手毬哥

猫町氷柱

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2.始動 追われる恐怖 探す勇気 巻き込む怪異

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 僕は少女をお堂の仏間横に寄り添わせお堂の裏側へ歩みを進めた。暗い雰囲気がより暗くなったような錯覚に陥る。毬をつく音は今のところしていない。僕は警戒心を高め、音をたてないように慎重に進んだ。
 
 裏手に出ると言われた通り井戸が視界に入った。急いで歩み寄り、中を覗きこむと底が見えない漆黒の闇が広がっていた。試しにその辺に転がっていた石を投げ込んでみた。長い滞空時間を生じ、その後に水に当たり音が返ってくる。

 本当にこんなところに落下して生きていられるだろうか……底に打ち付けられて死ぬ、嫌なイメージが拭いされない。入ろうか入るまいか悩んでいる僕を待つことなく悪魂が忍び寄る。
 
 何かをつくような音、異様な腐乱臭が鼻から入り込み僕の体内に充満していく。その臭気が喉に絡みつくと一気に胃液がこみ上げ耐えられない苦痛が僕を襲った。

 うねうねと浮かび上がる影、光はほとんどないが僅かな脚光が姿を浮かび上がらせる。明らかに多い腕の数、長くボサボサの髪は生きているかのように逆立ち蠢いているようだった。
 
 もう僕に迷っている猶予は残されていないと感じた。選択の余地はない、もうどうなろうとここで貪り喰われるくらいならいっそのこと飛び込んで死んだほうがましだと感じた。その思いが僕の身体を操り、一気に井戸目掛けて飛び込んだ。頼む僕を次のステージへ進めてくれ。
 
 僕の身体は宙を舞い奈落へと引き込まれていった。頭から井戸の底の水に叩きつけられとんでもない衝撃が身体を貫いた。薄れゆく意識の中、水底から降り注ぐ一筋の光が僕の身体を包み込み吸い込まれるように更なる深みへと連れて行った。
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