4 / 7
#4 信頼がコワレル
しおりを挟む
寝てどれぐらい経っただろうか、晃は暑さで目を覚ました。
今の季節では考えられないくらい暑い。
「香織!智也!」
晃は二人を咄嗟に呼び起こしたが、そこに二人の姿は無かった。
慌てて部屋を出て二人を探すために部屋を出ると、物凄い熱気が晃を襲った。
屋敷のあちこちに火が着いていた。
熱気の正体はこれだった。
晃は香織と智也を探しながら考える。
学校の時と犯人は別で、偶々ここにも殺人鬼が?
それは流石にありえない。
香織は昨夜晃と一緒に居たから、智也か梨梨が犯人だと考えると、そこからは必死に香織を探した。
エントランスに辿り着いた晃の視界に、火だるまの人影が階段を落ちて着た。
誰だかはわからないが、シルエットから女性のものだという事だけ分かった。
「まさか…香織っ!」
香織だとは思いたくなかった。
だが、犯人が梨梨か智也だとするならば、被害者は香織である可能性が高い。
そしてこの死体は間違いなく絶命しているようだった。
遺体から火が消えない限り運び出す事も出来ない晃は、急ぎ足で外へと逃げた。
火の勢いが弱まらなければ、あの吊り橋は落ちてしまうから。
橋の中腹まで来た所で、晃はいきなり後ろからタックルでも喰らったように突き飛ばされた。
勢いよく橋の外まで転げてしまい、咄嗟に橋のロープを掴んで転落を逃れた。
宙ぶらりんの状態で顔を上げると、そこには智也の顔があった。
いや、正確には智也の頭部だけがあったのだ。
智也を殺した犯人は智也の生首を晃に投げつけた。
衝撃の余り、ついロープを掴む手を放してしまいそうになる。
改めてロープを掴み直すと、犯人は面白そうに口を歪ませて晃を眺める。
「何でなんだ……香織!」
死んだと思っていた香織の姿。
あの死体は梨梨だったのだ。
晃は香織のことを残虐な犯人と思うより、まだ遺体である方が良いと無意識に決めつけてしまっていた。
ふと、香織がほの花と仲が良かったのを、晃は今更ながらに思い出す。
「ほの花の、仇討ち、か…?」
余りの出来事に手が震えて落ちそうになるのを踏みとどまり、香織を見上げる。
きっと声も震えてしまっているだろう。
「仇?」
香織の返答は思ってもいないという表情だった。
「ふふ…ふふあーーっはははっ!違うわよ。」
盛大に笑ってみせた香織は、涙さえ浮かべて笑う。
晃はこんな香織を見た事が無い。
これは本当に香織か?
晃の頭はパンク寸前だった。
「私ね、人の苦しむ顔が好きなの。」
何を言ってるか理解が出来ない。
「苛められたほの花の辛そうな顔。内心誰よりも楽しんでる私に、頼りながら苛めの内容を話してくれるなんて最っ高だった!」
香織なのかこれは?
晃の頭痛が酷くなっていく。
「なのに…。」
スッと香織の表情が変わる。
「智也達が私の玩具を壊しちゃったんだもの。」
つまりほの花は…。
「自殺に追い込んでくれちゃって。」
香織は心底『お気に入りの玩具を奪われた子供』のような顔をしていた。
ほの花が自殺だとすると、後の連続殺人は別だったのだ。
全ては香織の犯行だった。
だとするならば…。
「ど、どうして俺まで殺すんだ?」
そろそろぶら下がっている腕に限界が近かった。
でもこの状態の香織に対して下手に動く事も出来ないでいた。
その時、いつもの香織に戻ったかのように、香織は薄く微笑んだ。
「香織…。」
「さようなら晃、貴方には恨みも何も無いんだけど、ここで貴方も殺さないと、犯行がばれちゃうからね!」
道具小屋からでも持ってきたのか、大型の刃物を、晃が掴んでいたロープへ振り下ろす香織…。
晃が最後に見た香織は、愉快そうに笑っていた。
今の季節では考えられないくらい暑い。
「香織!智也!」
晃は二人を咄嗟に呼び起こしたが、そこに二人の姿は無かった。
慌てて部屋を出て二人を探すために部屋を出ると、物凄い熱気が晃を襲った。
屋敷のあちこちに火が着いていた。
熱気の正体はこれだった。
晃は香織と智也を探しながら考える。
学校の時と犯人は別で、偶々ここにも殺人鬼が?
それは流石にありえない。
香織は昨夜晃と一緒に居たから、智也か梨梨が犯人だと考えると、そこからは必死に香織を探した。
エントランスに辿り着いた晃の視界に、火だるまの人影が階段を落ちて着た。
誰だかはわからないが、シルエットから女性のものだという事だけ分かった。
「まさか…香織っ!」
香織だとは思いたくなかった。
だが、犯人が梨梨か智也だとするならば、被害者は香織である可能性が高い。
そしてこの死体は間違いなく絶命しているようだった。
遺体から火が消えない限り運び出す事も出来ない晃は、急ぎ足で外へと逃げた。
火の勢いが弱まらなければ、あの吊り橋は落ちてしまうから。
橋の中腹まで来た所で、晃はいきなり後ろからタックルでも喰らったように突き飛ばされた。
勢いよく橋の外まで転げてしまい、咄嗟に橋のロープを掴んで転落を逃れた。
宙ぶらりんの状態で顔を上げると、そこには智也の顔があった。
いや、正確には智也の頭部だけがあったのだ。
智也を殺した犯人は智也の生首を晃に投げつけた。
衝撃の余り、ついロープを掴む手を放してしまいそうになる。
改めてロープを掴み直すと、犯人は面白そうに口を歪ませて晃を眺める。
「何でなんだ……香織!」
死んだと思っていた香織の姿。
あの死体は梨梨だったのだ。
晃は香織のことを残虐な犯人と思うより、まだ遺体である方が良いと無意識に決めつけてしまっていた。
ふと、香織がほの花と仲が良かったのを、晃は今更ながらに思い出す。
「ほの花の、仇討ち、か…?」
余りの出来事に手が震えて落ちそうになるのを踏みとどまり、香織を見上げる。
きっと声も震えてしまっているだろう。
「仇?」
香織の返答は思ってもいないという表情だった。
「ふふ…ふふあーーっはははっ!違うわよ。」
盛大に笑ってみせた香織は、涙さえ浮かべて笑う。
晃はこんな香織を見た事が無い。
これは本当に香織か?
晃の頭はパンク寸前だった。
「私ね、人の苦しむ顔が好きなの。」
何を言ってるか理解が出来ない。
「苛められたほの花の辛そうな顔。内心誰よりも楽しんでる私に、頼りながら苛めの内容を話してくれるなんて最っ高だった!」
香織なのかこれは?
晃の頭痛が酷くなっていく。
「なのに…。」
スッと香織の表情が変わる。
「智也達が私の玩具を壊しちゃったんだもの。」
つまりほの花は…。
「自殺に追い込んでくれちゃって。」
香織は心底『お気に入りの玩具を奪われた子供』のような顔をしていた。
ほの花が自殺だとすると、後の連続殺人は別だったのだ。
全ては香織の犯行だった。
だとするならば…。
「ど、どうして俺まで殺すんだ?」
そろそろぶら下がっている腕に限界が近かった。
でもこの状態の香織に対して下手に動く事も出来ないでいた。
その時、いつもの香織に戻ったかのように、香織は薄く微笑んだ。
「香織…。」
「さようなら晃、貴方には恨みも何も無いんだけど、ここで貴方も殺さないと、犯行がばれちゃうからね!」
道具小屋からでも持ってきたのか、大型の刃物を、晃が掴んでいたロープへ振り下ろす香織…。
晃が最後に見た香織は、愉快そうに笑っていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
いつもと違う日常
k33
ホラー
ある日 高校生のハイトはごく普通の日常をおくっていたが...学校に行く途中 空を眺めていた そしたら バルーンが空に飛んでいた...そして 学校につくと...窓にもバルーンが.....そして 恐怖のゲームが始まろうとしている...果たして ハイトは..この数々の恐怖のゲームを クリアできるのか!? そして 無事 ゲームクリアできるのか...そして 現実世界に戻れるのか..恐怖のデスゲーム..開幕!
日本隔離(ジャパン・オブ・デッド)
のんよる
ホラー
日本で原因不明のウィルス感染が起こり、日本が隔離された世界での生活を書き綴った物語りである。
感染してしまった人を気を違えた人と呼び、気を違えた人達から身を守って行く様を色んな人の視点から展開されるSFホラーでありヒューマンストーリーである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
キャラ情報
親父…松野 将大 38歳(隔離当初)
優しいパパであり明子さんを愛している。
明子さん…明子さん 35歳(隔離当初)
女性の魅力をフルに活用。親父を愛している?
長男…歴 16歳(隔離当初)
ちょっとパパっ子過ぎる。大人しい系男子。
次男…塁 15歳(隔離当初)
落ち着きのない遊び盛り。元気いい系。
ゆり子さん31歳(隔離当初)
親父の元彼女。今でも?
加藤さん 32歳(隔離当初)
井川の彼女。頭の回転の早い出来る女性。
井川 38歳(隔離当初)
加藤さんの彼氏。力の強い大きな男性。
ママ 40歳(隔離当初)
鬼ママ。すぐ怒る。親父の元妻。
田中君 38歳(隔離当初)
親父の親友。臆病者。人に嫌われやすい。
優香さん 29歳(隔離当初)
田中君の妻?まだ彼女は謎に包まれている。
重屋 39歳(出会った当初)
何処からか逃げて来たグループの一員、ちゃんと戦える
朱里ちゃん 17歳(出会った当初)
重屋と共に逃げて来たグループの一員、塁と同じ歳
木林 30歳(再会時)
かつて松野に助けらた若い男、松野に忠誠を誓っている
田山君 35歳(再会時)
松野、加藤さんと元同僚、気を違えた人を治す研究をしている。
田村さん 31歳(再会時)
田山君同様、松野を頼っている。
村田さん 30歳(再会時)
田山、田村同様、松野を大好きな元気いっぱいな女性。
【本当にあった怖い話】
ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、
取材や実体験を元に構成されております。
【ご朗読について】
申請などは特に必要ありませんが、
引用元への記載をお願い致します。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員
眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる