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序章
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この廃墟に来るべきではなかった。
ホラー企画の廃墟特番として訪れたが私たちの想像以上に
危険な場所であった。まさかあんなのが巣くっているとは…
私は懐中電灯を片手にらせん階段を昇っている。
みんなは無事だろうか。突如現れた化け物により私たちはちりじりになり
一人でいることがこんなに心細いとは・・・
いつ、どこから化け物が飛び出てくるかとミソラは冷や汗が止まらない。
二階に上がり角を曲がった時、視界に大きな影が映った気がして
はっと身を隠した。
もう一度見ると何やら大きな影が蠢いていた。
そう『奴』の姿を視認した瞬間だった。
外で轟く雷鳴が響く度に稲光とともに窓から光が入り込み奴の姿が見え隠れする。
お腹から薔薇のような植物が飛び出し、そこに大きな口のようなものが見える。
そして今、まさにその大口を広げ獲物に喰らいつこうとしていた。
暗闇の中、バリバリと骨が軋むような惨たらしい音が響く。
仲間の一人が餌食になっている。
私は物陰に身を潜め食事が終わるのを物音を立てないよう影を潜める。
ハア、ハア……ここから早く逃げないと……
その時、真横にベチャという鈍い音が響き何かが視界に入った。
苦悶の表情にゆがんだ目、あごから下がなく歯がむき出しに
なった人間の頭部のようだった。
生臭い匂いが鼻孔の奥までただよいあまりの刺激に胃酸が逆流して
くる。危うく口から洩れそうな嘔吐感を抑えるため咄嗟に口を塞ぐ。
その時、足を擦ってしまいギイッと微かな音をたててしまった。
そのわずかな音に感づいたのか食事中だった奴の動きがピタッと
止まり、 音のした方へとズリズリと歩みだした。
生臭い匂いが徐々に近づき、空気がねっとりと体にまとわりつく
じめっとした汗が体中から湧き出てシャツに大きなシミができている。
早く、早く……
身体を動かそうと藻掻いたが金縛りにあったかのように動かない。
その時、廊下の奥から太い蔦が顔を見せた。
そしてその奥からおぞましい少女の顔がヌッと姿を見せた。
お姉さん ……ミイツケタ
少女は不敵な笑みを見せると長い触手を私目掛けて伸ばしてきた。
うわあああああああああああ
間一髪触手を避け、なんとか上体を起こす。触手は壁にあたり壁が崩れる。
ひいいいい……!?
私は気づけば駆け出し必死に階段を降り目の前の部屋に飛び込み鍵をかけた。
ズリズリ……ベチャベチャ……トントン……
少女が徘徊する音が木霊する。
(もう早くどこか行って・・・)
私は息を殺し、頭の中で祈り続けた。どれくらい時間が経っただろうか。
外からの音はしなくなり静寂が訪れていた。少女は去ったのだろうか。いや、まだ安心はできない。
私は懐中電灯をぎゅっと握りしめドアに注意を向けた。
その時だった。部屋の中にすうっと凍えるように冷たい風が入り、私の背中を撫でる。
ミイツケタ……私は血の気が引くのを感じた。いる。私の背後に……
咄嗟にドアノブを回すが開かない。
汗が止まらず床に水たまりのように零れ落ちた。
ヒタヒタヒタと裸足で徐々に近づいてくる音がする。
そして私の背後で止まるとオネエサン……ワタシノトモダチにナッテヨ。
脳裏に響く、 その声を最後に私の意識は彼方へ消えた。
ホラー企画の廃墟特番として訪れたが私たちの想像以上に
危険な場所であった。まさかあんなのが巣くっているとは…
私は懐中電灯を片手にらせん階段を昇っている。
みんなは無事だろうか。突如現れた化け物により私たちはちりじりになり
一人でいることがこんなに心細いとは・・・
いつ、どこから化け物が飛び出てくるかとミソラは冷や汗が止まらない。
二階に上がり角を曲がった時、視界に大きな影が映った気がして
はっと身を隠した。
もう一度見ると何やら大きな影が蠢いていた。
そう『奴』の姿を視認した瞬間だった。
外で轟く雷鳴が響く度に稲光とともに窓から光が入り込み奴の姿が見え隠れする。
お腹から薔薇のような植物が飛び出し、そこに大きな口のようなものが見える。
そして今、まさにその大口を広げ獲物に喰らいつこうとしていた。
暗闇の中、バリバリと骨が軋むような惨たらしい音が響く。
仲間の一人が餌食になっている。
私は物陰に身を潜め食事が終わるのを物音を立てないよう影を潜める。
ハア、ハア……ここから早く逃げないと……
その時、真横にベチャという鈍い音が響き何かが視界に入った。
苦悶の表情にゆがんだ目、あごから下がなく歯がむき出しに
なった人間の頭部のようだった。
生臭い匂いが鼻孔の奥までただよいあまりの刺激に胃酸が逆流して
くる。危うく口から洩れそうな嘔吐感を抑えるため咄嗟に口を塞ぐ。
その時、足を擦ってしまいギイッと微かな音をたててしまった。
そのわずかな音に感づいたのか食事中だった奴の動きがピタッと
止まり、 音のした方へとズリズリと歩みだした。
生臭い匂いが徐々に近づき、空気がねっとりと体にまとわりつく
じめっとした汗が体中から湧き出てシャツに大きなシミができている。
早く、早く……
身体を動かそうと藻掻いたが金縛りにあったかのように動かない。
その時、廊下の奥から太い蔦が顔を見せた。
そしてその奥からおぞましい少女の顔がヌッと姿を見せた。
お姉さん ……ミイツケタ
少女は不敵な笑みを見せると長い触手を私目掛けて伸ばしてきた。
うわあああああああああああ
間一髪触手を避け、なんとか上体を起こす。触手は壁にあたり壁が崩れる。
ひいいいい……!?
私は気づけば駆け出し必死に階段を降り目の前の部屋に飛び込み鍵をかけた。
ズリズリ……ベチャベチャ……トントン……
少女が徘徊する音が木霊する。
(もう早くどこか行って・・・)
私は息を殺し、頭の中で祈り続けた。どれくらい時間が経っただろうか。
外からの音はしなくなり静寂が訪れていた。少女は去ったのだろうか。いや、まだ安心はできない。
私は懐中電灯をぎゅっと握りしめドアに注意を向けた。
その時だった。部屋の中にすうっと凍えるように冷たい風が入り、私の背中を撫でる。
ミイツケタ……私は血の気が引くのを感じた。いる。私の背後に……
咄嗟にドアノブを回すが開かない。
汗が止まらず床に水たまりのように零れ落ちた。
ヒタヒタヒタと裸足で徐々に近づいてくる音がする。
そして私の背後で止まるとオネエサン……ワタシノトモダチにナッテヨ。
脳裏に響く、 その声を最後に私の意識は彼方へ消えた。
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