ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

文字の大きさ
上 下
232 / 256
7 お化け屋敷と空中ブランコ

17

しおりを挟む
 久遠が頷きながら言った。
「それじゃあ、先を急ぎましょうか」
 久遠は京一に、なにかを考える隙を与えないように、ことを急かした。
「ああ」
 京一が返事をした。
 見た感じ、京一はかなり疑っているようだったが、そんなことよりも、鍵探しの方が先決だと思っているのか、それ以上は突っ込んでこなかった。
 それから、二人はさらに、お化け屋敷の奥へと進んでいった。
 京一は鋭い目でにらむように、左右を交互に見て、鍵を探しながら、真剣に歩いているようだった。
 一方、歩くだけで精一杯で、京一ほど余裕がない久遠は、下を中心に見て探していた。
 やがて、いくつもの墓が、ならんで置かれてある場所にたどり着いた。
「ここはもうすでに探してはいるが、念のため、もう一度探そう」
 用心深く京一が言った。
 ついた時点で、なんとなく京一に、そう言われるのではないかと予想してはいたが、いざ墓を目の前にして言われると、久遠の足は、たちまちすくみ上がった。
「ええ……ここを探すんですか?」
 いやそうに久遠が言った。
「当たり前だ」
 そう言うと、立ちすくんでいる久遠をよそに、京一はスタスタと墓の近くにいき、念入りに探しはじめた。
「仕方ないか……」
 あきらめて言うと、久遠もおそるおそる墓に近寄り、鍵を探しはじめた。
 偽物の墓と言っても、石でできていて、姿形は、本物の墓となにも変わりはないように見える。
 その墓石に触ると、ひやっと冷たく、ざらついた感触が、久遠の手に残った。
 暗くて視界がよく見えない中、スマホのライトを照らしながら、久遠はなるべく墓の細かいところまで見ようと、ひざをつき、低い姿勢になって探した。
 入る前から、おびえっ放しの久遠だったが、一度、鍵探しにとりかかると、ここがお化け屋敷だということを忘れ、集中することができた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【完結】だるま村へ

長透汐生
児童書・童話
月の光に命を与えられた小さなだるま。 目覚めたのは、町外れのゴミ袋の中だった。 だるまの村が西にあるらしいと知って、だるまは犬のマルタと一緒に村探しの旅に出る。旅が進むにつれ、だるま村の秘密が明らかになっていくが……。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

弟は、お人形さんになりました

るい
絵本
あるところに、お母さん、お父さん、お兄ちゃん、弟くんの4人で出来た、ごく普通の家庭がありました。 この家族は貧しくもなければ潤沢な訳でもなく、ごくごく普通の家庭でした。 お母さんは優しいし、お父さんはサラリーマン、お兄ちゃんはたくましい。 でも弟くんは、お人形さん。 【注】このお話は少しホラーテイストになっております。苦手な方は十分注意の上閲覧ください。

黒猫クロとトラ柄のシマ

榊咲
児童書・童話
ハウスの中で生まれたネコの話

処理中です...