ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり

文字の大きさ
上 下
163 / 256
5 ドキドキ観覧車

32

しおりを挟む
「京一なら、園内のどこかにいると思うわよ」
 乙葉が言った。
「じゃあ、二人とも無事なのね! 本当よかった」
 柚子は心から、安堵あんどしているように見えた。
「ねえ柚子、それよりも、どうしてここまできちゃったわけ?」
 乙葉はずっと疑問に思っていたことを尋ねた。
「え? そんなの、お姉ちゃんたちを助けるために決まってるじゃない」
 胸をはって柚子が言った。
「本当に? でも、なんかあやしいわね、ほかにもなにか、理由があるんじゃないの?」
 疑うような細い目で、乙葉は柚子を見た。
「だって柚子って、前までそんなタイプじゃなかったもの」
 柚子は一瞬、わずかに動揺したように見えたが、すぐに平静にもどり、
「本当よ」と言った。
 しかし、乙葉は納得できずに、さらに細い目で柚子を見て、うたがった。
「ふーん?」
「な、なによ」
 うたぐり深い乙葉を前にして、ぎょっとしながら柚子が言った。
 このままでは、本当のことをいいそうにないため、乙葉は仕方なくあきらめて、話題を変えることにした。
「ところで、なんで久遠くんと一緒なの?」
 言いながら、乙葉は柚子の横に座った。
「二人とも別の学校だし、接点なんて、なにもないはずでしょ?」
 乙葉がそう尋ねると、柚子は下を向きながら、少し言いづらそうにして、
「それは、久遠さんがお姉ちゃんに、休んだ日のノートを届けるために、何回か家にきたのよ。だからその時に、一緒に助けにいかないかって誘われて」と言った。
「まあ、そうだったの——なんだか久遠くんに、悪いことさせちゃったわね」
 申し訳ない気持ちになりながら、乙葉が言った。
「でも、お姉ちゃんが無事なことを知れて、本当なによりよ。さ、京一くんを探して、はやくここから出ましょう」
 そう言うと、おもむろに柚子が立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【完結】だるま村へ

長透汐生
児童書・童話
月の光に命を与えられた小さなだるま。 目覚めたのは、町外れのゴミ袋の中だった。 だるまの村が西にあるらしいと知って、だるまは犬のマルタと一緒に村探しの旅に出る。旅が進むにつれ、だるま村の秘密が明らかになっていくが……。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

幻魔少女物語〜神様の失敗で人間から異界人になった8人の話〜

campanella
児童書・童話
 これは、神の失敗に巻き込まれて生まれた、8人の少女の物語________    名古屋の小さい町の中学校に通うごく普通の少女・矢代加奈。親友の近衛由紀や幼馴染みである澤田浩介等に取り巻かれ、平穏に生きていた。しかし、ひょんなことからこの世界で3番目に偉い神だという松ノ殿と出会い、予想もしなかった人生を送ることになる。 「お前達は人間じゃない。この世界の想像力の塊、幻魔だ」  人間の想像力によって生まれた幻魔の血を、神の管理ミスによって受け継いでしまった8人の少女の1人だった!  更に、負の感情から生まれた生物・怪魔が加奈達を含む全ての幻魔の命を狙う!もし幻魔が絶滅したら、現実世界の人々は考えることを止め、文明は滅びてしまう緊急事態!  自らの命と2つの世界を救うため、加奈達8人はそれぞれの生き方や価値観を理解しながら、さまざまな世界を冒険し、共に戦い成長していく!  冒険、バトル、友情、グルメ、笑い、感動、そして青春!何でもありの全く新しいファンタジー超大作!順次投稿中です!

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

精霊の国の勇者ハルト

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫
児童書・童話
「小さな子供にも安心して読ませられる優しい冒険譚」を一番のテーマに書きました。 --------- ボク――加瀬大翔(かぜ・はると)は小学5年生。 転校した今の学校になじめなかったボクは、今日も図書室で一人で本を読んでいた。 すると突然本が光りだして、気が付いたら精霊の国『桃源郷』にいたんだ。 「勇者さま、精霊の国にようこそ。わたしはあなたを勇者召喚した、精霊の姫・セフィロトと申します」 そんなセフィロト姫・セフィのお願いで。 この日――ボクは精霊の国を救う勇者になった。 絵本・児童書大賞に参加しています、応援よろしくお願い致します(ぺこり

処理中です...