ルーカスと呪われた遊園地（上）

５ ドキドキ観覧車

２２

「じゃあ、いきますよ」
　久遠はすこし緊張した様子で花火に近寄ると、花火の点火部に向かって、ライターを近づけた。
　柚子が息をのんで見守る中、久遠の手によって、花火に火がつけられた。
　その瞬間、
「３、２、１……いってください！」と、久遠が言った。
　柚子は言われたとおりに、門に向かって、全速力で走った。
　そして火のついた花火は、プシュー、という甲高い音を立てながら、空高く上がっていった。久遠は、花火が最後まで、しっかりと空に上がったのを確認すると、柚子のあとを追いかけて、必死に走った。
　やがて上空で、パーン、という大きな音が鳴った。久遠がつけた花火は、星がきらめく夜空の中で、見事に打ち上がったのだった。
　瞬間、その場にいた全員が、いっせいに空を見た。
　柚子と久遠の二人はそのすきに、門に向かって、急いで走っているところだった。
「おい、なんだあれ」
　警官の一人が、けげんそうに上を見上げながら言った。
「えーと、花火みたいですね……」
　となりにいた警官が、おどろきながら答えた。
「そんなのは言われなくてもわかってる。でもどうやら、打ち上げられた場所は、ここから近いみたいだぞ」
　警戒しながら警官が言った。
「おい、ちょっとお前。花火が打ち上がった場所、いますぐ見てこい」
「は、はいっ」
　もう一人の警官は、すぐにそう返事をすると、久遠と柚子が花火を打ち上げた場所に向かって、急いで走っていった。
　それからも、門の近くにいた警官たちは、まんまと花火に気をとられながら、口々になにかを話し合っているようだった。
　その時、二人は警官のすぐ後ろにいて、扉にある隙間を見つけていた。柚子は警官たちが気づくまでに、急いで門の中に入らなければと思い、その隙間に、体を無理やりねじこんだ。