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夜伽

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皇帝陛下が、忙しいらしく対面のないまま夕餉が済み、辺りが暗くなってくるとアナスタシアは、リリーたちによって風呂に入れられ、磨き上げられて夜伽用という薄布でできた夜着に着替えさせられる。
身体のラインが思い切り出てしまう服に抵抗したが、裸のままと究極の選択をさせられて夜着を仕方なく選んだ。

「それでは私たちはこれで失礼いたします。明日朝には参りますので。陛下が満足され、枕元に花を置いて行かれれば側妃となります。」

リリーたちが下がってしまうとベッドの上に1人残されてしまう。いつ来るのかわからない皇帝を待ち、色々と考えているうちにアナスタシアは、意識を手放していた。

その夜、随分遅い時間になってから部屋に入ってきた皇帝は、ベッドの上で眠ってしまったアナスタシアを見て、苦笑いをすると抱き上げて、横に寝かせると布団を掛けて枕元に花を一輪置いて去って行ったが、それを見ている者は誰もいなかった。

翌朝、リリーたちが朝の挨拶に来た時にきちんと布団の中にいる自分を不思議に思っていたアナスタシアは、レインの一言で失態に気付いた。

「陛下からのお花が枕元にありました。おめでとうございます。これでアナスタシア様は正式な側妃となられました。」

アナスタシアが寝てから来た皇帝は、ねむりこけていた自分にあきれただろうに布団を掛け、夜伽をした証を置いて行ったのだ、さすがにリリーたちにそんな事は言えず、黙り込むしかなかった。

そう言えば、この部屋の前の住人たちは、側妃と認められずに兵士へ下げ渡されたり、夜のお勤めがなかったとリリーが言っていたような気がするが、自分は役目を果たしてないのに側妃にするとは、何が違うのかわからない。

「…てよろしいですか。」

考え事をしていてリリーが何を聞いたのか分からず、アナスタシアが返事ができないでいるとリリーは勝手に理解したように笑った。

「陛下の事を思い出されているのですね。余韻に浸りたいとは思いますが、そろそろお支度をいたしましょう。」

そう言われて、アナスタシアは自分が薄布一枚の夜着のままだったことに気付き、慌てて着替えをするのだった。


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