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1. 存在しない部屋
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水が滴る音がする。僕はどうなったのだろう。記憶が曖昧でよく思い出せない。とにかく息が出来ないことが分かり、藻掻いた。ジタバタしたが足がつく高さだったので反射的に顔を上げた。
ハアハア……どこだここは?
足首ほどまで浸水し、まるで地下室のように明かりはなく薄暗かった。そして、目の前にある不気味な赤黒い鳥居、その向こうに見える寂びれたお堂。僕は室内にいたはずなのにまるで都市伝説のように異空間に取り込まれてしまったようで顔が青ざめた。
その時、ふとあの顔を思い出した。苦悶の表情に歪み、流血した潰れた顔を……思い出したくない記憶が脳裏に焼き付けられていて血の気が引いた。行きたくないが目の前のお堂に行くしか方法がなさそうだ。
まだ、生きているのだとしたらここから抜け出す方法を探さないと……
僕は勇気を振り絞り鳥居を潜った。その先のお堂は朽ち、障子戸が何か所か破れているようだ。
中の様子はここからは全く見えなかった。確かめるためには近づくしかない。手が震え、足は進むことを拒絶する。その暗がりに何か潜んでいるんじゃないかという先入観が僕の意思を阻害した。
1度深く深呼吸をし心を落ち着ける。冬の最中のはずなのに真夏のような
息苦しさを感じ、どこからともなく吹き抜ける風はまるで木枯らしのように冷たく足元から悪寒が昇ってきて吐き気に襲われた。
い……行くしかない……ここで立ち止まっていたらそれこそ背後から襲われるかもしれない。意を決して短い木造の階段を上り、お堂の扉の前に立った。
木の匂いとどこか腐乱臭のような臭いがぶわっと広がり思わず鼻を覆った。背後に飛び退きそうになり床が軋む音が盛大に鳴り響いた。その時、ふと向けた視線の先にこちらを覗き見る目と目が合ってしまった。お堂の中から手がヌッと伸びてきて僕の腕をぎゅっと掴み、中へと引きずり込んだ。
ハアハア……どこだここは?
足首ほどまで浸水し、まるで地下室のように明かりはなく薄暗かった。そして、目の前にある不気味な赤黒い鳥居、その向こうに見える寂びれたお堂。僕は室内にいたはずなのにまるで都市伝説のように異空間に取り込まれてしまったようで顔が青ざめた。
その時、ふとあの顔を思い出した。苦悶の表情に歪み、流血した潰れた顔を……思い出したくない記憶が脳裏に焼き付けられていて血の気が引いた。行きたくないが目の前のお堂に行くしか方法がなさそうだ。
まだ、生きているのだとしたらここから抜け出す方法を探さないと……
僕は勇気を振り絞り鳥居を潜った。その先のお堂は朽ち、障子戸が何か所か破れているようだ。
中の様子はここからは全く見えなかった。確かめるためには近づくしかない。手が震え、足は進むことを拒絶する。その暗がりに何か潜んでいるんじゃないかという先入観が僕の意思を阻害した。
1度深く深呼吸をし心を落ち着ける。冬の最中のはずなのに真夏のような
息苦しさを感じ、どこからともなく吹き抜ける風はまるで木枯らしのように冷たく足元から悪寒が昇ってきて吐き気に襲われた。
い……行くしかない……ここで立ち止まっていたらそれこそ背後から襲われるかもしれない。意を決して短い木造の階段を上り、お堂の扉の前に立った。
木の匂いとどこか腐乱臭のような臭いがぶわっと広がり思わず鼻を覆った。背後に飛び退きそうになり床が軋む音が盛大に鳴り響いた。その時、ふと向けた視線の先にこちらを覗き見る目と目が合ってしまった。お堂の中から手がヌッと伸びてきて僕の腕をぎゅっと掴み、中へと引きずり込んだ。
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