ルーカスと呪われた遊園地（上）

６ 久遠類の恋心

２４

（僕はまだ弱い。あの程度のやつらに負けているようじゃ、まだまだだ）
　くやしさから、久遠は唇をつよく噛んだ。
　乙葉に好かれるような男になるには、もっともっと強くなる必要がある。
　でもその前に、あの廃墟の遊園地にいったら死ぬ、というのは本当だろうか。もしその話が事実なら、これから強くなるために頑張っても、肝心の乙葉が生きていなければ意味がない。
　久遠は頭を悩ませた。
　ひとまず、授業に遅刻することを覚悟して、人があまりこないトイレにいくことにした。久遠はトイレの個室に入って早々、ポケットからスマホをとり出して、乙葉たちのいる廃墟の遊園地について調べた。
　するとまず最初に、今日の乙葉のニュースが出てきた。スクロールして下にいくと、十年前の記事が出てきたため、開いた。

　廃墟の遊園地　百人近く行方不明
　　肝試しに出かけた男女五人が行方不明になる遭難そうなん事故が発生した。男女五人の家族が、中々家に帰ってこないことを不審ふしんに思い、百十九番通報。警察と消防合わせて百人以上の態勢たいせいで捜索そうさくしたが、捜索に行った警察と消防までもが、全員行方不明となった。この事から、廃墟の遊園地は立ち入り禁止となり、周辺には絶対に近寄らないように注意を呼びかけている。

「……本当だったんだ」
　この記事を見た直後、久遠の背中に寒気が走った。
　まさか、こんなおそろしい場所に乙葉がいるなんて、本当に信じられない。しかし、このままほうっておいたら、乙葉はおそかれはやかれ死ぬかもしれない。
　一刻もはやく、乙葉を救い出さなければ。
　でも、どうやって？　警察や消防は、この状況では頼りにならないし、このままなにもしないで待っていても、乙葉があの遊園地から戻ってくるとは、到底思えない。
　だとしたら、残る手段は——。
「こうなったらもう、僕がいくしかない」
　久遠は強い意志を持って言った。
　本音をいうと、すごくこわいし、いきたくないけれど、強い男になると決めたからには、いくしかない。それに、乙葉のいない学校なんて、いってもつまらないだけだ。
　久遠は自分にそう言い聞かせ、学校が終わったあと、廃墟の遊園地にいこうと決意した。

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