上 下
5 / 18

ウェルナート

しおりを挟む
僕はベッドに身を横たえられていた。
意識を取り戻してすぐ、あの勇者の青年が頭を垂れる。
「俺は地球から召還された勇者です。」
青年が語る。
名前なんかも名乗ってた気がしたけど、覚えるつもりなんてないからどうでもいい。
「聖母様、俺は勇者でありたいだけです。真実、あなたの洗脳も解いてあげたい。」
「もう諦めろ勇者。他に洗脳を解くアイテムなりが必要なのだろう。」
後から入って来た男に勇者は下がらせられる。
そうだ、この男も洗脳なんて吹き込んでる当人だ。
「さて聖母よ。」
ギシリと僕が寝かされてるベッドの音が鳴る。 
聖母聖母言ってるんだからそういう事だとは思ってたけど。
自害は絶対に駄目…自分に言い聞かせた。
結界を張るには相手との距離が近過ぎる。
どうしたら……もういいか。
繁栄でも何でも使えばいい。
「身体の力を抜いたという事は、俺に身を委ねるのだな。」
男が僕の頬に手を掛ける。
繁殖したいならキスなんて必要ないのに。
男の唇が僅か数センチに差し掛かった時…。
僕の身体は転移させられた。
「え……え?」
僕の身体をしっかり抱き締めているのは、間違いなく…。
というか。
「ウェルナート様っ!?」
姿はアレク様そっくりで、でもカラーリングはブルーで…。
「待たせて悪かった。後で全部説明する。」
涙が止まらない。
もうぼろぼろと塞き止められないほどに。
「まずは奴らをどうにかするぞ。リシェは俺とリシェを結界で常に覆ってくれ。」
「わかった!」
ウェルナート様は僕の涙を一筋だけ指で拭うと、それにチュッと口付けた。
終わったら、残りを拭ってくれるつもりだと思う。
僕は言われた通り結界を張る。
常に攻撃上昇などのバフを与え続ける祝福も掛け続けて。
ウェルナート様は連続転移をして攻撃の隙を伺いながら、勇者と男の攻撃を避け続ける。
僕が掛けている結界に変化が無いということは、ウェルナート様が全部避けてるということで…。
「貰った!」
男の攻撃範囲から出て且つ勇者に攻撃を当てる。
ウェルナート様の魔法が勇者の剣を打ち砕いた。
「勇者よ撤退を!」
分が悪いと悟った男が僕を拐おうと手を伸ばしてくるけど、フルパワーで張った僕の結界は何者をも通さない。
あの剣も無いから平気だし。
ウェルナート様は姿をアレク様に変えていた。
アレク様の神力が戻って来るのを確かに感じる。
「逃がさん!」
アレク様が超高速の闇弾を男に喰らわす。
男の回復が間に合わず、塵微塵になる。
神は核が壊れない限り肉体は存在し続ける。
アレク様は敢えて男の核を壊さず、連弾を撃ち込み続け、ボロボロになり手足の部分を動かす事が出来ない男が無抵抗に立ち尽くすしかなくなった時点で、何かの箱で封印してしまった。
「勝手に転移させられたのと地球出身のよしみだ。お前は今回だけ逃がしてやる。」
アレク様は視線を勇者に移し告げる。
勇者は僕をちらりと見る。
当然アレク様は常に勇者を警戒している。
僅かの後、諦めたように勇者は転移で去った。
「逃がしちゃっていいの?」
「勇者の能力が未確定だからな。今回は泳がす」
地球云々はハッタリだったらしい……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

助けの来ない状況で少年は壊れるまで嬲られる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~

金色葵
BL
創作BL Dom/Subユニバース 自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話 短編 約13,000字予定 人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

Please,Call My Name

叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。 何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。 しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。 大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。 眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。

できる執事はご主人様とヤれる執事でもある

ミクリ21 (新)
BL
執事×ご主人様。

処理中です...