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6 久遠類の恋心
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学校につくと、いたるところで、乙葉が行方不明になった話題で、持ちきりになっていた。
「ねえねえ、今日のニュース見た?」
「見た見た! 倉本乙葉さんのでしょ?」
「そう! 行方不明になったんだよね」
まずは昇降口で、久遠の近くにいた見知らぬ生徒三人が、乙葉の話をしているのが耳に入った。久遠はその三人を横目で見ながら、なに食わぬ顔をして通りすぎた。
「おい、見たかよ! 今日のニュース」
「見た。行方不明なんだってな」
「倉本だけじゃなくて、相沢っていうやつも、行方不明らしいぜ」
「まじかよ、やばいな」
「あの廃墟の遊園地だろ?」
「こええー」
続いて教室に進むまでの廊下や階段などで、次々と、乙葉と京一に関する話題が聞こえてきた。その話を聞いて、久遠は決していい気分になれるはずがなく、憂鬱な気分になりながら、教室に入っていった。
やがて、ホームルームがはじまり、空いている乙葉の席を見て、久遠は思わず、ため息をついた。
いつもなら、乙葉とここで挨拶をするのに、昨日も今日もできていない。
久遠がそのことについて落ち込んでいると、教卓に立つ先生が、話しはじめた。
「あー、倉本と相沢のことだが、皆知ってのとおり、行方不明の状態だ。だからもし、ここにいる皆の中で、二人についてなにか知っていることがある人は、至急、先生のところまできて、こっそり教えてくれ。わかっていることならなんでもいい。それで捜査の手がかりになるのであれば、こちらとしても、大変ありがたいことだ。よろしく頼む」
先生はそれだけいうと、普段どおり、ホームルームを進めた。
(なんだろう……すごく虚しいし、胸が締めつけられそうだ……)
乙葉がいないだけで、これほどまでにこの学校が無意味に感じられるなんて、久遠は自分でも信じられなかった。
「ねえねえ、今日のニュース見た?」
「見た見た! 倉本乙葉さんのでしょ?」
「そう! 行方不明になったんだよね」
まずは昇降口で、久遠の近くにいた見知らぬ生徒三人が、乙葉の話をしているのが耳に入った。久遠はその三人を横目で見ながら、なに食わぬ顔をして通りすぎた。
「おい、見たかよ! 今日のニュース」
「見た。行方不明なんだってな」
「倉本だけじゃなくて、相沢っていうやつも、行方不明らしいぜ」
「まじかよ、やばいな」
「あの廃墟の遊園地だろ?」
「こええー」
続いて教室に進むまでの廊下や階段などで、次々と、乙葉と京一に関する話題が聞こえてきた。その話を聞いて、久遠は決していい気分になれるはずがなく、憂鬱な気分になりながら、教室に入っていった。
やがて、ホームルームがはじまり、空いている乙葉の席を見て、久遠は思わず、ため息をついた。
いつもなら、乙葉とここで挨拶をするのに、昨日も今日もできていない。
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「あー、倉本と相沢のことだが、皆知ってのとおり、行方不明の状態だ。だからもし、ここにいる皆の中で、二人についてなにか知っていることがある人は、至急、先生のところまできて、こっそり教えてくれ。わかっていることならなんでもいい。それで捜査の手がかりになるのであれば、こちらとしても、大変ありがたいことだ。よろしく頼む」
先生はそれだけいうと、普段どおり、ホームルームを進めた。
(なんだろう……すごく虚しいし、胸が締めつけられそうだ……)
乙葉がいないだけで、これほどまでにこの学校が無意味に感じられるなんて、久遠は自分でも信じられなかった。
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