ルーカスと呪われた遊園地（上）

６ 久遠類の恋心

１４

　教室はしんと静まった。
　皆、なにも知らないのか、誰も答えようとはしない。
　先生は、教室を一通り見まわしたあと、
「誰もいない、か……」と呟いた。
　そして、教卓の上に置いてある、出席簿のようなものに、なにかを記すのが見えた。
「そうかー、あの二人が欠席なんて、珍しいな……よし、じゃあ、ホームルーム始めるぞー」
　先生がそう言うと、教室中が騒めきはじめた。
　前の席の方では、結衣と莉子が、なにやらひそひそと話し合っている。
　その傍らで、いつも騒いでいる、クラスの男子の一人が、
「あの二人、どうしたんだろうな。もしかして、駆け落ちとか？」と、皆に聞こえるように言い出した。
「それはやばい。やるなー、あの二人」
　となりの席に座っている、男子の友達が言った。
「でも俺、なんかショックだわー」
　男子の友達は、続けて、がっかりしたように言った。
　それを聞いた先生は、すかさず、
「そこ、うるさいぞ。静かにしなさい」と、きびしく叱った。
　すると、途端に教室は静まりかえった。
　その中で、ふたたび先生の合図により、ホームルームは再開された。
　乙葉と京一。
　普段、めったに休まないあの二人が、同時に休むなんて、一体、なにがあったというのだろう。
　もしかして、二人でずる休みをして、一緒に遊んでいるのだろうか。
　久遠はそうけげんに思ったが、模範的な生徒の京一にかぎって、そんなことはないはずだと、すぐに考え直した。
　とにかく、二人が同時に休んだことは、単なる偶然だと信じたかった。