ホーリーウッド物語

里中一叶

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26.

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馬車は、田舎道をのんびり走りエイナに着いたのは、もう夕方近くだった。まずは、ガイルさんの店に行き、家に泊まれるかを確認しようと考えた。無理ならガイルさんの宿に泊めてもらえばいいし。
ガイルさんはまるで昨日も会っていたかのように接してくれる。
「家は掃除してあるから大丈夫だよ。しかしなんだな。まさかあの時のケインに会いに来ていた兄さんがエリーの結婚相手になるとはね。」
「あのときは、わたしも思ってなかったわよ。」
「エリーは、エイナに戻って来るのか?」
「ごめんなさい。クリスとフェルティに住むから片付けと墓参りをしたら戻って来れないかもしれないわ。」
「そうか、もし墓参りにエイナに来るときはうちに寄ってくれ。待ってるよ。」
「ありがとう、ガイルさん。あとで夕食を食べに来るわね。」
ガイルさんの店を出て、パン屋側から入る。ガイルさんが掃除していてくれたおかげで本当にきれいで出て行ったあの日のままだ。
二階の自分の部屋と両親の部屋はすぐ使えたので、両親の部屋にクリスを案内した。
「狭いけど、今日は、ここを使ってね。」
「リアは自分の部屋か。」
「最後だからね。別れを惜しませてね。」
王都で私として埋葬されたキャリーの骨の一部を持って来させてもらっている。父さん、母さんと一緒に埋葬させてもらうつもりだ。私が離してしまった家族をせめて同じお墓で眠らせてあげたいと思う。
パン屋と診療所は別々に売るか貸すかガイルさんに頼んでもいいかな。家具は付けたままでいいので、父さんの資料は誰かに託したい。他は…服は売って父さんの時計と母さんの髪留めだけは持って行こうと決めている。ガイルさんには、お墓の世話をしてもらっているから、お金を少しでも置いていこうと考えた。

翌日、墓参りとキャリーの埋葬をして、その足でガイルさんに家の処分の話をしに行った。
心当たりに話をつけてくれるというので、2、3日中に連絡をしてもらうように頼む。
翌日から荷物も片付け、家も売り払う算段がついたので、帰る前に隣町に出かけた。

待ち合わせの噴水前で2人とも待っていてくれた。
「アン、ポリー!久しぶり。元気だった?」
「エリー。どうしたの。あれから連絡くれないから心配していたのよ。」
「両親が亡くなって、いろいろあったの。」
「そうだったんだ。大変だったのね。」
「ところでエリー、そちらの方は?」
「わたしの婚約者のクリスよ。彼とフェルティに行くことになったから、エイナの家の片付けに来たの。」
「そうなの。フェルティだと遠いわね。寂しくなるわ。」
「手紙を書くわ。」
「エリーが幸せになるんだから、祝わないとね。」
「ありがとう。クリスは医師じゃないから、私は医療補助を辞めてしまうけれど2人は頑張ってね。」
アンとポリーとは1時間ほど一緒に過ごしてガイルさんの店に今晩は泊まる。明日、王都に戻り3日後にはフェルティに行く予定だ。
フェルティに行く前にやることはだいたい終わったので、王都に戻ったら、お父様とお母様のお墓参りにも行くつもり。

「リア。王都に戻ったら、アルフレッド様とレティシア様に君をフェルティに連れて行く報告をしたいんだ。」
「私もそのつもりだったわよ。ねえ、クリス。私が幸せのまま成長して婚約者のあなたと結婚したらどちらの国に住むはずだったの?」
「その場合は、私がホーリーウッドに婿入りだった。まだ王太子になってなかったし、弟がいるからね。いまは王太子になったから、弟はターレン公爵家に婿入りしているよ。」
「どちらでもクーと一緒なら幸せよ。」
「叔父上には、リアが近くにいる方がいいから、嬉しいと言ってたよ。」
「本当に全部終わったのね。」
「まだまだこれからだよ。リアは女王兼王太子妃、私は王太子兼王配って責任は、2つの国の国民に及ぶんだからね。」
「でもクーが一緒に頑張ってくれるんでしょ?」
「もちろん」


その後、私はとクリストファーは、3人の子に恵まれ、2つの国を行き来しながら、幸せに暮らしました。

おしまい
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