ルーカスと呪われた遊園地（上）

６ 久遠類の恋心

２２

　笑いながら友達が言った。
「だよなあ。でも、知らなくていったのなら、ありえるかもしれないぜ」
　男子が言った。
「まじか。俺、乙葉のこと、けっこう好きだったのに」
　落胆らくたんしながら友達が言った。
「いや、それよりさ、乙葉って意外とビッチじゃね？」
　相変わらず教卓の前で、その二人の話に、大人しく耳をかたむけていた久遠だったが、その一言で、久遠の怒りに火がつき、乙葉のことをバカにした男子を、鋭くにらみつけた。
　しばらくして、久遠がにらんでいることに気づいた男子は、
「おい、なんだよ。その目」と言った。
　それで教室にいた生徒全員が、なにごとかと久遠に注目した。
　そしてついに、にらみつけるのをやめない久遠に、
「やんのか？」と、鋭い目で男子が挑発した。
　これまでずっとだまっていた久遠は、ついに口を開き、
「倉本さんは、そんな人じゃない」と、すごんで言った。
　大切な友達であり、好きな人でもある乙葉のことを侮辱ぶじょくされたことが、久遠はどうしても許せなかった。そのために、腹の底からわき上がってくるはげしい怒りを、おさえることができないでいた。
「お前になにがわかるんだよ」
　とがった声で男子が言った。
「そうだよ。いつも端で勉強するか、本を読むことしかろくにしないやつが、そんなこと、わかるわけがないだろ？」
　その友達が加勢した。
「ちょっと乙葉と仲いいからって、いきなり出しゃばってくんなよ」
　まるで久遠に嫉妬しているかのように、友達が言った。
「それは言えてる」
　男子が同調して言った。
「でも、本当あいつ暗いよな、友達もいないし」
　そうして口々に、久遠に対する攻撃がはじまった。
　しかし、それでも久遠は怯ひるまなかった。