手毬哥

猫町氷柱

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2.始動 追われる恐怖 探す勇気 巻き込む怪異

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 背後から消え入りそうなか細い声が聞こえた。
「私を……殺して……………そうすれば道が……開けるから」
  僕は何を言っているのか理解が出来なかった。
「和沙……お前……何を言って」
「少女から聞いたの……………このマンションは呪われてる……………って。そしてこの部屋は呪いの霊道……………道を開くには……その部屋の住人の死によって……魂を捧げないと……解けないって」
  大粒の涙が床に滴る。正気を取り戻した彼女はふらつきながら僕に近づく。
「馬鹿な考えは止せ!!他に……何か方法がないか考えよう……こんな
理不尽な事あってたまるか」
  僕は思いっきり床に怒りをぶつけた。
「本当……こんな理不尽……許せないよ。でも無理なの……悪魂は私を……
ノットって……ううう」
  急に頭を抱えながら膝から崩れ落ちた。僕は支えようと手を差し伸べたが振りほどかれあろうことか彼女はお腹に持っていた包丁を思いっきり……………!!!!
  僕は振りほどかれた反動で止めることが出来ず、彼女のお腹から鮮血が
飛び散り僕の身体を赤く染めた。

さらにぐりぐりと押し込み彼女は口から鮮血を吐き出した。僕は何もすることが出来ず倒れ込む彼女を支えることしか出来なかった。
「ごめんね……もう抑えられそうにないの……………」
「もう話すな……でないと本当に」
  和沙の顔は鮮血と涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「これを……持って行って私は……ここにいるわ」
  髪留めを取り、震える手で僕に差し出した。
  僕はギュッと受け取ると和沙は満足そうな笑みを浮かべた。
「生きて……そしてもう二度と……この理不尽を味わう人が出ないように……さよなら……孝也」
  彼女は息を吸うように安らかにその場に崩れ落ちた。
「和沙……和沙……おい、嘘だろ……おい返事してくれよ」
  月夜が窓から差し込み和沙を照らし出した。僕はしばらく泣き崩れその場を動くことが出来なかった。
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