ルーカスと呪われた遊園地（上）

６ 久遠類の恋心

１５

　まもなくして、朝のホームルームが終わり、一日の合計で六時間ある授業も、チャイムが鳴り、あっという間に終わりを告げた。
　乙葉にどうしたのかとラインを送っても、なかなか返信がこないため、久遠は夕方のホームルームが始まる前に、乙葉の休んだ理由を、思いきって先生に、直接聞いてみることにした。
　そこで久遠は早速、教室から出て、職員室に通じる廊下で先生を見つけると、
「先生、聞きたいことがあるんですけど」と、話しかけた。
「なんだ、久遠。もうすぐホームルーム始まるんだから、質問ならあとにしてくれ」
　忙しない様子で先生が言った。
「いや、あの、すぐに終わります」
　久遠は先に進もうとする先生を引き止めようと、先生の前に立ちはだかった。
「はあ、一体どうしたんだ？」
　仕方ないとでもいうように、ため息まじりに、先生が言った。
「えっと、倉本さんについて、聞きたいことがありまして」
　おぼつかない口ぶりで、久遠が言った。
「倉本？　倉本のなにが知りたいんだ？」
　先生はいぶかった。
「休んだ理由です」
　きっぱりと久遠が言った。
「ああ、それか。倉本は、体調不良だそうだぞ」
　体調不良——。
　具体的な病名を言わないところが、久遠は、他になにか、事情があるような気がしてならなかった。
「……そうですか」
　先生は、久遠の顔をまじまじと見ると、
「久遠、お前、倉本と仲良かったのか？」と、不思議そうに聞いた。
「ええ、まあ……」
　先生と視線を合わせずに、久遠が言った。
「そうか、それはいいことだ」
　満足げに先生が言った。
「じゃあ、すぐにホームルーム始めるから、はやく席につけよ」
　先生にそう言われた久遠は、先生よりも先に教室に戻るために、早歩きで、廊下を歩き出した。
　先生は、久遠がいつも一人でいることを知っているから、先ほどのように聞いたのかもしれない。先生にまで心配される自分を、久遠はすこし、情けなく思った。