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第六章 追求、暴漢、記憶の蓋。
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「小野寺さーんっ、もうお帰りですか!」
「今夜、宜しければ俺たちとカラオケでも……ど、どうですかっ?」
今日は入荷した書籍のブッカー貼りと記録、整理の作業がしわ寄せで入り込み、すっかり定時を過ぎてしまった。
にもかかわらずわざわざ待ちかまえていたらしい男子学生二、三人が、軽い口調に僅かな緊張を滲ませて私に声をかける。中傷文の内容にあやかろうとする下心が多分に含まれたお誘いが、あれから後を絶えずにいた。
しかしながら、あの誹謗中傷が書かれてから二週間。こちらもそういつまでも若者の良いようにはされるまい。
「ごめんね。今日は気分じゃないの」
ある程度の柔らかさを残して、口元に微笑を浮かべる。
途端、浮ついた好奇の空気が大きくぐらつくのが分かった。まだまだ青いな、少年よ。
「気を悪くさせたかな?」
「え、あ、わ、い……いいえっ、いいえっ!」
「突然すみませんっした! 失礼します!」
バタバタと不格好に退散する学生の背中を見送る。敗残兵が。二度と浅はかな計画を企てるな。
周囲からの視線も、今では既に五分五分の割合で尊敬の念が戻りつつある。脅しが効を奏したのか、あれからオサワリ教授からの接触もない。
日常を取り戻した私は、駅への道を進んでいた。ふと目にした紫色に染まる日暮れの空に、小さく溜め息を漏らす。
あのデートから、もう二週間――か。
いまだに隙あらば浮かんでくる胸のもやもやに顔をしかめる。さっさと解決しなければと思いながら、あれ以降一度も「カフェ・ごんざれす」に足を運んでいなかった。
(俺は杏ちゃんが――マジで好きだって、言ってんのに)
何がマジだ。クソったれ。心の中で悪態をついたところで地下鉄の速度が落ちてきたことに気付き、私は荷物を肩に背負った。
ふわふわと浮き世離れしていて、愛想が良くて、こちらの本音を容易く見透かされているような気分になる。一言で言えば、胡散臭い。私が一番かかわり合いを持ちたくないタイプだった。
「『だった』……か」
自嘲じみた独り言がこぼれ落ちる。過去形。否定する理由はもうなかった。そうでもなければ、人混みにわざわざあのムカつく人影を探したりはしない。
地下鉄駅から階段を上り終えると、既に辺りは夜に覆われていた。街灯や車の照明が賑わいを見せる上空では、星が朧気に瞬いている。
日常を取り戻してすっきりしているはずの胸に、ぽっかりと空いている穴があった。
職場での悪評を払拭した暁には、それも簡単に修復できると思っていた。それなのに――。
「……?」
思考に飲まれる直前、私は不意に背後を振り返る。
大きな通りを曲がれば、自宅マンションまで続く道は人通りも少ない。振り向いた先に人影はなく、木の葉が擦れる音が辺りに立ちこめている。細身のチノパンの端から覗かせた足首に、やけに冷たい夜風を感じた。
嫌な、予感がする。
大通りに引き返そうかと思ったが、どうにも後ろへ歩みを進めるのは具合が良くない気がする。考えた挙げ句、私は再びいつもの道のりを進み始めた。スニーカーを履いてくれば良かった。歩く度に音を鳴らす高めのヒールに眉を寄せる。
いつもよりほんの少しだけ歩く早さを上げながら、自分の靴音とは違う気配がないか耳を必死にそばだてる。その最中、聞き流していた薫の忠告がふと頭をよぎった。
(気を付けろよ杏姉。さっきのセクハラ親父じゃねぇけど)
背筋に、氷のように冷たいものが落ちてくる。まさか、音沙汰ないと思っていたオサワリ教授? それとも、あの噂に沸いた第三者か。
不安が不安を呼び、混乱した足元が軽くもつれる。再度歩みを止めた膝は小さく震えていた。
「……ないない」
考えすぎだ。振り返ってみる。ほら。やっぱり誰もいないじゃない。誰も、いな――。
「!!」
息を大きく飲む。
全身の毛穴が開き冷や汗が吹き出すのが分かった。頭に警告音のような耳鳴りが響いて、私は呼吸を忘れた。
ひとブロック向こうの電柱の陰に、うごめく人影が見える。
「……あ」
小声を漏らした私は、唐突に地面を踏み切り、全力疾走でその場を駆け出す。後ろの気配なんて構っている暇はなかった。
(俺じゃなくても良いから。危なくなる前に、誰かを頼れ)
そんなこと言ったって。今この状況で、誰をどう呼べと言うの。
途端、目と鼻の奥がつんと熱くなる。自分の身は自分で守る。そんなことを豪語していたのは自分のくせに。
「きゃ……ッ!」
足元で嫌な音が弾け、途端にバランスを失う。
済んでのところで迫りくる地面に手を付いたものの、両膝に鋭い痛みが走って顔を歪めた。
ズボンが膝の辺りで擦り切れ、鮮やかな朱色がじくじくと滲み出ている。足先に転がる無惨に折れてしまったヒールの残骸は気に留める価値もないことだ。そんなことよりも――。
「……!!」
じゃり、と丁寧に地面を踏みしめる音。
セクハラ教授じゃない。黒のパーカーとジーンズに身を包んだ、細身の若い男。
手元に小さな紙切れを持っているらしい。それと私を何度も往復させていた視線が、ぴたりと私を捉える。
血の気の引く音が、聞こえた。
「小野寺、さん?」
「……っ、っっ!」
必死に、目の前の男と距離をとろうとする。
先ほど転倒した際にうまく動かなくなってしまった足を懸命に地面の擦りつけるも、まるで役に立ちそうにもなかった。
「はは、生意気そうな目だぁ。美人を鼻にかけてるって、一発で分かる」
一歩。また一歩。粘着質な歩みで、男は確かに距離を詰めてくる。
街灯の灯火が朧気に映し出したその瞳はどこか焦点が定まっていなかった。
地面に付いた腕が戦慄いて、止まらない。
「こんなことになってごめんね。本当は僕も嫌なんだ。あんたみたいなストイックな人間も、別に嫌いな訳じゃない」
「あ、あ……っ、」
「でもねぇ、僕の姫からのお願い事だから」
言い終わるや否や、男がおもむろにポケットに手を突っ込む。現れたものはありふれたライターだった。
その蓋を弾いた男の手元に、ゆらゆらと微かな火が点る。
「あの子も本当困った子でね。わがままで大変なんだけど、僕しか頼る人がいないから。僕が願いを叶えてあげるしかないんだよねぇ」
男は先ほどから手にしていた紙切れに火を移すと、小さな炎と呼べる大きさまで恭しく育て上げた。
心底楽しそうな笑顔が不気味に浮かび上がる。心臓が、痛いくらいに胸を叩いた。
「すぐだからね。少し我慢すればいいから。ちょっと顔に焦げ目を残してもらうだけだから……ね?」
「……っ!」
頭が可笑しい。何を言ってるんだ、この男は。
いつの間にか濡れていた頬が、次第に温かく、そして熱くなる。
危うげに揺らめく明かりが瞳ににじり寄ってくる。助けて。
助けて。助けて。助けて。
……とう、ま……!
「ッ、う、いでででっ!!」
恐怖に瞼を力一杯封じ込めた、次の瞬間。
耳に届いたのは、街並みを揺るがすほどの男の呻き声。そして。
「暴れんな。もっと痛い目みたくなけりゃな」
地を這うように低く男を諭す、胸を焦がすような声色だった。
「痛い痛い痛いっ!! だ、誰だっ、誰だぁっ!?」
「腰抜けが慣れないことするもんじゃねぇよ。ここに居合わせた奴がウチの店長だったら、間違いなく殺られてる」
「こ、このぉ……っ」
壁に追いやられた男が、目を回したまま怒り任せに踊りかかる。その腕を慣れた手つきで筋違いにしならせると、男は面白いくらい簡単に地面に顔ごと倒された。
圧巻のやりとりに、私はただただ目を見張る。
「……ま、」
ぽつりと。
忘れていた言葉が、口からこぼれ落ちる。明けた夜の露草から筋にならって、一粒の滴が落ちていくように。
既に戦意を喪失しているらしい男になおも掴みかかる人影が、ゆっくりとこちらに振り返った。先ほどとは違う涙が、頬に新しい筋を作り出す。
「とう、まっ、透馬……っ!」
「杏ちゃん……!」
殺気だった空気が、瞬く間に払拭される。必死の抵抗で髪も服も顔もぼろぼろになった私に、透馬の手が恐々と頭を撫で、ゆっくり身体ごと抱きしめた。
甘ったるいミルクティーを思わせる薄茶色の髪の毛。真っ白なはずの手のひらが、今は血が沸くように真っ赤に染まっていて、酷く熱い。
胸に張り巡らされた全ての緊張の糸が、丁寧に解けていくのがわかった。
「今夜、宜しければ俺たちとカラオケでも……ど、どうですかっ?」
今日は入荷した書籍のブッカー貼りと記録、整理の作業がしわ寄せで入り込み、すっかり定時を過ぎてしまった。
にもかかわらずわざわざ待ちかまえていたらしい男子学生二、三人が、軽い口調に僅かな緊張を滲ませて私に声をかける。中傷文の内容にあやかろうとする下心が多分に含まれたお誘いが、あれから後を絶えずにいた。
しかしながら、あの誹謗中傷が書かれてから二週間。こちらもそういつまでも若者の良いようにはされるまい。
「ごめんね。今日は気分じゃないの」
ある程度の柔らかさを残して、口元に微笑を浮かべる。
途端、浮ついた好奇の空気が大きくぐらつくのが分かった。まだまだ青いな、少年よ。
「気を悪くさせたかな?」
「え、あ、わ、い……いいえっ、いいえっ!」
「突然すみませんっした! 失礼します!」
バタバタと不格好に退散する学生の背中を見送る。敗残兵が。二度と浅はかな計画を企てるな。
周囲からの視線も、今では既に五分五分の割合で尊敬の念が戻りつつある。脅しが効を奏したのか、あれからオサワリ教授からの接触もない。
日常を取り戻した私は、駅への道を進んでいた。ふと目にした紫色に染まる日暮れの空に、小さく溜め息を漏らす。
あのデートから、もう二週間――か。
いまだに隙あらば浮かんでくる胸のもやもやに顔をしかめる。さっさと解決しなければと思いながら、あれ以降一度も「カフェ・ごんざれす」に足を運んでいなかった。
(俺は杏ちゃんが――マジで好きだって、言ってんのに)
何がマジだ。クソったれ。心の中で悪態をついたところで地下鉄の速度が落ちてきたことに気付き、私は荷物を肩に背負った。
ふわふわと浮き世離れしていて、愛想が良くて、こちらの本音を容易く見透かされているような気分になる。一言で言えば、胡散臭い。私が一番かかわり合いを持ちたくないタイプだった。
「『だった』……か」
自嘲じみた独り言がこぼれ落ちる。過去形。否定する理由はもうなかった。そうでもなければ、人混みにわざわざあのムカつく人影を探したりはしない。
地下鉄駅から階段を上り終えると、既に辺りは夜に覆われていた。街灯や車の照明が賑わいを見せる上空では、星が朧気に瞬いている。
日常を取り戻してすっきりしているはずの胸に、ぽっかりと空いている穴があった。
職場での悪評を払拭した暁には、それも簡単に修復できると思っていた。それなのに――。
「……?」
思考に飲まれる直前、私は不意に背後を振り返る。
大きな通りを曲がれば、自宅マンションまで続く道は人通りも少ない。振り向いた先に人影はなく、木の葉が擦れる音が辺りに立ちこめている。細身のチノパンの端から覗かせた足首に、やけに冷たい夜風を感じた。
嫌な、予感がする。
大通りに引き返そうかと思ったが、どうにも後ろへ歩みを進めるのは具合が良くない気がする。考えた挙げ句、私は再びいつもの道のりを進み始めた。スニーカーを履いてくれば良かった。歩く度に音を鳴らす高めのヒールに眉を寄せる。
いつもよりほんの少しだけ歩く早さを上げながら、自分の靴音とは違う気配がないか耳を必死にそばだてる。その最中、聞き流していた薫の忠告がふと頭をよぎった。
(気を付けろよ杏姉。さっきのセクハラ親父じゃねぇけど)
背筋に、氷のように冷たいものが落ちてくる。まさか、音沙汰ないと思っていたオサワリ教授? それとも、あの噂に沸いた第三者か。
不安が不安を呼び、混乱した足元が軽くもつれる。再度歩みを止めた膝は小さく震えていた。
「……ないない」
考えすぎだ。振り返ってみる。ほら。やっぱり誰もいないじゃない。誰も、いな――。
「!!」
息を大きく飲む。
全身の毛穴が開き冷や汗が吹き出すのが分かった。頭に警告音のような耳鳴りが響いて、私は呼吸を忘れた。
ひとブロック向こうの電柱の陰に、うごめく人影が見える。
「……あ」
小声を漏らした私は、唐突に地面を踏み切り、全力疾走でその場を駆け出す。後ろの気配なんて構っている暇はなかった。
(俺じゃなくても良いから。危なくなる前に、誰かを頼れ)
そんなこと言ったって。今この状況で、誰をどう呼べと言うの。
途端、目と鼻の奥がつんと熱くなる。自分の身は自分で守る。そんなことを豪語していたのは自分のくせに。
「きゃ……ッ!」
足元で嫌な音が弾け、途端にバランスを失う。
済んでのところで迫りくる地面に手を付いたものの、両膝に鋭い痛みが走って顔を歪めた。
ズボンが膝の辺りで擦り切れ、鮮やかな朱色がじくじくと滲み出ている。足先に転がる無惨に折れてしまったヒールの残骸は気に留める価値もないことだ。そんなことよりも――。
「……!!」
じゃり、と丁寧に地面を踏みしめる音。
セクハラ教授じゃない。黒のパーカーとジーンズに身を包んだ、細身の若い男。
手元に小さな紙切れを持っているらしい。それと私を何度も往復させていた視線が、ぴたりと私を捉える。
血の気の引く音が、聞こえた。
「小野寺、さん?」
「……っ、っっ!」
必死に、目の前の男と距離をとろうとする。
先ほど転倒した際にうまく動かなくなってしまった足を懸命に地面の擦りつけるも、まるで役に立ちそうにもなかった。
「はは、生意気そうな目だぁ。美人を鼻にかけてるって、一発で分かる」
一歩。また一歩。粘着質な歩みで、男は確かに距離を詰めてくる。
街灯の灯火が朧気に映し出したその瞳はどこか焦点が定まっていなかった。
地面に付いた腕が戦慄いて、止まらない。
「こんなことになってごめんね。本当は僕も嫌なんだ。あんたみたいなストイックな人間も、別に嫌いな訳じゃない」
「あ、あ……っ、」
「でもねぇ、僕の姫からのお願い事だから」
言い終わるや否や、男がおもむろにポケットに手を突っ込む。現れたものはありふれたライターだった。
その蓋を弾いた男の手元に、ゆらゆらと微かな火が点る。
「あの子も本当困った子でね。わがままで大変なんだけど、僕しか頼る人がいないから。僕が願いを叶えてあげるしかないんだよねぇ」
男は先ほどから手にしていた紙切れに火を移すと、小さな炎と呼べる大きさまで恭しく育て上げた。
心底楽しそうな笑顔が不気味に浮かび上がる。心臓が、痛いくらいに胸を叩いた。
「すぐだからね。少し我慢すればいいから。ちょっと顔に焦げ目を残してもらうだけだから……ね?」
「……っ!」
頭が可笑しい。何を言ってるんだ、この男は。
いつの間にか濡れていた頬が、次第に温かく、そして熱くなる。
危うげに揺らめく明かりが瞳ににじり寄ってくる。助けて。
助けて。助けて。助けて。
……とう、ま……!
「ッ、う、いでででっ!!」
恐怖に瞼を力一杯封じ込めた、次の瞬間。
耳に届いたのは、街並みを揺るがすほどの男の呻き声。そして。
「暴れんな。もっと痛い目みたくなけりゃな」
地を這うように低く男を諭す、胸を焦がすような声色だった。
「痛い痛い痛いっ!! だ、誰だっ、誰だぁっ!?」
「腰抜けが慣れないことするもんじゃねぇよ。ここに居合わせた奴がウチの店長だったら、間違いなく殺られてる」
「こ、このぉ……っ」
壁に追いやられた男が、目を回したまま怒り任せに踊りかかる。その腕を慣れた手つきで筋違いにしならせると、男は面白いくらい簡単に地面に顔ごと倒された。
圧巻のやりとりに、私はただただ目を見張る。
「……ま、」
ぽつりと。
忘れていた言葉が、口からこぼれ落ちる。明けた夜の露草から筋にならって、一粒の滴が落ちていくように。
既に戦意を喪失しているらしい男になおも掴みかかる人影が、ゆっくりとこちらに振り返った。先ほどとは違う涙が、頬に新しい筋を作り出す。
「とう、まっ、透馬……っ!」
「杏ちゃん……!」
殺気だった空気が、瞬く間に払拭される。必死の抵抗で髪も服も顔もぼろぼろになった私に、透馬の手が恐々と頭を撫で、ゆっくり身体ごと抱きしめた。
甘ったるいミルクティーを思わせる薄茶色の髪の毛。真っ白なはずの手のひらが、今は血が沸くように真っ赤に染まっていて、酷く熱い。
胸に張り巡らされた全ての緊張の糸が、丁寧に解けていくのがわかった。
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