王妃候補は、留守番中

里中一叶

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予定通り2日後、アイリス様たちと再会を約束し、公爵家の馬車で王都に出発した。
3年振りの王都は何も変わらないように思える。
公爵邸に寄り、挨拶と着替えをして今度は王宮から迎えの馬車に乗って移動する。
今回は、あくまで仕事なのだが滞在は王宮内になる。そこから直轄領までは馬車で2時間ほどの距離のため必要なときに往復することになる。
王宮に着き、通された部屋は1ヶ月過ごしたあの部屋だった。
もちろん客人扱いなので、王宮の方で侍女を付けてくれたのだが…

「王太子殿下は本日お忙しくお会い出来ません。」

この侍女は私が何をしにここへ来ているのか理解していないらしく王太子殿下への面会を頼んでも部屋を出ることなくそう言って取りつく島もない。

仕方がないので、資料を見ながら視察の事前準備を始めた。直轄領は領主の代わりに事務官が何人か配属されている以外は、そう変わらないので、規模と子どもの人数で大体のイメージをつかめる。
うちより広いため学校への通学時間を考えると二、三ヶ所に分けて読み書きを教えて、それ以上の学習は、集約するか専門ごとに場所を分けた方が良さそうだ。
そんなことを考えていると向こうからやって来た。

「セリーナ様、王太子殿下がお越しです。」
「お茶をお願いします。そのあとは部屋から出ていてください。」
「な、なんてことを…これだから嫁きおくれは…」

侍女は1人でぶつぶつ言っているが、あくまでも仕事だし多分、殿下は側近を連れて来る。あまり私に良い印象のないこの侍女にこれからやろうとしている事業の話を他所で広めて欲しくないだけだ。
お茶を出して渋々侍女が部屋を出ると王太子殿下がこちらに向き直る。

「セリーナ嬢、待たせた。」
「王太子殿下、お久しぶりでございます。」
「これは、ティー ダ公爵家のジョシュア、私の側近で私が動けない時は代わりに対応する。」
「ジョシュア様、モルトン伯爵令嬢セリーナです。よろしくお願いいたします。」
「セリーナ嬢、殿下から聞いた時はまさか令嬢が事業のアドバイザーをやるなんてと思っていましたが、本当なんですね。」
「我が家の領地でやっていることを説明させていただいているだけで、アドバイスなんてできるかどうかわかりませんが、殿下に請われて、図々しく王宮にお邪魔させていただいているだけです。」

ジョシュア様はアリア様のお兄様
で殿下とは幼い頃から一緒にいる友人で側近。それもあってアリア様は殿下の妃候補から最終的に外れたらしい。権力が集中することは良くないと言う政治的理由だ。結局アリア様は、2年前に隣国の王子に政略結婚で嫁いでいる。

「セリーナ嬢、まずは侍女を変えようか?」
「私は数日の滞在ですから、別に構いません。こんな事で殿下の手を煩わせるわけには。」
「どうやら、面会の依頼を通さないと聞いた。こちらが頼んで来てもらっているのだから時間を無駄にするような対応は、あなたに失礼だと思う。ジョシュア、そっちの対応を頼む。」
「かしこまりました。」

ジョシュア様が出て行って2人きりになってしまった。
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