葬鐘

第一章

本当に鳴りだすとは驚いた。
闇夜が辺りを暗くしている御蔭で電話ボックスの存在感が
際立っている。誰もいないボックスから音が聞こえてきたら
不思議と誘われてしまいそうだ。
でも、 その手には乗らない。
私はお姉ちゃんを助けに来たの。
血濡れの女、あんたを救いに来たわけじゃないわ。
あ、あ、あ……あ……
何かが電話口から聞こえてきた気がしたが振り返らず
前に向かって全力で駆けた。
背後から何かがカサカサと付いてくる音が聞こえた。
木々が揺れるにしてはやけに大きい音に恐怖した。
まさか、 電話に出なくても追いかけられるんじゃという
先入観が私を恐怖へと駆り立てた。
もう少し、 もう少しで着くはずだから。
頭が急に痛くなり、喉が渇いた。
体は鉛のように重くなり、 一歩一歩が上手く踏み出せない。