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弟
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その翌日からしばらくエドを見かける事がないだけでなく、皇帝陛下の御渡りも来れない時に届けられるカードも途絶えている。
心配したリリーが、情報収集して来たところによると軍事面で大規模な行動があり、皇帝陛下を筆頭に主だった兵士が留守にしているらしい。
それなら陛下の御渡りがなくても仕方ないとリリーたちは納得し、アナスタシアは、エドに想いを告げてしまい陛下にどんな顔をすればいいのか悩んでいたので、先延ばし出来ることにホッとしていた。
皇帝陛下に会わなくなって1ヶ月ほど経った頃、突然皇帝事務官がアナスタシアを訪ねて来た。
後宮内は、基本的に男子は皇帝以外立入不可だが、先触れと皇帝からの手紙を届ける事務官は、入ることが出来る。もちろん先触れも事務官も普通は、侍女に渡すのでアナスタシアが直接事務官に会うのは初めてだ。
手紙には、確認したい事があるので、至急皇帝執務室へ来るようにとだけ書いてある。まさかエドの事じゃないだろうかと心配しながら、アナスタシアは皇帝執務室へ事務官と共に向かう。そう言えば、普通宮から出れないはずだと気付いたのは、事務官が執務室のドアをノックしたあたりだった。
「陛下、アナスタシア様をお連れしました。」
執務室内には、久しぶりに会ったせいか少し髪が伸びて、雰囲気が微妙に違う皇帝陛下とクレア王国で会って以来のオーウェン将軍がいた。
「お呼びと聞き、まかり越しました。」
最上級の礼をして、直ると皇帝陛下から思ってもみなかった事を聞かされた。
「グレゴリーが見つかり、一緒に抵抗して匿っていた貴族と捕まった。顔を確認して欲しい。」
「お義母様は、一緒ではなかったですか?」
「元王妃は、捕まりたくなかったのか毒を飲んで自害したらしい。」
「そうですか…おそらく一緒にいたのは、お義母様の親族だと思います。」
「ルミノフ伯か。」
「はい。それでグレゴリーは、どうなるのですか。」
「普通なら処刑だな。アナスタシアは、どうしたい?寵姫のお願いを聞いてやらないこともない。」
「本人が後悔していて、これからどうすべきかを考えているか聞いてみたいです。」
アナスタシアが皇帝陛下と一緒に移動した部屋は、貴人用の牢屋らしく窓には鉄格子がはめられているが、室内は普通に調度品が備えてあって、中央のソファーに踏ん反り返っている太めの青年がいた。たまにしか顔を見ることはなかったが、間違いなく異母弟グレゴリーだった。
「誰かと思えば、姉上ですか。せっかく女王にしてやったのに、すぐにカリアスに靡いて…恥ずかしいにも程がある。」
「前クレア王。私の妃に暴言を吐いて許されると思っているのか?」
何も変わらないグレゴリーに言い返すことが出来なかったアナスタシアの代わりに皇帝陛下は、前に出てくれた。
「グレゴリー、これからどうするつもりなの?」
「どうするも何も、姉上が寵姫ならクレア王国は存続してもらって、私が王に戻ればいいと思うが。」
この異母弟は、何も変わらない。アナスタシアは残念に思いながら、ため息をついた。
「陛下、後はお任せします。私は、部屋に戻ります。」
グレゴリーにもう会うこともないだろうと思いながらも振り返る気にはなれなかった。
心配したリリーが、情報収集して来たところによると軍事面で大規模な行動があり、皇帝陛下を筆頭に主だった兵士が留守にしているらしい。
それなら陛下の御渡りがなくても仕方ないとリリーたちは納得し、アナスタシアは、エドに想いを告げてしまい陛下にどんな顔をすればいいのか悩んでいたので、先延ばし出来ることにホッとしていた。
皇帝陛下に会わなくなって1ヶ月ほど経った頃、突然皇帝事務官がアナスタシアを訪ねて来た。
後宮内は、基本的に男子は皇帝以外立入不可だが、先触れと皇帝からの手紙を届ける事務官は、入ることが出来る。もちろん先触れも事務官も普通は、侍女に渡すのでアナスタシアが直接事務官に会うのは初めてだ。
手紙には、確認したい事があるので、至急皇帝執務室へ来るようにとだけ書いてある。まさかエドの事じゃないだろうかと心配しながら、アナスタシアは皇帝執務室へ事務官と共に向かう。そう言えば、普通宮から出れないはずだと気付いたのは、事務官が執務室のドアをノックしたあたりだった。
「陛下、アナスタシア様をお連れしました。」
執務室内には、久しぶりに会ったせいか少し髪が伸びて、雰囲気が微妙に違う皇帝陛下とクレア王国で会って以来のオーウェン将軍がいた。
「お呼びと聞き、まかり越しました。」
最上級の礼をして、直ると皇帝陛下から思ってもみなかった事を聞かされた。
「グレゴリーが見つかり、一緒に抵抗して匿っていた貴族と捕まった。顔を確認して欲しい。」
「お義母様は、一緒ではなかったですか?」
「元王妃は、捕まりたくなかったのか毒を飲んで自害したらしい。」
「そうですか…おそらく一緒にいたのは、お義母様の親族だと思います。」
「ルミノフ伯か。」
「はい。それでグレゴリーは、どうなるのですか。」
「普通なら処刑だな。アナスタシアは、どうしたい?寵姫のお願いを聞いてやらないこともない。」
「本人が後悔していて、これからどうすべきかを考えているか聞いてみたいです。」
アナスタシアが皇帝陛下と一緒に移動した部屋は、貴人用の牢屋らしく窓には鉄格子がはめられているが、室内は普通に調度品が備えてあって、中央のソファーに踏ん反り返っている太めの青年がいた。たまにしか顔を見ることはなかったが、間違いなく異母弟グレゴリーだった。
「誰かと思えば、姉上ですか。せっかく女王にしてやったのに、すぐにカリアスに靡いて…恥ずかしいにも程がある。」
「前クレア王。私の妃に暴言を吐いて許されると思っているのか?」
何も変わらないグレゴリーに言い返すことが出来なかったアナスタシアの代わりに皇帝陛下は、前に出てくれた。
「グレゴリー、これからどうするつもりなの?」
「どうするも何も、姉上が寵姫ならクレア王国は存続してもらって、私が王に戻ればいいと思うが。」
この異母弟は、何も変わらない。アナスタシアは残念に思いながら、ため息をついた。
「陛下、後はお任せします。私は、部屋に戻ります。」
グレゴリーにもう会うこともないだろうと思いながらも振り返る気にはなれなかった。
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