ダルマさんが消えた

猫町氷柱

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始動

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 一度深呼吸をし、心を落ち着かせた。窓から差し込む月明りがまるで私を現実から夢の世界に誘うかのように優しく降り注いでいた。この賃貸マンションの玄関までの距離は僅か数百メートル。これならば何か起きようにもすぐに出られるはずだと思った。
 心の揺れが次第に治まりゾーン状態に入り出した私は早速手順に従い一つずつ行っていく。三脚にセットしたカメラの録画ボタンを押し、私はまず一本の蝋燭に火を灯し背後に用意した剣山の上に突き刺した。
 ようやくもう少しで都市伝説の真相に近づけると思うと胸が高まり再び心臓の鼓動が早まっていく。私は胸の前に手を置き深呼吸し、落ち着くように心がけた。
  辺りは物音一つしない静寂という名のカーテンが辺りに覆い被さっていた。そして私の波長もまさに一点の曇りもない状態に落ち着いた。
 今ならいけると一息つき例の言霊を口に出した。

「だ~るまさんがこ~ろんだ」
その掛け声と同時に背後を振り返るが虚空が広がっているだけで当然自分以外の気配はしない。蝋燭の火もほのかに光り特に変化は見られなかった。まだ、ダルマさんは降臨していないようだ。2回目、3回目と唱えているとなんとなく空気が冷たくなってきたように感じた。それに誰かが背後から見ているような妙な感覚が背筋に刺さりゾクッとした。それに気づいたら手に汗を握っていた。

「だ……ダルマさんが……………転んだ!!」
口元が震え、つい早口になってしまった。正直振り返るのが怖かったけれど儀式を途中で止めるのはより危険である。私は勢いよく振り返り、蝋燭を確認した。蝋燭は揺らめくことなく煌々と燃えていたが次の瞬間ぐらッと横に靡いた。
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