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カリアス帝国へ
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東塔の部屋に戻るとアナスタシアは、早速荷造りを始めた。
お母様の肩身のブレスレットは、付けていこう。ドレスは最低限であとは…と考えているとマリナとニーナが泣きそうな顔でこちらを見ている。
「姫様、私も一緒に参ります。」
マリナの意見にニーナもうなづく。
「いいえ。オーウェン将軍が身ひとつと言っていたでしょう。あなたたちが一緒にいてくれたから、私はあの場所でがんばれました。ありがとう。ユーリと3人守れる勇気をもらえただけで充分よ。故郷に帰って幸せに暮らしてね。」
「姫様…」
「たいしたものはあげれないけれど、マリナには指輪、ニーナにはこのネックレスを。ユーリには守り刀を渡してもらえるかしら。」
「姫様は、今までこの狭い部屋しか与えられずに来たのに、責任押し付けられて悔しくないのですか。」
「ニーナ、どんなことがあっても私はクレア王家の娘なの。民に責任を持つのは当たり前よ。それに同じ籠の鳥ならカリアス帝国の後宮の方が、きっとここより広いわよ。」
笑ってそう言うアナスタシアにニーナは何も言えなくなるが、マリナは、さらに言った。
「しかし噂だとカリアスの皇帝は、いままで滅した国や属国になった国の女性を何人も後宮に入れて、気に入らないと処分してしまうと聞きます。部下に下げ渡すなら、まだしもある日突然、姿が見えなくなったなんて話も。」
「すごいわね。私も嫌われないようにがんばってくるわ。」
さすがにその話にはちょっと怖くなったが、2人に心配をさせたくなくて、アナスタシアは、わざとあかるく答えるのだった。
翌朝、あまり大きくないクレア王家の紋章が入った馬車に身の回りの荷物を積み込み、マリナ、ニーナ、ユーリに見送られて住み慣れた王城を出発した。
エドは、前を馬で行く。警護の兵4人で馬車を囲み、御者もカリアス兵ということで、本当に1人きりになってしまった。
馬車は、途中野営をしながら進んでいく。アナスタシアは狭い馬車の中で寝ることになったが、外で寝る兵士に比べたらマシなので、仕方ないと諦めていた。
「毎日、野宿になってしまいすまないな。」
「皆さまに比べれば、外にテントは大変でしょう?」
「俺たちは普段から野営に慣れている。外で身体を伸ばして寝るのもいいものだよ。」
「じゃあ、私も外にしようかしら。」
「やめてくれ。警護が大変だから。」
「あら、残念。」
アナスタシアは、道中、何かと気にかけてくれるエドとは軽口が叩けるくらいに仲良くなった。
5日ほどでカリアス帝国帝都エルドの城門に到着した。
アナスタシアは、ここからは敗戦国の従属の印として、幌のない荷馬車に乗せられて街中を通り後宮に入るとエドから聞かされる。
さすがにいままでは警護の都合上、ちゃんとした馬車だったがここからは、帝国民に勝利を知らしめる存在として扱われると言うことらしい。
荷馬車に乗り込む時にエドから薄布のスカーフを渡される。
「いくらなんでも顔は隠していた方がいい。」
「ありがとうございます。」
スカーフをベールのように被り街中を好奇の目に晒されがら、アナスタシアは、後宮へ向かうのだった。
お母様の肩身のブレスレットは、付けていこう。ドレスは最低限であとは…と考えているとマリナとニーナが泣きそうな顔でこちらを見ている。
「姫様、私も一緒に参ります。」
マリナの意見にニーナもうなづく。
「いいえ。オーウェン将軍が身ひとつと言っていたでしょう。あなたたちが一緒にいてくれたから、私はあの場所でがんばれました。ありがとう。ユーリと3人守れる勇気をもらえただけで充分よ。故郷に帰って幸せに暮らしてね。」
「姫様…」
「たいしたものはあげれないけれど、マリナには指輪、ニーナにはこのネックレスを。ユーリには守り刀を渡してもらえるかしら。」
「姫様は、今までこの狭い部屋しか与えられずに来たのに、責任押し付けられて悔しくないのですか。」
「ニーナ、どんなことがあっても私はクレア王家の娘なの。民に責任を持つのは当たり前よ。それに同じ籠の鳥ならカリアス帝国の後宮の方が、きっとここより広いわよ。」
笑ってそう言うアナスタシアにニーナは何も言えなくなるが、マリナは、さらに言った。
「しかし噂だとカリアスの皇帝は、いままで滅した国や属国になった国の女性を何人も後宮に入れて、気に入らないと処分してしまうと聞きます。部下に下げ渡すなら、まだしもある日突然、姿が見えなくなったなんて話も。」
「すごいわね。私も嫌われないようにがんばってくるわ。」
さすがにその話にはちょっと怖くなったが、2人に心配をさせたくなくて、アナスタシアは、わざとあかるく答えるのだった。
翌朝、あまり大きくないクレア王家の紋章が入った馬車に身の回りの荷物を積み込み、マリナ、ニーナ、ユーリに見送られて住み慣れた王城を出発した。
エドは、前を馬で行く。警護の兵4人で馬車を囲み、御者もカリアス兵ということで、本当に1人きりになってしまった。
馬車は、途中野営をしながら進んでいく。アナスタシアは狭い馬車の中で寝ることになったが、外で寝る兵士に比べたらマシなので、仕方ないと諦めていた。
「毎日、野宿になってしまいすまないな。」
「皆さまに比べれば、外にテントは大変でしょう?」
「俺たちは普段から野営に慣れている。外で身体を伸ばして寝るのもいいものだよ。」
「じゃあ、私も外にしようかしら。」
「やめてくれ。警護が大変だから。」
「あら、残念。」
アナスタシアは、道中、何かと気にかけてくれるエドとは軽口が叩けるくらいに仲良くなった。
5日ほどでカリアス帝国帝都エルドの城門に到着した。
アナスタシアは、ここからは敗戦国の従属の印として、幌のない荷馬車に乗せられて街中を通り後宮に入るとエドから聞かされる。
さすがにいままでは警護の都合上、ちゃんとした馬車だったがここからは、帝国民に勝利を知らしめる存在として扱われると言うことらしい。
荷馬車に乗り込む時にエドから薄布のスカーフを渡される。
「いくらなんでも顔は隠していた方がいい。」
「ありがとうございます。」
スカーフをベールのように被り街中を好奇の目に晒されがら、アナスタシアは、後宮へ向かうのだった。
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