうなのよ。親まで使って、圧力かけているそうじゃない。」
だいぶ状況把握に齟齬を生じていませんか?
私の事をわがままと言うなら、婚約を復活させない、ただ一点。
辛そうなのは、自分の主張が公爵家に通らないからで、幼い頃の自分のせいだろうが。
でも、マリナに言ってやる筋合いはないしなぁ。
「あなたには関係ないことじゃなくて。」
面倒になって、つい言い方がきつくなってしまった。
メラニーは、私が言い返せる時は黙って後ろにいてくれる。さすがに何も対応できないのでは、ただのお人形になってしまうから。
マリナは怒りに顔を赤らめている。
「私がアラン様をあなたの魔の手から助けるわ。私は聖女、あなたは悪役令嬢ですもの。」
やはり自分がヒロインと自覚がある、ゲームを知っている転生者か召喚者なのね。
「何を言いたいのか、わからないから失礼するわ。」
平静を装い、マリナの前を去る。かなり緊張していたようで、握り締めた手には爪の跡がついていた。
私を巻き込んでいるのは、アラン王子だし、マリナがアラン王子をつなぎとめる魅力を持ってくれれば、苦労はないのに…
翌日、今度はアーロンを連れてマリナがやって来た。
「エミルフェシア嬢、マリナに聞いた。アラン殿下を自分のものにするためにマリナに酷いことを言ったそうだな。」
「アーロン様、私はあなた方を構うつもりも構われるつもりもありません。聖女様は何か勘違いをされているんです。」
「口を出すなと言うのだな。マリナは傷ついているのに、勘違いと誤魔化して謝らないつもりか?」
人の話を聞けない神官って、どうなんだろう。将来、神官長がこの人じゃ先行き不安だわ。
「とにかく、私はアラン殿下と婚約していないのだから、巻き込まないでいただきたいですわ。」
「そんなばかな…アラン殿下はあなたと結婚するつもりだと。だが、思うようにならないと言っていたぞ。結婚したくないと言う意味じゃないのか。」
「ですから、殿下が婚約を打診して私の父に却下されているのです。思うようにならないとは、そういう事で、私が結婚したくないのです。」
「嘘だわ。エミルフェシアさん…そんな…」
「アラン殿下にお聞きになってみたら、どうですか。」
「何をしている?」
振り返るとそこにはアラン王子がいた。
「エイミー。どうかしたのか?」
「アラン様!エミルフェシアさんが、アラン殿下と婚約していないって嘘をついて、アラン様に迷惑をかけていることや私への暴言を誤魔化しているんです。」
「マリナ、私は迷惑などかけられていない。エイミーとは、近いうちに婚約の正式発表をするつもりだが、まだ公にしていないから、婚約はしていないと言ったんだろう。」
私がいつ婚約を了承したんだろう?陛下だって、お父様がうんと言わなければ、動けないはずなのに…
どこまでもお花畑の王子にどっと疲れが増す。やはり、学年が違うお兄様だとこういう隙間時間には助けを望めないのね。
メラニーも相手がアラン王子だと対応に困っているようで、ますます壁に同化している。
本当に危険ならすぐ助けてくれるだろうけれど、対処できない私が未熟なのよね。
「アラン殿下、私はあなたと婚約する気はございません。聖女様と仲良くされたらどうですか。」
「エイミー、やきもちを妬いてくれるんだね。マリナは側妃にしようと思っていたが、エイミーが嫌ならしないよ。」
「失礼します。」
本当にどこまでも平行線で、ぐったりと疲れたので、夕食の後、そのまま熟睡してしまい、翌朝慌てて、レポートを書くはめになってしまったのだった。
11
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!
彩世幻夜
恋愛
あれ、もしかしてここ、乙女ゲーの世界?
私ヒロイン?
いや、むしろここ二次小説の世界じゃない?
私、ざまぁされる悪役ヒロインじゃ……!
いやいや、冗談じゃないよ!
攻略対象はクズ男ばかりだし、悪役令嬢達とは親友になっちゃったし……、
ここは仲良くエスケープしちゃいましょう!
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?
もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。
王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト
悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
聖なる幼女のお仕事、それは…
咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。
村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。
それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。
この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。
【完結】目覚めたらギロチンで処刑された悪役令嬢の中にいました
桃月とと
恋愛
娼婦のミケーラは流行り病で死んでしまう。
(あーあ。贅沢な生活してみたかったな……)
そんな最期の想いが何をどうして伝わったのか、暗闇の中に現れたのは、王都で話題になっていた悪女レティシア。
そこで提案されたのは、レティシアとして贅沢な生活が送れる代わりに、彼女を陥れた王太子ライルと聖女パミラへの復讐することだった。
「復讐って、どうやって?」
「やり方は任せるわ」
「丸投げ!?」
「代わりにもう一度生き返って贅沢な暮らしが出来るわよ?」
と言うわけで、ミケーラは死んだはずのレティシアとして生き直すことになった。
しかし復讐と言われても、ミケーラに作戦など何もない。
流されるままレティシアとして生活を送るが、周りが勝手に大騒ぎをしてどんどん復讐は進んでいく。
「そりゃあ落ちた首がくっついたら皆ビックリするわよね」
これはミケーラがただレティシアとして生きただけで勝手に復讐が完了した話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる